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本流逆流(1月5日付コラムより)
2022/01/05

 巷(ちまた)ではNPOが公園で配る弁当に困窮者が列をなす師走、2021年を象徴する漢字が「金」に決まったそうな。「カネ」と読むならわからんでもないが、疫病で万を超える犠牲者が出た年にこれか。
 日本の民間人初の宇宙旅行が話題だが、2人分で100億円だと。成功者の全能感ここに極まれり。前澤友作氏はインタビューで「自分のお金で旅行に出かけて何が問題なのか」と述べていたが、労働者からの搾取なくして巨万の富は築けない。
 実際のところ、日本人相手の搾取が難しくなってきたので「人材」の調達先を海外に求め始めてこのコロナ禍だ。「人手」不足に悩む業界はどこも低賃金か、長時間過重労働か、その両方である。
 竹中平蔵氏が政治に関わり始めてからの20数年で、この国は中間層が消滅し格差が拡大したが、たとえば「雇用によらない働き方」を推進するのは、大企業の近視眼的な営利拡大よりも、格差の固定化こそが目的なのだと考るべきかもしれない。労働者が尊厳を自ら投げ捨て、“報酬が低くてもかまいません、何でもしますから働かせてください”と土下座するように追い込みたいのだ。
 かつてこの国には、地味な仕事でもまじめにコツコツ働きさえすれば家を持てる時代があった。その後の半世紀で身分社会が復活することになろうとは。
 漫画家・白土三平の名作「カムイ伝」では、主人公生誕のシーンで父親が悲しげにこうつぶやく。「うまれたか…」「うまれても非人の子じゃ」「わしらはなんのためにこの世にうまれてくるんじゃ!?」
 自民党の憲法改正草案は、国民を「個人」ではなく単なる「人」とする。支配層にとって都合のいい「材」や「手」にする企(たくら)みである。7月の参議院選挙は、私たち労働者の尊厳を賭けた闘いだ。