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11時間の休息期間必要
2022/01/05

バス部会事務局長 山本雅広

 世界で猛威を振るっている新型コロナウイルスの影響を受け2年になります。
 感染状況が少し落ち着いた秋口から少人数での旅行や修学旅行などでワンマン運行(添乗員付き)の需要が若干持ち直してきましたが、ガイド業務も伴うバス需要はまだまだ回復しません。インバウンドを主体としたバス事業者も営業休止が継続され、車庫が観光バスで埋め尽くされているところも少なくありません。
 コロナ禍でバス事業が停滞する中、2016年1月15日に15人が死亡し、26人が負傷した軽井沢スキーバス転落事故の刑事裁判が昨年の10月から始まっています。
 再三、国土交通省に規制緩和の弊害を指摘し、「早急に改善すべきだ」と訴え続けてきた中で繰り返されてきた「重大事故」ですが、今回の公判で明らかになったバス会社のずさんな運行管理を耳にしても、「やはり」と思うだけで正直驚きはありません。ハッキリ言えるのは規制緩和がなければ、国土交通省が適切に改善していれば、今回の事故は防げたということです。
 07年2月18日未明に発生した「あずみ野観光バス」事故(27人が死傷)では、事故を起こした乗務員は21歳。規制緩和前では、絶対にあり得ない年齢です。
 これまで大型バスの運転には大型トラックの経験が3年など、各社の自主基準があり、大型バスに乗って1年では、スキーツアーで山道を走らせるなど考えられません。各社とも梯団(ていだん)走行で経験を積ませ徐々に独り立ちさせるなど、安全コストをかけて運行に注意を払ってきましたが、規制緩和で引き起こされた過当競争によって、これまでの努力がすべて水泡に帰す状況になってしまいました。
 自動車運転者の労働時間を規制する「改善基準告示」が今春にも改正されますが、またしても人の営みからかけ離れた休息期間を設けようとする事業者の「エゴ」が露わになっています。仕事が終われば家族とも過ごしたい、8時間は寝たい、過労死が突出して多い交通運輸産業の働き方を変えたい、11時間の休息期間は絶対に必要です。