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自動車運転者の労働時間「改善基準」見直し ハイタク作業部会で議論始まる
2021/06/15

人間らしく働き暮らせる産業に


休息期間の延長・拘束時間の短縮求める労働側 難色示す使用者側

 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)見直しのための厚労省・労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会(専門委員会)は、分野別に検討をすすめるため、5月26日にハイヤー・タクシー作業部会の第1回会合をひらきました。自交総連本部の菊池書記長が傍聴しました。
 (自交総連本部『自交労働者情報』6月1日付)


 作業部会は、公益・労働者・使用者代表各2人の6人で構成され、部会長に両角(もろずみ)道代慶応大学院教授を選出しました。スケジュール案を示し、今年11月頃には改善基準告示見直し案をほぼ固め、来年2月には報告書を作成、専門委員会の確認を経て同年中に告示改正を公布する予定となっています。
 作業部会では、前回の専門委員会での意見を踏まえ、労使双方が意見を述べました。使用者側は、賃金が下がるとして、休息期間11時間、拘束時間の短縮に強く、難色を示しています。

ゆとりのある生活
休息11時間が必要

労働者側

 専門委員会で実施されたアンケートでも適切と思う日勤の拘束時間は13時間以下という人が90%以上を占めていることからも、休息期間は11時間が必要で、これは生活時間を確保するためにも必要だ。
 年間拘束時間は3300時間、1か月では275時間とすべき。これもアンケートの結果と一致している。

使用者側
 都市部では日勤で拘束13時間を守っている。休息期間が8時間未満になることはほとんどない。しかし、最大拘束時間に幅がないと給与が確保できない。歩合給で労働時間を短くして生産性を上げるのは並大抵でない。短くすれば2、3割が倒産しかねない。拘束時間内で目一杯やるということでなく、一定の枠があれば意欲のある人は稼げる。月288時間なら12時間拘束で24日乗務できる。それを3か月平均でみれば繁忙期にも対応できる。

労働者側
 使用者が拘束13時間を守っているというのなら休息期間11時間にできるはず。賃金を歩合給にしているのは使用者だ。過去の改善基準告示の改正の時には運賃改定をしてきた。タクシーの運賃は原価と適正利潤で決まるから、時短分は運賃改定も考えてもらいたい。

公共性のある職業
適正な労働時間に

使用者側

 タクシーは原価の3/4が人件費で急激な生産性向上は望めない。運賃改定は東京で20年もしていない。簡単でない。拘束時間は柔軟性のある決め方にしてほしい。10分オーバーでも取り締まられるときつい。1年を3分割して平均でみるとかにしてほしい。隔日勤務で拘束21時間を20時間にして試算すると、残業が減って月3万2000円、年32万円減収になる。
 休息期間11時間というのはどこから来ているのか。いま8時間が原則だが11時間を原則にすると、地方で車庫待ちとか、早番と遅番が変わる時とか、守れないところもある。3時間も延ばすのはちょっと認められないという話になる。

労働者側
 タクシー労働者は90年代から賃金は低く、一昨年でも月20万円台だ。公共性のある仕事として、適正な賃金と労働時間削減を主張している。
 車庫待ち等の特例は原則が決まってから議論したらいい。早番・遅番転換するときは間に公休が入るので問題はない。

長時間労働と低賃金
未来考え是正すべき

使用者側

 隔勤でいま20時間の休息期間で疲労回復しない人が24時間で回復するか。20時間で十分ではないか。隔日勤務でも、過労死が少なく、疲労がたまらないのは、休憩時間が自由にとれるからだ。いまの3時間を2時間にしたら休憩が自由にとれなくなるので反対。

労働者側
 隔勤の拘束時間が短いのは、それだけ過酷な勤務だからだ。タクシーの平均年齢が高くなっているのは労働時間の割に賃金が悪いからで、もっと魅力をつくらなければならない。若い人が入ってくるように労働時間も考えていかなければいけない。

使用者側
 我々も本当は労働時間は短い方がいいと思っている。短くしたいが給料が下がってしまう。運賃値上げは難しい。休息期間は現状を維持したい。

 傍聴を終えた菊池書記長は「労働側の主張は的を射て頷けるが、使用者側は労働時間を短くすると賃金が下がるの一点張りで無責任極まりない、もっと厳しく使用者側を追及する必要がある」とコメントを寄せています。