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タクシー業界にはびこる違法な手段 コロナ禍できわだつ
2021/04/15

職場の最賃 要チェック


 コロナ危機によってタクシーの営業収入は大幅に低下、歩合給であるタクシー労働者の賃金も大きく下がって、最低賃金(最賃)法違反の低賃金が生じるケースがあります。全国では相当数の最賃違反が発生しているものと思われます。こうした事態に、一部の経営者は、最賃法違反を逃れるために非常識で違法な手段を講じる場合があります。労働時間を短く見せかけて最賃をクリアしていることを装うものです。最賃は、コロナで緊急事態であろうとも、必ず支払われなければならないものです。以下の事例を参考によく点検してください。

《最低賃金不払いにつながる手法》

(1)休業手当との合算はダメ
 部分的に休業、部分的に勤務している場合、勤務したときの賃金は、勤務した労働時間に応じて最賃を上回っていなければならず、下回っていた場合は最賃法違反になります。支払った休業手当を合算して、1か月トータルで最賃をクリアしているということはできません。

(2)停車時間を休憩時間に繰り入れるのはダメ
 以前から行われていましたが、コロナ危機で再び目立ってきたのが、タコメータ(自動日報)をつかって、停車していた時間を一律に休憩時間扱いして労働時間から除外することにより、労働時間が短くなるので最賃に違反していないとするやり方です。
 休憩時間は、労働者が車から離れて自由に使える時間でなければなりません。車が止まっていても、労働者が自由に使えるのでなければ、それは労働時間です。客待ち時間は「手待ち時間」といって労働時間です。厚労省も追認したうえで、「実態をみて判断し、指導を強化していきたい」と答えました。(3月5日、厚労省交渉で)
 労働者に休憩の自己申告を求めて、乗務記録に具体的な休憩内容の記載がある場合に、その時間を労働時間から除外するという例もありますが、自己申告はあくまで任意の協力によって行うべきで、労働時間の圧縮を目的として申告を強制することは許されません。
 しかし、現場では往々にして、労働者の認識不足もあり休憩したようにサインを求める事業所の指示に従うケースが少なくありません。

(3)3時間を超える休憩時間は事業場外ではダメ
 事業場外における休憩時間は3時間を超えてはならないことになっています(改善基準通達)。休憩時間を3時間超に伸ばして労働時間を圧縮するのは違法です。
 事業場内や自宅で休憩する場合には3時間を超えることができますが、昼間に4時間とか5時間の不自然に長い休憩を設定するのは労働者の不利益になります。休憩時間の変更は、就業規則を変えなければならず、労働者の同意なく不利益変更はできません。自宅で休憩をとる場合は、「いったん帰庫(点呼・アルコールチェック)→帰宅→休憩→出勤→(点呼・アルコールチェック)再出庫」としなければなりません。

(4)所定労働時間を短くしたら、時間外労働手当の支払いが必要
 休憩時間を延ばすのと連動して、勤務ダイヤをつくる際に、1日の所定労働時間を不自然に短くして時間外労働協定を結ぶ例もあります。労働時間の原則は1週40時間、1日8時間以内ですから、隔日勤務の場合は1乗務で16時間以内となり、所定労働時間は14〜16時間程度が普通ですが、これを13時間以下とか極端に短くして、その分、休憩時間を長くして(実際には働くことが前提)、労働時間を圧縮しようとするものです。
 (3)のように事業場外での休憩時間は3時間超は認められません。拘束時間=労働時間+休憩時間(右表)ですから、拘束時間を変えずに所定労働時間を短くすれば、その分時間外労働時間が長くなります。時間外労働には当然、割増賃金が支払われなければなりません。これをまともに支払うつもりもなく、所定労働時間を縮めるのは不当です。

《最賃の計算方法》
 最賃に違反していないかどうかを確かめるには、支払われた賃金を時間額に換算して各都道府県の地域別最賃と比較します。
 比較する賃金には、(1)精皆勤・通勤・家族手当(2)臨時に払われる賃金(3)一時金(4)時間外・休日・深夜割増賃金は含めません。これらを除いた額について、以下の計算をします。
 (オール歩合の場合)賃金÷総労働時間=時間額
 計算された時間額が各都道府県の最低賃金を下回っていれば違法です。
 労働条件は労使合意で決定すべきものです。コロナや同一労働同一賃金を理由に、最低賃金法違反逃れも目的にした不当な労働条件の変更、時間外労働協定などが提示された場合は、安易に単組で判断することを避け、上部団体等に相談し、慎重に検討しなければなりません。労働者の同意なき労働条件の一方的な変更は認められませんし、乗務員だけが不利益を被る合理化提案には、上部団体も交え毅然とした態度で団体交渉に臨まなければなりません。