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休みたくても休めない 有休手当の見直し必要
2019/04/25

有休年5日取得義務化で懸念される賃金大幅低下


4月からすべての企業で、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日は使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられましたが、タクシー労働者の場合、現行の有休手当では賃金が大幅に下がってしまう恐れがあります。(参照=自交総連本部「自交労働者情報」425)

賃金大幅ダウン
有休が取れない


 使用者は労働者に必ず年5日の有休を取らせなければならず、罰則(30万円以下の罰金)もあることから、もし労働者が自主的に5日の有休をとっていない場合には、使用者が時季を指定して否応なく有休を取れと指示することになります。
 有休を消化することは、労働者の心身の健康からもよいことですが、タクシーの場合、歩合給が中心のため、有休を取ると賃金が大幅に下がってしまうという問題があります。仮に基準日から1年間の最後の1か月にまとめて5日の有休を時季指定された場合、賃金の低下で生活できなくなることもあり得ます。
 したがって、有休5日義務化に合わせて、有休手当を賃金が下がらないものにしておくことが大切です。

有給休暇は権利
不利益扱いダメ


 労働基準法39条9で、使用者が年次有給休暇に対して「支払わなければならない」とされているのは「平均賃金」、「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」。さらに労働者過半数の組合、あるいは過半数代表者と協定を結んだ場合は、例外的に「健康保険法に規定する標準報酬月額の30分の1に相当する金額」を支払えばよいことになっています。
 年次有給休暇は、労働基準法によって労働者に認められた権利です。年休を取得したことを理由に不利益な取り扱い(例=皆勤手当や賞与などを算定する際に年休取得日を欠勤扱いとする等)をしてはならないことは当然であり、労働基準法の附則第136条では「使用者は、(中略)有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取り扱いをしないようにしなければならない」という訓示規定が設けられています。
 93号通達※でも「年次有給休暇を取得したとき、不当に賃金額を減少させないものとすること」としています。「改訂4版 自動車運転者労務改善基準の解説」(労働調査会出版局編、厚労省労基局公認)は、「『不当』とはどの程度を指すか」との想定質問に対し「労働者の年休取得を抑制する効果を持つ程度に労働者にとって不利益になる取扱いをいうものである」と答えています。
 ※93号通達=旧労働省労働基準局が都道府県労働基準局に、同省告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(1989年)についてその解釈の仕方や具体的な対応の仕方などを示した通達。同年3月1日付。

累進歩合の弊害
年休取得を抑制


 売上高などに応じて歩合給が定められている場合にその歩合給の額が非連続的に増減する「累進歩合給」。1乗務休むことによる賃金の落ち込みと、有休手当との差額(右の図1)が大きければ大きいほど、年休取得を抑制する効果は強くなります。93号通達では「歩合給制度のうち累進歩合制度は廃止するものとすること」としています。

タクシーの未来
労働条件が肝心


 歩合給が中心のため、有休を取ると賃金が大幅に下がってしまうタクシー業界。劣悪な労働条件が求職者から忌避され、乗務員数の減少に歯止めがかからずタクシー産業全体が存亡の危機に直面しています。休みたくても安心して休めない──これで将来を担う若年層が集まるでしょうか。