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改善基準告示改正 バス乗務間インターバル論議
2022/03/08
「雇用共同アクション」の宣伝行動(2月17日、東京都内で=自交本部提供)
命預かる運転者の休息期間
9時間では睡眠確保できぬ
改善基準告示の改正について議論する労働政策審議会・専門委員会の第5回バス作業部会が2月17日、東京都内でリモート方式で開かれました。会場前では「雇用共同アクション」が宣伝を行い、会議は自交総連本部・菊池書記長が傍聴しました。
(自交総連本部『自交労働者情報』2月18日付)
焦点の休息期間(現行8時間以上)について、厚労省事務局は「継続11時間以上の休息期間を与えるよう努めることとし、継続9時間を下回らないものとする」という修正案を提示し、使用者側は了解、労働者側も修正案の「努めること」という部分には何ら反論せず、11時間は努力規定でよしとする態度でした。公益委員が「“努めることとする”というのは実際は9時間で運用されることになる」と異論を出し、案の確定には至りませんでした。結論は次回(3月16日)に持ち越しとなりました。
労働者委員の発言は、交通労連、私鉄総連の代表二人とも、「休息期間11時間が大切」と言いながら、肝心の11時間が「努めること」という努力規定にされてしまっている点については、まったく触れていません。この案で決まってしまえば、公益委員が指摘したように“努力したができませんでした”でよいことになり、実際の規制は9時間ということになります。
公益委員が、「安全を守るという認識に立てば11時間が必要」と言っているのに、労働者側が努力規定でよしとしてしまったのでは、労働者を代表して審議会に出ているという責任を果たしていないと言わざるを得ません。次回作業部会では、姿勢を改めて明確な主張をすべきです。
21日には第5回ハイヤー・タクシー作業部会が開かれ、厚労省事務局はバスと同様の修正案を提示しています(=詳細は次号)。
世論喚起が重要
当日は会場前で「雇用共同アクション」と共同で宣伝行動を行いました。
インターネット署名(第2弾)も1万5000人以上の署名が数多くのコメントとともに集まり、2月8日に審議会の全18人の委員全員に郵送で提出して、休息期間11時間とするよう申し入れをしています。
東京新聞が2月16日、17日と連続して朝刊1面でこの問題を取り上げ、過労死が多い業界に休息期間11時間は必要との識者の声も紹介しています。
世論は盛り上がりつつあります。最終決定はまだ先であり、最後まで11時間を求めて世論を高めていくことが必要です。
第5回バス作業部会
主な意見
(1日の拘束時間、休息期間について)
○使用者委員(※1)
ILO条約でも最低は8時間となっているところを9時間にするのは前進だ。過労防止の点から行われることを厚労省も周知してほしい。
○労働者委員(※2)
休息期間は原則11時間というのが大切だ。アンケートでも11時間必要という回答が多かった。拘束時間14時間超えを2日以上連続しないという規定がなくなったのは後退している。本文に回数を書くべきだ。休息期間は原則11時間、やむを得ない場合9時間とした方がいい。
○労働者委員(※3)
継続11時間というのを原則11時間という表記にしてほしい。
○使用者委員(※1)
原則というのは問題。一般の労働者には休息期間が定められていない中で、自動車運転者だけ適用されるのに、原則というのは踏み込みすぎだ。
○労働者委員(※3)
原則と入れても、実際多くのところで11時間は守っているのだからいいのではないか。
○使用者委員(※1)
原則という言葉をなぜ入れないといけないのか。
○労働者委員(※2)
拘束14時間超えの回数は、連続性を考慮すべきだ。休息期間は11時間、それによらない場合は9時間とするということで、労働側も譲歩したが、11時間というのは疲労回復のために必要ということは使用者も考えてほしい。
○公益委員(※4)
自動車運転者は命を預かる人、安全を守るという認識に立てば、継続11時間――もうひとつ10時間という考え方もあるかもしれないが、11時間は必要だ。「努めることとする」というのは“努力したけどできなかった”ということでもよいということになり、実際は9時間で運用されることになると思う。11時間未満では6時間を切る睡眠になってしまうので、国民の安全を守るとの考えからは、11時間というのは意義のある数字と考えている。
○使用者委員(※1)
9時間になった時は、後でどこかで11時間にならなければならない。永遠に9時間ということにはならない。
※1 齋藤隆氏(京成バス株式会社代表取締役社長)
※2 池之谷潤氏(日本私鉄労働組合総連合会中央副執行委員長)
※3 鎌田佳伸氏(全国交通運輸労働組合総連合軌道・バス部会事務局長)
※4 小田切優子氏(東京医科大学公衆衛生学分野講師)