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進む破壊 バス業界
2019/01/08

自動車運転者人に非ずか


 路線バスを自動運転で運行する全国で初めての実証実験が12月12日に前橋市で行われました。バス業界は自動運転以前に解決しなくてはならない問題が山積し、安易に導入すべきではありません。

 路線バスは人や自転車、自動車などが往来する一般道を走行します。どんなに自動運転が優れていても事故は必ず起こります。そして、身体に障害がある方や急病への対応、そして責任は誰が負うのでしょうか。「運転者不足」と言われていますが、不規則・長時間労働、低賃金では求職者から敬遠されるのは当然でいま求められているのは労働条件(環境)の改善です。
 事故が起こる背景にはバスの規制緩和(2000年)があります。過当競争で労働条件が悪化、そして参入規制がないうえに不良事業者を排除する効果的な法律もありません。

競争で自主規制崩壊

 バス事業者(業界)は運転者の過労による1985年1月28日の犀川スキーバス転落事故(死者25人、重軽傷者8人)を教訓として、「新規採用は30歳以上、大型経験3年以上、妻帯者に限る」「ワンマン運行は350キロまで」「夜行完全2人運行」「24時以降入庫は休日扱い」など、様々な自主規制を行なっていましたが、規制緩和によってそれまで無許可営業(白バス)など違法が当たり前だった悪質事業者や零細事業者が参入しました。
 運転免許取りたて、あるいは経験の少ない運転者が乗務するようになり運賃ダンピング競争が激化。既存バス事業者も対抗せざるを得なくなり、コスト削減を追求し安全施策や労働条件など下げました。
 その結果、運転者の健康に起因する重大事故が激増。あずみ野観光スキーツアーバス事故(07年、死者1人、重軽傷者26人)、関越道高速ツアーバス事故(12年)北陸道小矢部川サービスエリアでの夜行高速バス事故(14年)、そしてこの1月15日で丸3年を迎える軽井沢スキーツアーバス転落事故(死者15人、重軽傷者26人)は、犀川事故以来の30年で最多の死者数です。報道されていない事故も多くあり、これらは氷山の一角でしかありません。

国交省報告も氷山の一角

 国土交通省に届けられた一般路線バスなどを含むバス運転者の意識喪失による事故や健康に起因する運行不能は15〜17年の3年間で451件。内119件が脳・心臓疾患などによる意識喪失。会社別では1946年開業の老舗K社が22件(意識喪失8件)。同社の勤務表などを入手したところ、1か月260〜300時間に及ぶ拘束時間が常態化していました。
 運転者の拘束時間規制には厚生労働省の告示「運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)がありますが、それに違背する1日17時間拘束や2人業務27時間拘束など長時間不規則勤務となっていて、拘束時間300時間は通常業務であれば時間外労働は100時間以上に及びます。これは厚労省の過労死認定基準(過労死ライン、別掲)に匹敵します。そもそもバスの改善基準告示は、過労死認定基準を大きく上回る最大115時間を容認する内容になっています(解説を別掲)。
 貸切バスの運賃は、地方運輸局長が提示した公示運賃(地域内の経済状況やバス事業所の経営状況を考慮して定める)の範囲内で設定、届け出ることになっており、運送引受書に記載された運賃・料金が届出どおりに計算されていない場合は法令違反となり、行政処分の対象となります。

公示運賃も守らない

 国土交通省は、関越道高速ツアーバス事故を受け貸切バスの安全性向上を図る取り組みの一環として、運賃制度を抜本的に見直し安全と労働環境改善コストを反映した「新公示運賃」を14年4月から実施しましたが、新公示運賃の人件費は、当時のバス運転者と一般常用労働者との差額の半分を上乗せしただけで安全コストを反映したものではありません。当初は3年後に運賃の見直しを行うとしていましたが未だに行われず、この安い公示運賃も守らないインバウンド主体のバス事業者が増えています。
 この公示運賃は「貸切バス」に適用されるもので送迎バスなどの「特定バス」には適用されません。国は安全対策を講じたとしていますが、官庁や自治体が競争入札で公募する送迎バスも公示運賃は適用されず半額から3分の1以下で落札されています。貸切バス事業者が特定バスを保有していることが多く、同じ運転者がハンドルを握っています。
 国は多くの運転者・乗客が命を落としているにもかかわらず実効性のある施策を打ち出しません。安倍政権の下では“自動車運転者は人に非(あら)ず”です。