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オピニオン OBの視点−まやかしの規制強化 追及しないメディア
2013/09/05

まやかしの規制強化 追及しないメディア


元・大阪地連バス部会事務局長 尾崎博明(2)

 「高速乗合バス」と「一般貸切バス」の新制度が8月1日から実施されました。
 6年前の「あずみ野観光」スキーバス事故、一昨年の関越道での高速ツアーバス事故の再発防止策として検討されてきた新基準です。しかし、多くの死傷者と被害を教訓としたはずの新制度(夜間長距離運行時の『交替運転者等の配置基準』)の内容は、明らかに「安全・安心が後退したもの」に。ところが一部新聞報道では「安心な新制度」として取り上げていて放置できません。
 新制度についての報道では、「規制の厳格化」「野放図な規制緩和状態が改善される」「乗務距離の短縮」、さらに「ワンマン運行の上限は夜間400キロ、昼間500キロに規制される。関越道事故前までの上限は670キロだった」として、バス輸送の安全が大きく進んでいるとの印象をあたえています。
 これは「あずみの観光」バス事故当時の、業界の平均的距離を大幅に延長した「国交省の指針」(2008年6月=670キロ)との比較であり、当時の労使慣行や慣習、総務省・行政評価局の勧告(走行距離が運転者の健康にあたえる影響)等を無視したもので、納得がいきません。

姑息なやり方で規制骨抜き

 このように、メデイアでさえ公表された数字のみで「安全」として取り扱っているのですから、これを読んだ読者は、「多くの事故と犠牲のなかから改善がはかられて安心」と、行政の対応・新制度に安堵しているのではないでしょうか。
 では、1日から実施された「高速乗合バス」の安全度の実際はどうなのか、問題が三つあります。まず新基準は、ワンマン運行距離の上限は昼間500キロ、夜間は400キロとしていますが、それは実車距離だけで、回送距離は別である点。
 二つめは、昼間は600キロ、夜間は500キロに延長できる条件は、普通の業務のなかで行われている程度のもので、100キロも延長することの条件と言えるものではなく、「まやかし的」との批判はまぬがれません。
 三つめは、高速乗合の夜間500キロ規制は、「路線毎個別審査」によって週2回まで500キロ超えを認めています。
 このように高速乗合の新規制は、始めに大きく距離延長(国交省指針で670キロ)をし、新基準は小さく(夜400キロ・昼500キロ)し、条件をクリアすることで距離を延長、さらに条件をつけ時間も距離も無制限状態にまで延ばしています。まさに「姑息なやりかた」と言われても仕方のないものです。

労働者全体で問題共有を

 最後に、今回の高速乗合バスの新制度報道について。メデイア側は乗務距離が引き延ばされた経緯など、おかまいなしです。とりあえず以前の距離にくらべてどうかを明らかにすればいいという姿勢です。問題は、メデイアにすべてお任せでは現実や真相がどうなっているかが明らかにならないこと、安全を守れないことがハッキリしたということではないでしょうか。乗客とみずからの命を守るのは、最終的には現場でハンドルを握る運転者です。その意味でも「新制度がどんなものか」を大いに宣伝し、働く仲間全体で共有することが重要になっています。
 その意味で一番急がれるのは闘う仲間のひろがり、そのための基礎固めをすること。いま一番もとめられている課題ではないでしょうか。「安全なバスの旅へ」たたかう自交バス部会への期待はひろがっています。

(8月8日寄稿)