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年頭インタビュー――プロの存在価値高めよう
2019/01/08

執行委員長 福井 勇

 白タク合法化の圧力が強まる中で迎える2019年。政治・社会情勢、タクシー業界の課題、新年の展望などについて、福井委員長に話をうかがいました。


 ──2018年の重大ニュースの中で委員長が最も印象に残ったのは何でしょう。
 沖縄県知事選挙で、辺野古への米軍新基地建設に反対する玉城デニー氏が大差で当選したことですね。“基地に反対しているのは本土の活動家”などというデマも流れましたが、沖縄の民意が明確に示されました。
 先日乗務で会話した沖縄出身の利用者は「米兵によるレイプなどの事件は、報道された時だけではなくて毎日のように起こっている。沖縄の人間の感情をかき消すような報道ばかりだが、沖縄の闇の部分がこの選挙結果でみんなに伝わればいい」と仰っていました。
 選挙結果を受けても民意を踏みにじって工事を強行する政府には怒りをおぼえます。安倍政権の強権体質が辺野古に凝縮されていると思います。
 ──基地建設には巨額の利権が絡んでいるでしょうし、防衛費は5年で27兆円、1機100億円のF35戦闘機を米国から100機購入するそうです。
 米トランプ大統領の機嫌をとるために買ってるようにしか思えないし、そういう戦闘機を買うということは、ますます日本が戦争をする国へと向かってるということです。単なる無駄づかいではすまないということを市民に発信していきたいと思います。
 ──地域的な話題では、2025年万博開催地が大阪に決まりました。
 カジノを造る口実のために万博を誘致してきたのだろうと見ています。全国からギャンブル依存症の人を呼び寄せて金を吸い上げようという悪意に満ちていると言わざるを得ません。
 ──万博で好景気が期待されていますが。
 万博で潤うのは大手ゼネコンだけ。儲かったお金も内部留保に積み増しされるだけで、安倍政権が言うようなトリクルダウンも起きません。
 アベノミクスで景気が良くなったという報道もよく聞きますが、国が株を買い支えての見せかけの景気です。“いつか弾(はじ)けるのではないか”という危機感がありますから、結局誰もお金をつかいません。

過労死招く副業推進
乗務員負担許さない


 ──大阪では23年ぶりの実現をめざす運賃改定要請が11月から始まり、大阪タクシー協会会長会社の日本タクシーは初乗り1・7キロ670円、242メートルごとに80円加算との内容です。
 2017年1月から初乗り距離短縮を実施している東京では初乗り1・052キロで380〜410円。業界としては初乗り距離短縮はライドシェア対抗策としての意味合いもあります。
 ライドシェアに対抗するにはプロドライバーとして安心・安全・快適を担保できるような技術で対抗すべきであり、価格ではないと思っています。1・7キロで670円とかややこしいことをしなくても、上げるなら上げるで潔(いさぎよ)く2キロ750円でもいいじゃないですか。利用者に評価される仕事をすればいいんです。そのために自交総連は「タクシー運転免許構想」を打ちだし、タクシー運転者の地位を向上させることが必要だと訴えています。
 ──二種免許の取得要件を緩和して運転者の門戸を広げようという動きもありますが。
 それはあかんでしょう。手間をかけて二種免許を取得した、それが自分がプロであるという自覚の根本じゃないですか。
 ──「プロ」という話が出ましたが、ライドシェアでは昼間は別の仕事で働き、夜は運転者という働き方も予想されます。
 長時間労働、過労運転もライドシェアの危険性のひとつですが、安倍政権が「働き方改革実行計画」の中で「副業・兼業の普及促進を図る」としていることと合致します。これを許してしまうとすべての産業で過労死が増えます。
 ──タクシーの場合、「生活が苦しい、もっと乗務させてほしい、休憩時間が長すぎる」などと訴える声もあります。
 すべては、需要と供給、そして歩合制賃金に孕(はら)む矛盾です。問題を解決するには歩合制をどうすべきか。それを月給制にしたら、いまたくさん稼いでる人は賃下げになるし、歩合制をなくそうとすると「会社がつぶれる」と事業者は主張するだろうとは思います。でも後々には是正しないとタクシー産業は生き残っていけません。それをどのタイミングでやるか、やれるのかという話です。
 ──2019年をどのように展望しますか。
 白タク合法化阻止のたたかいは正念場を迎えます。そしてライドシェア企業と提携するタクシー会社では早晩アプリの手数料やキャッシュレス問題も浮上してくるでしょう。現状でもクレジット手数料など乗務員負担制度が横行していますから、運動を強化していきたいと思います。