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トヨタと全タク連、自動運転開発で協業
2016/10/05

労働条件なおざり
外国人雇用も視野


 いま、白タク・ライドシェア合法化の動きは、霞ヶ関や永田町のみならず、日本各地の自治体をも巻き込みウーバージャパンなどが導入に向け動いています。そしてトヨタ自動車は米ウーバーと提携、車両リースやソフト開発で協業する一方で、全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)とは自動運転技術の開発・活用に向けた協業を合意。いま全国で働いている乗務員の労働条件改善をなおざりにした業界改革が進められようとしています。

本音は販売戦略


 5月25日付の日本経済新聞1面には「トヨタ、米ウーバーに出資へ 戦略提携検討を発表」との見出しが躍りましたが同じ日に、全タク連・富田昌孝会長とトヨタ・豊田章男社長が会談しています。業界紙によると、豊田氏は富田氏に「私を信用してほしい」「タクシー業界と一体化して、このタクシー業界をよくしていく」「そのために全面支援する」と言ったといいます。
 経済情報専門の通信社・ブルームバーグのウェブサイトは「トヨタはタクシー業界団体の事業目標を保護するのでなく、今後の販売に目線を合わせた」という米ベンチャー企業創設者の声を紹介しています(7月12日付)。
 8月5日には全タク連とトヨタが「“未来の日本のタクシー”の開発・導入に向けた協業を検討する」との覚書を締結しましたが、その第3項には「乗務員の運転及びサービスの負担を軽減できる、自動運転技術の活用を目指し、将来の自動運転技術の開発・活用に向けて」「双方向の協力を検討する」とあります。

運転技能は不要?

 業界紙「交通界ファックスプレス」関東版8月6日付によると全タク連・川鍋一郎副会長は同紙の取材に対して、「タクシー事業にとって最大のボトルネックは乗務員不足をどう補うかだ。高齢者や新卒、女性の雇用、あるいは外国人雇用も考えなければならなくなる」「自動運転技術のサポートがあれば安全性を担保しつつ、乗務員に求められる技能レベルを下げることができる」と話しています。
 同氏は続けて「乗務員は毎年減少し続け、自動運転技術を云々する前に乗務員がいなくなってしまう事態も考えられる。自動運転が乗務員の職を奪うという前に自動運転によって新しい人が入ってくる方が先」との認識を示しています。
 運転技能よりも接客に比重を置き、高度なサービスでライドシェア運転者との差別化を図る戦略ですが、この記事の中では現役運転者の労働条件改善については言及していません。

TPP批准許すな

 乗務員の減少が止まらないのは、労働条件が劣悪なまま変わらないからです。その改善を抜きにした業界改革などありえません。運転技能のハードルを下げて集める「新しい人」に対して、川鍋氏はどのような賃金・労働条件を想定しているのでしょうか。
 大阪地連・庭和田書記長は「運転技能を向上した上で補助的に自動運転を導入するのなら二重のセーフティネットという意味で理解できるが、川鍋氏は発想が逆転している」と本紙にコメントを寄せています。
 全タク連が外国人雇用を想定している点も重大です。国土交通省は昨年3月4日、自交本部との交渉で「外国人でも乗務員として就労できるように法制度を改めて『乗務員不足』を解決しようと考えているのではないか」との組合側の質問に対し「全く考えていない」と回答しましたが、方針転換は絶対に許されません。労働力の国際的な移動を可能にするTPPを批准させない運動も、白タク合法化反対と同様に重要です。