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厚生労働省 国土交通省 根本問題に踏み込め
2016/01/25

罰則伴う法制化必要 改善しない「改善基準」


 1月15日未明、長野県軽井沢町の国道18号・碓氷バイパスで、41人(乗員2、乗客39)が乗ったスキーツアーバスが道路から転落、死者15人・重軽傷者26人を出す重大事故が発生しました。

起こるべくして起こった重大事故


 2000年に貸切バス事業の参入規制が「認可制」から「許可制」へと緩和された結果、零細企業や、それまで無認可(白バス)で営業していた悪質事業者が参入してきました。新規参入事業者は低運賃を売りに事業を拡大。既存バス事業者も生き残りを賭けたダンピング競争を繰り広げ、コストダウンを行うために、人件費、バス整備費用の抑制を余儀なくされました。
 その結果、運転者に過重労働が強いられるようになり、07年2月の「あずみ野観光」事故(死者1人・重軽傷者26人)、12年4月の関越道事故(死者7人・重軽傷者36人)、14年7月の東名阪道事故(重軽傷者27人)など居眠り運転による重大事故を招きました。
 また、14年3月の北陸道事故(乗員1人・乗客1人死亡)のように運転者の急性疾患発症による事故は04年には18件だったのが12年には58件と3倍以上に増加。一般路線バスでも同様の事故が相次いでいます。
 「あずみ野」事故の運転者は大型二種免許を取りたての21歳、関越道事故の運転者は取得2年目でした。軽井沢事故の運転者は65歳で昨年12月に契約社員として雇用されましたが、大型バスの経験はなかったといいます。規制緩和前までは、大型バス運転者になる条件として「大型経験3年以上・妻帯者」が当たり前でした。高齢者が夜行バスを運転することもありませんでした。
 自交総連は2000年の以前から安全にかかわる規制緩和に反対し、「重大事故が起こる」と警鐘を鳴らし続けています。今回の事故も起こるべくして起こった事故です。

実効性なき「改善基準」

 厚生労働省は1989年に「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準)を策定し、労働時間の規制を行なっています。しかし同省の過労死認定基準が「月80時間以上の時間外労働」であるのに対して「改善基準」は最大で月115時間の時間外労働が可能であり、実効性がありません。
 しかもその「改善基準」すら遵守していない事業者も多く、今回の事故を起こしたバス事業者「イーエスピー」も守っていませんでした。同社は事故の2日前、運転者に健康診断を受けさせていなかったとして関東運輸局から20日車の停止処分を受けていました。

人命を優先する規制に

 国交省は関越道事故をふまえた規制強化の一環として、ワンマン運行できる距離を昼は500キロ、夜は400キロまでとしましたが、途中1時間の休憩を入れれば昼600キロ、夜500キロまで運行できます。しかもこの規制に回送距離は含まれていません。
 また、バス・タクシー・トラックを合わせて全国で約12万事業者がありますが、それを監査する国交省の要員が約350人とあまりにも少ないうえに専任もしていません。これでは全ての事業者を監査することは物理的に不可能です。専従監査官の大幅な増員が必要です。
 国交省は行き過ぎた規制緩和に終止符を打ち、入り口規制を強化すべきです。そして厚労省は「改善基準」を実効性のある内容に改正・法制化しない限り、これまでのような重大事故は起こり続けます。経済的な都合を人命より優先するなど絶対に許されません。