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公定幅運賃20円引き下げ 経営者は行政の愚策に動じるな
2016/11/08

繰り返すな運賃戦争


 各運輸局は10月21日までに、7つの交通圏で公定幅運賃の下限の引き下げを公示しました。公定幅運賃は改正タクシー特定地域特措法で導入され、特定・準特定地域で適用されます。

 公定幅運賃は、初乗運賃が上限〜下限の間で10円刻みで決まっていて、事業者はその範囲内で運賃を決めなければならず、下限を下回る場合には改善命令が出されることになっています。ところが、下限割れの事業者から「値上げを強制するものだ」などとして裁判が起こされ、各地の裁判所で、下限の決め方に不合理があり、違法との国側敗訴の判決が相次ぎました。
 このため国土交通省では6月、下限を決める際には下限割れで営業している事業者の実績も含めて計算するとの通達を出し、実際に下限割れ事業者が営業している地域については下限を見直すこととしました。
 対象となったのは、札幌など11の地域で、そのうち下表の7つの地域で下限が引き下げられました。7つ以外の愛知・知多、滋賀・湖南交通圏は、再計算しても下限は据え置き、愛知・名古屋と福岡・福岡交通圏は、運賃改定の申請が出されていて改定見込みのため、その際に設定されることになります。

大阪の中型10種類
運賃が可能になる


 公示がされた地域のうち青森と大阪市域交通圏については初乗距離短縮の運賃も合わせて公示。公定幅運賃を決める際には、地域協議会の意見を聞くことになっていますが、その際に地域協議会から初乗距離短縮運賃設定の意見が出された場合に設定されることになっています。事業者は基本運賃でも初乗距離短縮運賃でもどちらも選べます。
 すでに新運賃が適用されている青森の場合、小型車の初乗で基本の運賃が660円から580円まで9種類、それぞれに初乗距離短縮の運賃が設定され、計18種類もの運賃設定が可能となるなか、新下限の初乗距離短縮を選択する事業者がいて、実際に値下げ競争が発生しています。
 規制緩和以降、増車や運賃戦争が繰り広げられた大阪の惨憺(さんたん)たる現状を見たとき、経営者側がいう「人手不足」による稼働率(70%切る)の低下は、労務倒産など経営の根幹を揺るがす問題になっています。
 これまでMKタクシーやワンコイングループなどが下限割れで営業を続けてきましたが、今回の幅運賃・下限が20円引き下げられたことで、中型で10種類の運賃が可能になります。
 経営者は行政の愚策に振り回されることなく無益な運賃戦争を絶対に避けるべきです。労働者の待遇改善や利用者にも分かりやすい運賃に統一すべきです。