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本流逆流(7月5日付コラムより)
2020/07/06

 コロナ禍拡大前の1月、大分〜宮崎方面を旅して驚いたのは、JR九州の特急列車がワンマンで運行されていたことだ。駅に着くたびに運転士がホームに降り、異常がないことを指さし確認してから、再び運転台に戻って発車する。近年は省力化が進んで車内検札もなくなったとはいえ、利用者に対応する車掌がいないのは心許(もと)ないし、運転士は運転に専念してほしいと思う。同社の労働条件を調べたわけではないが、普通に考えてワンマン化=労働強化であろう。
 JR東日本は首都圏の運行系統のひとつである京浜東北線のワンマン化の検討を始めたという。東京に行くたびに電車や駅の混雑には辟易(へきえき)するが、京浜東北線の混雑は首都圏でも屈指で、電車はすべて4扉車10両編成。全駅にホームドアが設置されるとはいえ、経営難でもあるまいし、利益を増やすためにそこまでやるか。緊急時を想像すると身の毛がよだつ。
 利用者が少ない駅の無人化は大阪でも進行中だ。昨年末、友人との忘年会の帰路、JR大和路線・加美駅東側の踏切で縁石に乗り上げ立ち往生している車に遭遇し、友人と協力して救援には成功したが、非常ボタンを押して電車も駅の向こうで緊急停車しているにもかかわらず駅員が駆けつけてこない。後で調べてみると始発から23時まで駅員不在の時間が細(こま)切れに計8時間40分あることがわかった。いずれは完全無人化に向かうのか。
 JR学研都市線・鴫野駅ではカーブ上に位置するホーム形状ゆえに利用者の転落事故が後を絶たない。ホーム係員を配置するよう再三訴えてもJR西日本は馬耳東風だ。福知山線脱線事故や信楽高原鉄道事故の慰霊式のたびにJR西日本の社長は神妙な面持ちで安全への誓いを口にするが、現状では“口先だけじゃないか”との誹(そし)りは免れまい。金儲け第一主義に毒された公共交通事業者は社会のリスクである。