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北九州市と東京・渋谷区でタクシーの健康起因重大事故
2021/01/25

行政責任自覚せよ


 2021年に入り、タクシー運転者の意識喪失による重大事故がたて続けに報じられています。昨年12月に北九州市戸畑区で運転者と利用者1人が死亡した事故では、心疾患を抱えていた運転者が事故直前に意識を失っていたとみられることが警察へのマスコミ取材で判明(1月6日)。1月4日に東京・渋谷区でタクシーが歩行者を次々にはね、1人が死亡、5人が重軽傷を負った事故では運転者が事故直前、くも膜下出血などの脳卒中を起こし意識を失っていたとみられています。

 運転者の年齢は北九州の事故が74歳、渋谷の事故が73歳。脳や心臓のリスクは加齢とともに高まります。
 国土交通省の資料によると、2018年に事業用自動車の運転者が運転中に意識障害などにより操作不能になった事案が79件、うちタクシーは22件ありました。
 このような事案が毎年増加している状況をふまえ、2016年12月に道路運送法が改正され、事業者は「必要な医学的知見に基づく措置を講じなければならない」と明記されました。
 国交省は2018年、自動車運送事業者における「脳血管疾患対策ガイドライン」を、20年には同「心臓疾患・大血管疾患対策ガイドライン」を策定。後者のガイドラインでは「心臓疾患、大血管疾患は、生活習慣の悪化及び就労環境の影響の結果として段階を追って発症リスクが高まる」として、事業者に向けて「(1)運転者に生活習慣の改善を促すとともに勤務環境を改善し、(2)定期健康診断結果による事後措置を実施してリスク者を見出し、(3)スクリーニング検査の受診により病気を早期に発見し、(4)運転者の疾病を見逃さないための重要な症状を把握することで、発症の可能性を少しでも低くすることが重要」と説いています(1章‐3)。

ストレスにさらされる

 同ガイドラインは大部分が「運転者の生活習慣改善」と「病気の早期発見」に主眼がおかれており、「勤務環境」に触れているのは前出の1か所のみ。その図表(左上に別掲)では「勤務環境が悪い/長時間労働/ストレスフル」と示しながら、「事業者ができること」として「生活習慣改善を促す」だけでいいのでしょうか。
 タクシー運転者は密室での接客業ゆえに感情のコントロールが求められる上に、供給過剰、バラバラ運賃、過度の値引きで走れども走れども売上が上がらないなど、日々ストレスが募るばかりです。
 規制緩和を推進し、タクシーの賃金・労働条件を劣化させ運転者の高齢化を招いた責任を関係行政は自覚すべきです。