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バス部会・山本事務局長 辺野古からの報告
2015/09/28

バス部会・山本事務局長 辺野古からの報告 厳戒態勢の中、デモ行進する抗議の人々(8月4日、キャンプ・シュワブで)

沖縄の民意無視して美ら海を破壊
狙いは日本版海兵隊の拠点づくり


 安倍政権は普天間基地の無条件撤去を求める沖縄県民の総意を踏みにじり、名護市辺野古(へのこ)への新基地建設工事を進めています。8月4日に同地を訪問したバス部会・山本雅弘事務局長のリポートを掲載します。

 今回私が沖縄を訪ねたのは、今年5月に他界した母(沖縄出身)の墓参が第一の目的ですが、辺野古で座り込み抗議行動が10年以上も続けて行われていることを知り、自分の目で現状を確かめてみようとキャンプ・シュワブ(名護市辺野古)に向かいました。
 キャンプ・シュワブは米海兵隊で最も歴史の古い第4海兵連隊の本拠地で、同連隊第3大隊はここで2003年12月から3か月間の市街地訓練を行なった後にイラクに派兵され、04年4月の第1次ファルージャ掃討作戦(民間人死者600人以上)に投入されました。
 同年8月には普天間基地のヘリ部隊など第31海兵遠征隊の2200人が強襲揚陸艦エセックスでイラクに派兵され、同年11月の第2次ファルージャ掃討作戦(民間人死者6千人以上)に参加しています。沖縄の海兵隊はベトナム戦争、アフガン戦争、イラク戦争など世界中でアメリカが引き起こす無法な戦争で、つねに先陣を切って“殴り込み”の任務を果たしてきました。

大型艦船が接岸可能に

 キャンプ・シュワブのゲート前では50人を超える人々が座り込みに取り組んでいて、「島ぐるみ会議」(※1)の「辺野古バス」(※2)が到着すると抗議宣伝が始まりました。
 抗議の人に話しかけると「私たちの問題意識は、米軍基地が沖縄県内でたらい回しにされるということだけではなくて、辺野古が沖縄でも最新鋭の出撃基地になってしまうという点にある」と話してくれました。
 政府が辺野古沖に造ろうとしているのは1800メートルの滑走路2本(普天間の滑走路は1本)や、弾薬搭載エリア、大浦湾の水深の深さを利用した軍港などです。
 軍港には大型の艦船が接岸できる272メートルの護岸を造る計画ですが、これが完成すると現在は佐世保に停泊している強襲揚陸艦も接岸できるようになります。強襲揚陸艦は最大の型だとオスプレイ12機、ハリアー(垂直離着陸)攻撃機6機、掃海・輸送ヘリ、攻撃ヘリ、エア・クッション型の揚陸艇(積載能力70トン、戦車も運べる)3隻などが搭載可能で、2千人近くの海兵隊員が乗り込み“殴り込み作戦”の中核を担います。
 また、現在の普天間基地には弾薬庫がないため、軍用機に弾薬を積み込むには嘉手納基地に行く必要がありますが、辺野古にはキャンプ・シュワブの北側に弾薬庫があり、新たに弾薬搭載エリアを造ることで弾薬庫→軍用機への兵站(へいたん)を容易にします。
 現行では辺野古に運び込まれる弾薬は同地の約35キロ南、うるま市の天願桟橋で弾薬輸送船から降ろしてから1時間近く国道を通りますが、辺野古に軍港ができて弾薬輸送船が停泊するようになると、核兵器が持ち込まれても外部には分かりません。

軍拡に24兆6700億

 政府が辺野古に造ろうとしているのは普天間の代替基地ではなく、オスプレイも弾薬も海兵隊員も効率よく強襲揚陸艦に積み込める、“殴り込み部隊”の一大拠点であることは明白です。
 しかし、沖縄の米海兵隊は定員・1万8千人のうち8千人をグアムやハワイ、オーストラリアなどに分散移転することを日米が合意しています。沖縄に残る1万人も補給や医療の後方支援、司令部機能が大部分で、戦闘部隊は2千人の第31海兵遠征隊のみ。しかも同隊はアジア地域を巡回するため1年のうち9か月間は沖縄を離れています。にもかかわらず、日本政府が1兆円もの巨費を投じて辺野古への新基地建設に固執するのはなぜでしょうか。
 辺野古の新基地は名目は米軍基地ですが、日米共同の基地として構想されています。つまり将来、海兵隊が撤退した後は自衛隊の基地として転用する狙いがあるものと思われます。
 防衛省は日本版海兵隊「水陸機動団」の創設準備を進めており、向こう数年にわたりオスプレイ17機をアメリカから購入、強襲揚陸艦の海上自衛隊への導入も検討しています。安倍政権は2014〜18年度の5年間で24兆6700億円もの軍拡を計画しています。
 集団的自衛権の行使を可能にする安保法案が成立してしまうと、自衛隊が中東の“殴り込み作戦”の最前線で市民の命を奪うことになる恐れは十分に考えられます。

海上保安庁が暴力的に

 辺野古新基地建設の口実として“普天間は危険”と日米両政府は言いながらも、いまだに夜間・早朝訓練が行われています。アメリカ本土ではできないことが沖縄では平気で行われています。
 前出の抗議の人は「国防を理由に沖縄だけに基地負担を押しつけるのはおかしい。内地の人はもっと関心を持ってほしい。東京の霞ヶ関にオスプレイの基地を造れば官僚や政治家にも沖縄の苦しみがわかる」と怒りを吐露しました。
 私も組合活動で夏場の座り込み行動に参加しますが4時間程度でも辛いものです。それをここでは24時間、しかも沖縄の灼熱の暑さ、台風など想像を絶するたたかいを続けています。
 ゲート前に座り込んでの早朝の工事車両の搬入阻止や、カヌーを使った海上からの抗議など体を張った行動に対して、最近では公安や海上保安庁による取り締まりが暴力的になっている、とのことです。
 私が訪れた日に、菅官房長官が工事の1か月中止を発表しました。その一報にゲート前では歓声が沸き、抗議の人々はカチャーシーを踊って喜びを表していました。
 辺野古沖には貴重な珊瑚礁があり、ジュゴンも生息しています。私は辺野古の海を眺めながら、なぜこんなに綺麗な海を破壊して基地を造らないといけないのか、建設賛成の人にはこの海を見て考えてもらいたい、と思いました。

 ※1 島ぐるみ会議=沖縄県内労働・市民団体の有志、有識者や議員らによる市民団体。オスプレイの配備撤回と普天間基地の閉鎖撤去・県内移設断念を求める『沖縄建白書』の実現を目指す。
 ※2 辺野古バス=島ぐるみ会議が那覇、宜野湾、うるま、沖縄、名護からテント村へ運行(往復1000円、昼食持参)。