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持続可能な運送サービスの提供の確保に資する取組を推進するための地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議
2020/06/08

2020年5月26日 参議院国土交通委員会

 政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じ、その運用に万全を期すべきである。

一 交通事業者、物流事業者等が必要な輸送機能を維持できるよう、新型コロナウイルス感染症による急激な経営悪化に対する財政、税制、金融等の各種支援策を一層充実するとともに、その従業員に対して実施される雇用維持対策及び感染症予防対策等への更なる支援強化に努めること。

二 国及び地方公共団体は、持続可能な地域公共交通の確保及び維持のために安定的な財源の確保を図ること。また、バス、タクシーやデマンド交通の確保及び維持等、公共交通の利用環境の改善に関する取組に対しては、これまで以上に多様かつ柔軟な対応を図りつつ、財政的な支援を図ること。

三 地域公共交通の確保及び維持のために、自動車運転者等輸送の担い手である公共交通に従事する者の確保、育成及び定着に配慮するとともに、自動車運転者等の賃金及び労働時間等の労働条件の改善について幅広く検討すること。

四 地域公共交通計画を適切に作成し同計画に基づく事業計画等を円滑に推進するために、外部有識者からの助言なども含めた計画作成に要する費用を始めとする財政的支援を一層充実するとともに、ガイドラインの作成、知見やノウハウの提供、人材の確保や育成といった、ソフト面での支援や助言も十分に行うこと。また、地域公共交通計画の作成に当たり、地方公共団体における組織体制の充実のための支援を強化すること。

五 福祉輸送、スクールバス等の地域の輸送資源の総動員に当たっては、これらの担い手である関係者とともに高齢者、障害者等の移動弱者の声を代表する者が協議会に参画できるよう、基本方針やガイドラインで、明らかにすること。また、既存の公共交通サービスを改善する取組を推進し、バリアフリーの視点に立った利便性及び快適性の向上にむけた必要な環境整備を図ること。

六 MaaSを全国へ円滑に普及させる観点から、その導入によって実現される社会像を国民に分かりやすく示していくとともに、ICT等の最新技術の積極的な活用による交通ビッグデータの整備など、将来の交通社会の変革に資する環境整備を図ること。

七 自家用有償旅客運送が事実上の営利事業として地域公共交通の担い手となっているタクシー事業者の経営を圧迫することにならないよう対策を講ずること。また、地域公共交通会議等における関係者の協議を経て、安全の確保、利用者の保護等に万全を期すこと。あわせて、いわゆる「ライドシェア」は引き続き導入を認めないこと。

八 高齢化の進行や人口の減少に伴って交通空白が急速に拡大する過疎地域での移動手段の確保のため、より身近な地域コミュニティにおける道路運送法の許可や登録を要しない共助による運送の在り方について、ライドシェアを除外したうえで検討を深めること。

九 営業区域外旅客運送を行うタクシー事業については、住民の利便性の向上に資する観点から、地域公共交通会議等において十分な協議を経て、一定のルールの下で、事業者において混乱なく、また、運用の効率化ができるよう、ガイドラインの制定や通知の発出等必要な措置を講ずること。

十 地域公共交通利便増進事業において、乗合バスの新規参入等に係る通知を受けて地方公共団体から地域の意見が提出された場合は、その意見を十分に尊重し判断を行うこと。あわせて、運行計画におけるいわゆるクリームスキミング規制について時間帯による運行本数のみならず面的なネットワークの維持に繋がるよう地域の判断を前提とした今回の制度改正の効果を検証し、必要に応じてその見直しを検討すること。また、同事業における事業者間の利害調整が円滑に進むよう環境整備に努めること。

十一 地域公共交通計画において事業の効率化に関する指標を定めた上で、毎年度、実施状況の評価等を行い、それを翌年度以降の事業予算等に反映されるという適正なPDCAサイクルが地方公共団体において継続的に実施されるよう、支援や助言を十分に行うこと。

十二 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構による民間事業者への資金の貸付制度の運用に当たっては、公的資金を原資とするものであることを踏まえ、真に地域公共交通の活性化を図る目的に合致した事業に限定するとともに、選定基準の明確化を図ること。また、貸付対象となる事業者について、客観的かつ中立的な立場から審査及び評価を行うとともに、第三者委員会を活用して選定過程の透明化と説明責任の向上を図るよう機構を指導すること。

右決議する。