HOME  <  ハンドルおおさか

ハンドルおおさか

ハイヤー・タクシー・観光バス労働者の新聞

過去のトピックスのトップへ

詳細記事

生活保護減額は違法
2021/03/05

弱者追い詰める自民党、厚労省はデタラメで忖度


 国が2013年8月から開始した生活保護費引き下げは生存権を保障した憲法25条に違反するとして、府内の生活保護利用者が国と府内12市を相手に、減額処分取り消しなどを求めた訴訟の判決が2月22日にあり、大阪地裁(森鍵一裁判長)は、減額処分は違法であるとして処分を取り消す判決を出しました。

 安倍内閣(当時)は2013年から2015年にかけて生活保護費の生活費分(生活扶助)の引き下げを3段階に分けて実施。引き下げ幅は平均6・5%、最大10%に及び、多人数世帯や子どものいる世帯で大きくなる傾向がありました。全国で1千人近くが「引き下げは憲法違反だ」と国と自治体を提訴、大阪では42人の生活保護利用者がたたかってきました。

特異な物価高織り込む

 厚生労働省は「大幅な物価下落」を理由に生活保護費を引き下げましたが、その物価下落は、同省が独自に開発した物価指数「生活扶助相当CPI」(生活保護利用者の消費者物価指数)によって導き出したものでした。この指数は二つの点で生活保護世帯の実態を無視しています。
 第一に物価が最も上がった2008年と最も下がった2011年を比較しており、第二にその期間、大幅に下落したテレビ、ビデオレコーダー、パソコンなどを生活保護利用者があたかも一般家庭と同様に購入した前提で計算しています。
 判決は「特異な物価上昇が織り込まれ、翌年からの下落率が大きくなった」「国の調査では、被保護世帯の教養娯楽用品への支出は一般世帯よりも相当低い」と指摘。「客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠き、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続きに過誤、欠落があるといわざるを得ず、裁量権の範囲の逸脱またはその濫用があるというべき」と国を批判、「生活保護法3条(※)、8条2項(※)の規定に違反し、違法である」と断じました。
 ※生活保護法第3条「最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」
 ※生活保護法8条2項「生活保護基準は最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを越えないものでなければならない」

生活保護制度は権利


 同訴訟原告を支援してきた「いのちのとりで裁判全国アクション」は厚労省の「生活扶助相当CPI」を「物価偽装」と指弾しています。生活保護費引き下げ直前の2012年12月に行われた衆議院選挙で、自民党は「勤労者の所得水準、物価、年金とのバランスを踏まえ、生活保護の給付水準を10%引き下げます」との公約を掲げました。厚労省の「物価偽装」は選挙公約を忖度したものにほかなりません。
 東京新聞は2月25日付社説で、「生活保護を巡っては、行政が申請者の親族に援助の可否を尋ねる扶養照会など、申請をためらわせる『壁』の存在も、しばしば指摘される。生活保護を受けるのは憲法が保障する『権利』なのに『施し』と見られかねない社会的偏見をなくしていく必要もある」と論じています。
 (参照=全大阪生活と健康を守る会連合会2月24日付「声明」、ダイヤモンド・オンライン「『生活保護費の減額はデタラメ』と厚労省を一蹴した、大阪地裁判決の意義」みわよしこ)