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大阪交運共闘が三陸の被災地・BRTを調査
2015/09/28

大阪交運共闘が三陸の被災地・BRTを調査 国道45号線を走るBRTの車両。通常のバスと特に違いはなし(8月26日)

公共交通復旧 道なかば


 大阪交通運輸労働組合共闘会議(大阪交運共闘、南修三議長=全港湾阪神)は8月25〜27日、関西大学・西村弘教授(交通論)とともに、東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県北部〜岩手県南部の沿岸地域に赴き、公共交通復旧状況などの調査行動に取り組みました。東北運輸局、南三陸町役場、気仙沼市役所、国労仙台地本でBRT(バス高速輸送システム)について懇談・ヒアリングを行なったほか、同地本の協力を得て被災地を視察しました。自交総連大阪地連からは庭和田書記長(大阪交運共闘事務局長)、松下書記次長、ハンドルおおさか・運天編集長が参加しました。

 震災で壊滅的な被害を受けたJR大船渡線の気仙沼〜盛(さかり)(43.7キロ)と、気仙沼線の柳津(やないづ)〜気仙沼(55.3キロ)では現在、仮復旧としてJR東日本がBRT(バス高速輸送システム)を運行しています。気仙沼線は2012年8月、大船渡線は2013年3月に運行を開始。車両は同社所有で、運行業務は地元の路線バス会社に委託しています。
 BRTはバス専用道を設けることで通常のバスより速く、定時運行もできるシステムです。不通区間のうち津波被害を免れた線路敷地を改築した専用道は現在、気仙沼線で41%、大船渡線で37%。JR東日本は今後、専用道の比率を気仙沼線は90%、大船渡線は51%に引き上げるとしています。
 震災前の運行ダイヤは時間帯によっては3〜5時間空くこともありましたが、BRTの本数は震災前の1.5〜3倍で、昼間は30〜60分間隔。南三陸町の担当者は「BRTへの不満は聞こえてこない」といいます。

民間企業の限界が露呈

 大船渡線と気仙沼線を合わせた復旧費用は、震災前の原状に戻すだけなら430億円、路盤をかさ上げしたり内陸にルートを移設するなど安全確保のための費用を加えると1100億円と見込まれています。
 その差額負担をJR東日本は「復興調整会議」で行政に求めました。両線ともに震災前の時点から赤字で利用者数は右肩下がり。民間企業の経営判断が働いたものと思われます。
 一方の国は“JR東日本は黒字企業なので支援できない”“災害復旧=原状回復であり、元のルートから外れる内陸移設には支援できない”というスタンスでした。
 今年7月24日の「沿線自治体首長会議」第2回会合でJR東日本は、仮復旧として運行してきたBRTによる本復旧を正式に提案しました。

沿線の自治体に温度差

 沿線自治体によって鉄道に対する温度差があり、南三陸町は「これ以上復興・町づくりを遅らせるわけにはいかない」としてBRTに前向き。
 一方、気仙沼市の担当者は「鉄道が担ってきた役割、地域振興・観光振興についてJRから価値のある提案がないと市民は納得できない」と強調。「自治体によって考え方に違いはあるが、公共交通を担保してほしいという思いは同じ」と話しました。
 国労仙台地本でのヒアリングでは、大阪交運共闘のなかまが「JR社員が動かしていた赤字路線がBRTに切り替わって中小の会社に委託されていく。長期的に路線が維持される担保もない。三陸のBRTが成功例になれば全国的にその流れが強まるのではないか」との懸念を示すと、同地本の役員も「民営化前に私たちが指摘したことが、いまそのまま出てきている」と応じました。