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大阪労連第44回評議員会 自交総連からの発言
2016/06/15

大阪労連第44回評議員会 自交総連からの発言

経済優先・人命軽視許されない


自交総連大阪地連
松下末宏書記次長


 6月4日に行われた大阪労連第44回評議員会の討論に、大阪地連選出の松下評議員が、次の通り発言しました。
 1月15日未明、長野県軽井沢町の国道18号・碓氷バイパスで、41人(乗員2、乗客39)が乗ったスキーツアーバスが道路から転落、乗員2人と乗客の若者13人の尊い命が失われました。
 この軽井沢スキーツアーバス転落事故は、運転技術の未熟な運転者がバスのスピードを制御できずに起こした事故では?と報道されていますが、軽井沢に向いての下り坂は群馬県側の下りと違い、長く急ではあるもののカーブもゆるく、ブレーキ(フットブレーキ)を踏めば減速し、停止することも可能です。意識がもうろうとしていた可能性も否定できません。
 事故を起こした運転者の責任は当然重大ですが、運転者が悪い、事業者が悪いとの報道が目立つばかりで、その背景に切り込まずして、この問題の解決はありません。
 入口規制を廃止し、社会的規制を強めるとした規制緩和でしたが、バス・タクシー・トラックを合わせて全国で約12万事業者があり、それを監査する国交省の要員は、ほぼ毎年増員された現在でも365人です。これで全ての事業者を監査することなど、はじめから不可能です。
 国交省は行き過ぎた規制緩和を改め、入口規制を強化すべきです。そして厚労省は「改善基準」を過労死認定以下に改定・法制化し、罰則規定を設けない限り重大事故は後を絶ちません。
 タクシーにおいては規制緩和から規制強化へと転じてきましたが、低賃金長時間不規則勤務とあまりにも悪い労働環境のため、若者が入ってきません。高齢化が進み大阪では平均年齢が61歳を超えました。
 それでも「安心・安全・快適」を担保しようとタクシー労働者はがんばってきましたが、いま、規制撤廃ともいえるライドシェア・白タク合法化が進められようとしています。
 ライドシェアは、自家用車で白タク営業する運転者と利用者をスマートフォンのアプリで仲介するサービスで、6年前にサンフランシスコのIT企業・ウーバーが始めました。
 バス・タクシー運転者は営業運転ができる2種免許を取得し、会社による厳格な安全管理のもとサービスを提供していますが、ライドシェアは2種免許不要で、労働時間管理や健康管理、事故時の責任も個人任せ。万が一、運転者が死亡したような場合は誰が責任を取るのでしょうか。
 ライドシェアの問題点はこれだけではありません。運賃はタクシーの約6割程度ですが時期で変動し、災害など利用が集中する場合は何倍にも跳ね上がります。東日本大震災ではタクシーのなかまが家族と連絡が取れない中、燃料が尽きるまで走りましたが、非常時に料金をつり上げて儲けるのがライドシェアです。利用者にとってライドシェアは一見、安くて便利かもしれませんが、軽井沢スキーバス転落事故のように大きな落とし穴があります。日本のタクシーは、夜中に酔った女性が1人でも、安心して利用できる世界に誇れる交通機関です。一度なくなれば容易に戻すことなどできません。
 人命より経済的な都合を優先し、安全規制まで「岩盤規制」とする安倍政権は絶対に許されません。