HOME  <  ハンドルおおさか

ハンドルおおさか

ハイヤー・タクシー・観光バス労働者の新聞

過去のトピックスのトップへ

詳細記事

本流逆流(4月15日付コラムより)
2021/04/15

 車いすユーザーのコラムニスト・伊是名(いぜな)夏子氏のブログ記事「JRで車いすは乗車拒否されました」が反響を呼んでいる。
 熱海の来宮(きのみや)神社へ「小田原駅→熱海駅→来宮駅」のルートで行こうと思い立った伊是名氏が小田原駅の駅員に車いす対応を依頼したら、来宮駅はエレベータもエスカレータもない無人駅のため熱海駅までしか対応できないという。
 1時間の交渉でも埒(らち)があかず、伊是名氏はとりあえず熱海駅に向かった。すると熱海駅長の判断で駅員4人が来宮駅に同行、階段での車いす運搬対応をした─という顛末(てんまつ)がSNSで炎上した。
 「事前連絡せず駅員集めて対応しろなんてあり得ない」「悪質なクレイマー」「感謝の言葉がない」─いわゆる「わきまえろ」論であり、差別的主張である。人間なら、とっさの思いつきで行動することもあろう。それが何で障がい者には許されず、電車に乗るたびに感謝の言葉を伝えねばならぬのか。中には「上級弱者」なる新語を編み出したジャーナリストもいた。己の職業に鑑(かんが)みて恥を知れと言いたい。
 すべての人が不自由なく駅を利用できるようにするのは公共交通事業者であるJRの責務であり、ひいては国の責務である。民営化の弊害はここでも指摘されよう。JRグループは利益追求に血道をあげ、バリアフリーも安全対策もおろそかにしてきた。都市部でも無人駅が増える一方で、リニア中央新幹線(東京〜大阪)に投じられる事業費は9兆円。
 「駅員は無料の駕籠舁(か)きではない」などと鉄道労働者を思いやるような声もあったが、弁護士の堀新(しん)氏はツイッターで「それは労働者が使用者に対して労働条件の改善を要求する話であって、労働者が障碍(がい)者を非難するような問題ではない」と諭す。労働者と利用者を分断してJRや国を免責する流れに乗ってはならない。