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自交総連本部・第39回中央委員会〈討論〉 大阪地連からの発言−ハンドルおおさか・運天武史編集長
2017/02/07

 1月24〜25日に東京都内で開かれた自交総連本部・第39回中央委員会では、13の地方組織から16人が討論に参加しました。この中から大阪地連2氏の発言要旨を掲載します。

ハンドルおおさか・運天武史編集長
(国際タクシー労組副委員長)


人間性が失われる社会
悪循環断ち切る運動を


 大阪の労働組合は維新型政治との対決を避けては通れません。維新はこれまで市民のくらしや福祉の予算をさんざん削っておきながら今度は万博を誘致し、併せてカジノを造ろうとしています。カジノ解禁法を強行成立させた自民と維新は憲法改悪に向けて提携を強めています。
 昨年、沖縄・高江のヘリパッド建設反対運動に対して大阪府警の機動隊員が差別発言を浴びせ、大阪府・松井知事がそれを擁護しましたが、テレビでも雑誌でもヘイトが本当にひどい昨今です。特に、権力に立ち向かい声をあげる弱者に対するバッシングが強まっています。そんな中、安倍政権がテロ防止を大義名分に共謀罪の創設を打ち出してきたのは非常に危険な動きだと思います。これを許してしまえば反戦や脱原発などの市民運動、そして私たちの労働運動にも牙をむいてくるのは確実であり、この問題もその危険な本質を世論に拡げて絶対に阻止しなければなりません。
 大阪市域交通圏の第3回地域協議会が昨年12月2日に開かれたんですが、安部誠治会長(関西大学教授)は開会あいさつの中で次のように述べました。
 「この間タクシー需要は落ち続けているが、供給量がそれに見合って落ちていない。つまり、市場にまかせて需給調整が働けば、当然たくさんのタクシー会社が倒産して市場の力で需給調整できるのが、そうなっていない。(中略)労働コストが500万円から300万円以下まで大きく落ちて、倒産するべきところがしていない。市場原理が働いていないため、結果として担い手であるドライバーの労働条件が悪くなっている。市場にまかせていたのでは望ましいタクシー事業が成立しない」
 累進歩合制賃金や乗務員負担の押しつけなど、労働者を犠牲にして事業者は生き延びてきたわけです。その結果、乗務員は高齢化し、大阪では毎年1千人以上減り続けて業界存続の危機を迎えているわけですから、「今度はあなた方が身を切る改革をやらんかい」と事業者に向けて言いたいです。

タクシー特有の賃金

 労働コストの大幅下落を可能にしたのはタクシー特有の歩合制賃金です。そもそもオール歩合制という賃金体系が公共交通に存在していいのでしょうか。売上だけが正義。賃金が低いのは自己責任。そして乗務員の目的意識は社会貢献よりも稼ぎにしか向きません。みんな必死なんです。
 日頃乗務しておりますと、同業者の強引な割り込みなど自己中心的な営業の仕方に怒りを覚えることがよくあります。一言でいえば意地汚い、要するに飢えているわけです。すごい空腹で、目の前にパッと食べ物が出てきたら人目をはばからず飛びついてしまう、これでは野生動物と同じではないか、いわば人間としての尊厳が失われているのではないかと思うんです。

魅力ある賃金制度を

 賃金というのは、本来は成果に関係なく働いた時間に対して支払われるべきものだろうと私は信じております。タクシーに限らず成果主義賃金、さらにはリース制のように労働者を個人事業主として扱うような賃金制度がまん延するに従って、社会がどんどん悪くなっている、それは労働者が労働者でなくなっているからだと考えています。ライドシェアはその最たるものでしょう。
 組織で団結して賃上げをめざしていたのがバラバラに分断されて“賃金を上げたいなら一人ひとりで努力しろ”とされてしまったわけです。だから労働組合の組織率は低迷する、だから政治も劣化していくし、賃金・労働条件も社会保障も切り下げられ、私たちの人間性がさらに失われていく、まさに悪循環です。
 自交本部の2017年春闘方針案には「若年労働者にとって魅力ある賃金制度の確立をめざし、オール歩合給賃金の改善策では、最低賃金を基礎とした固定給部分の制度的確立を求める」とありますけれども、悪循環を断ち切るための第一歩として重要な要求だと思います。
 一部の事業者からは「乗務員確保のために労働条件を改善しなければ」という声も出始めています。“逆風を追い風に”奮闘する決意を申し上げまして私からの発言といたします。