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コロナからなかま守る 関西地連の真価を発揮
2021/01/06

コロナからなかま守る 関西地連の真価を発揮

2020年の奮闘を振り返る─京都地連・吉村勇路委員長


 大阪地連、京都地連、和歌山地連が結集する広域組織・関西地連の結成から10か月。コロナ禍の中で同地連が果たした役割、京都の現状などについて京都地連・吉村勇路委員長(関西地連副委員長、写真)に話をうかがいました。(インタビュー=20年12月19日)

あきらめずに運動展開
大津の白タク特区阻止


 ──関西地連の結成からまだ1年も経っていませんが、はるか遠い昔のことのように思います。改めて広域地連結成の意義についてお話しいただけますでしょうか。
 「京都のタクシー業界では倒産や廃業が相次ぎ、そういった状況の中で組織数が減少し、専従者も置けない、みんなボランティアでやってた状態でした。しかし規制緩和の問題、ライドシェアの問題などは待ってくれませんので、それを阻止するためには組織を大きくして反対運動を進めていくべきということで結成に至りました」
 ──さっそく関西地連の真価が発揮される出来事がありました。
 「京都地連のある単組ではスライド賃下げやボーナスカットが一方的に行われようとしていましたが、大阪地連からも団交に入ってもらって阻止することができました」
 「そして滋賀県大津市が国家戦略特区申請を取り下げました。大津にライドシェアが導入されると隣接する京都にも波及しますので、あきらめずに相当な運動を大阪地連と一緒に取り組みました。あれは本当に成果だったと思いますね」
 ──このコロナ禍では京都の落ち込みは全国的にも一番だったと聞きます。
 「いちばんきつい時で前年同月比80数%以上マイナスですね。解雇者を出さないために必死に動きました。自交本部や大阪地連に問い合わせたり、厚労省にも直接、市会議員を通じて訊かせたり、労働局とも交渉も行ないました。わりと早い段階で雇用調整助成金を活用して休業補償を100%とれるようになり、結果的に会社ももたせることができました」
 ──ここに来てコロナ感染が再拡大していますが、今日、ここに来るまでに繁華街の人の多さに驚きました。GoToトラベルの問題も観光都市京都としては悩ましいところですね。
 「京都の新規感染者が一日100人未満で済んでるのが不思議ですね。“感染防止と経済の両立”と言いますが、コロナ対策を中途半端にやって、いまみたいに再拡大すると結局経済も回らないようになってきます。今回のGoTo停止は遅いですね」
 「私の職場では4月から第1次休業として、65歳以上の高齢者、疾患を持ってるかた、それと高齢の家族と一緒に住まわれているかたを休ませました」

結局運転者だけが犠牲
改革には政治の力必要


 ──休業する会社がある一方で、休まず営業を続けた会社の乗務員は感染の恐怖と生活苦の二重苦です。
 「5月なんか京都駅に入ったら5〜6時間待ちですよ。それが2か月続きました。最賃も保障されず、結局は運転者だけが犠牲になってるわけです」
 ──最賃をめぐる議論では“大幅に引き上げたら会社がつぶれる”という声が根強いですね。
 「いまの最賃が保障されたところで生活の充足にはほど遠い最低基準ですよね。それすら守らない事業者がほとんどです」
 ──京都に来て、もうひとつ驚いたのが四条通りの渋滞です。2015年に車道を片側1車線化して歩道を拡幅したそうですが。
 「“歩ける街づくり”は(通行する自動車の)総量規制があってはじめてできることであって、ヨーロッパの都市でもみな総量規制やってますよね。それをせずにああいうことをやるのはメチャクチャですわ。相当不評ですよ」
 ──京都といえば、エムケイの問題も避けて通れません。
 「京都はエムケイのおかげでひどい目に遭ってきました。彼らは何を言っても通じませんから。自分とこさえ良かったらええと。よそは知らん、つぶれたらええと、そういう感じできてますので、何を言ってもまとまらないんです。エムケイの問題があって京都では運賃改定のない時代が長く続いたことから、春闘での賃上げがかなわず苦労しました」
 「エムケイシステム(リース制賃金)はいわば小作人制度です」
 ──ライドシェアでは、運転者が個人事業主として扱われて労働者保護法制の枠外に置かれるというのが重大な問題です。ライドシェアの強力な推進論者である竹中平蔵氏が菅内閣のもとでも成長戦略会議に入り影響力を保っています。
 あの人、えぐいですねー。日曜にやってるテレビ番組にこの3か月ほどで2回出てはるんですけど、そのたびに“世界でライドシェアを導入していないのは日本だけ、本当に遅れてる”“日本だけは反対運動が起こってどうにもできない”といまだに言うてはるんですよ。タクシーのことを目の敵にでもしてるんですかね」
──白タク・ライドシェア合法化を阻止するためには政治闘争が重要ですが、組合員の一部には“政治運動より、賃金や社内の問題に専念してくれ”という声もあります。
 「組合活動と政治は一体のものであり、政治の力を借りないと改革できません。そやから選挙には行きましょうと、そして我々の意思が反映される候補者を選んで入れてくださいというふうに職場では言ってます。会社の組織でも、組合の組織でも、ソフトボールの監督にしても、そのトップや上層部が変わるだけでガラッと変わるわなと、そういう実例を出すんです。そやからそこに参加しないことには始まらん、とね」
 「規制緩和の問題でも僕らの力だけでは国会で通ってしまいます。自分らの生活がかかってる、お客さんの安全も損なわれる可能性が高い、やっぱり政治を変えていかなんだらあかんよ、というふうに職場では言ってますし、なかまも理解してくれてます」

怖いのは“コロナ明け”
問題共有して危機突破


 ──上部団体不要、組合費減額を主張する人がどの組合にも一定数いますが。
 「いろんな活動しようと思ったら費用がいる、そやけどその分、賃金や労働条件が守られるし、コロナ禍では100%の休業補償が得られるわけです。権利を守り、要求を実現するための組合費です。それを安くして賃金・労働条件が下げられたら1千円、2千円の話ではありません」
 「僕ら組合活動を長いことやっててもコロナ禍は初めてのケースです。上部団体のアドバイスがあったからなかまを守ることができました」
 「無知な経営者が多いタクシー業界では、コロナ禍の中で一方的な廃業や解雇が全国的に起こりました。和歌山の有田交通グループ労組は自交総連に入って解雇を阻止することができましたが、この事例でも上部団体の必要性が再認識されたと思います」
 ──最後に2021年の展望と、関西のなかまにメッセージをお願いします。
 「一番怖いのは“コロナ明け”ですね。雇用調整助成金の特例がなくなった時に、どうなるのか。タクシーの営収回復は一番最後でしょうからね。ワクチンができてコロナが終息して、世の中が良くなって、その次の次ぐらいでしか回ってこないでしょうから。最賃保障もできるのかなと」
 「京都、大阪、和歌山の各地域で一生懸命頑張って、また助け合ってやっていかんことには、この困難な状況を切り抜けられないと思います。問題を共有して、お互いに協力して運動を盛り上げていきましょう」