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2022年03月の記事
改善基準改正 乗務間インターバル 11時間確保で命守れ
2022/03/25
参議院国土交通委・武田良介議員(共産)が訴え
3月8日の参議院国土交通委員会で質問に立った武田良介参院議員(日本共産党)は、改善基準告示※の改正をめぐって議論が続いている休息期間(=乗務間インターバル)の問題について、「休息期間9時間で十分な睡眠がとれるのか」と追及。「運転者の健康、交通安全は休息期間9時間では守れない。11時間にすべきだ」と重ねてつよく求めました。
(自交総連本部『自交労働者情報』3月9日付)
※改善基準告示=厚生労働省告示「自動車運転者の労働時間等改善のための基準」
○武田良介参院議員
10月8日の専門委員会バス作業部会、ハイタク作業部会での(厚労省事務局の)提案は、現行は休息期間8時間のところ、バスについては「原則11時間としつつ、これによらない場合の上限時間、回数等について別途設ける」、タクシーについては「原則11時間、週3回まで9時間」としている。
この「原則11時間」という考え方は、昨年9月に改定された「脳・心臓疾患の労災認定基準」が根拠になっている。医学的根拠をもって提案されている。
ところが今年2月17日と21日に示された追加案の修正案では、「11時間以上の休息期間を与えるよう努めることとし、9時間を下回らない」となる。11時間は努めるだけ、9時間を下回らなければいいとなる。厚生労働省、9時間にはどういう根拠があるのか、医学的根拠はあるのか。
○小林高明厚生労働省大臣官房審議官
議論を円滑にすすめるため昨年10月に公・労・使の委員による議論をふまえて整理・作成した事務局案を議論のたたき台として提出した。
休息期間については、昨年改定された「脳・心臓疾患の労災認定基準」の考え方や、諸外国の動向等をふまえ、一定の例外を設けたうえで原則11時間とする案を当初示したところ、委員から様々な意見をいただいたところであり、11時間とするよう努め下限を9時間とする案を改めて提示した。
○武田議員 委員から様々な意見をいただいて9時間としたという。使用者の側からの意見だと思わざるを得ない。
資料をみてほしい。国土交通省が毎年とっている「運転者の健康状態に起因する事故報告件数の推移」と、改善基準告示の議論のために行われた「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査」から抜粋した1日の休息期間の調査だ。(二つの表を見てわかることは)現行の8時間をクリアできず違反になっているところが約1割ある、逆に言うと9割は改善基準告示を守っているけれども健康状態に起因する事故は起こっているということだ。
現行の改善基準告示を守っていても、運転者の命と健康を守って事故を減少させることはできないということではないか。
(中略)
○武田議員 現行の8時間では事故の件数がたくさんある。しっかりと労働者が休息できる時間を確保しなければいけない。当然のことだが、自動車運転者のみなさんの命、健康、利用者の安全が第一だと思うが、大臣の所見をうかがいたい。
○斉藤鉄夫国土交通大臣 バス・タクシー・トラック、自動車運転者の方の健康、命、これは運転者だけではなくその周囲の方々の命も含めて大事だと考えている。
○武田議員 国土交通省が2018年に、旅客自動車運送事業運輸規則等の一部改正を行なって、事業者が乗務員を乗務させてはならない理由として「睡眠不足」を追加した。国交省に訊くが、これを追加した理由はなにか。
○秡川(はらいかわ)直也国土交通省自動車局長
改正前の規則では、事業者が運転者を乗務させてはいけないシーンとしては「疾病、疲労、その他の理由により安全な運転をできないおそれがある」場合となっていて、「睡眠不足」は「その他の理由」のなかに含まれるということを通達で示していた。
その後、睡眠不足による運転の危険性を事業者・運転者に改めて認識してもらう、居眠り運転による事故防止の一助とする、という観点で、平成30年から省令に「睡眠不足」を明記している。
○武田議員 その前年、平成29年に、軽井沢スキーバス事故を受けたフォローアップ会議でも資料が示されて、アンケートで1日の睡眠時間が「5時間未満」と回答した運転者が25%いた。こういう事故を繰り返してはならないということから、これを明記したと理解している。そこで、「十分な睡眠」というのは、具体的にどういう睡眠だと国交省は考えているのか。
○秡川局長 「十分な睡眠」というのは人によって違うかもしれないが、運転者に対して行う一般的な指導・監督のマニュアルを国交省で平成24年に作っており、「睡眠不足」については平成30年から導入をしているが、その中で“6〜7時間の連続した睡眠”と考えている。
○武田議員 過労防止のために6〜7時間の連続した睡眠が必要だと国交省に示してもらった。大事なことだと思う。そこで改善基準の休息期間だが、最初は11時間という提案があったが9時間に後退している。
(中略)
9時間で“連続した睡眠6〜7時間”がとれるのか。出勤・退勤、食事や家事の時間も考えると、休息期間8時間や9時間で、国交省も言っている十分な睡眠がとることができるのか。
○斉藤国交大臣 改善基準告示において休息期間が定められているが、その中で睡眠時間をどれくらいとるかどうかについては定められていない。
運転者が休息期間内で十分な睡眠をとるためには、まずは事業者が運転者に対して十分な休息期間を与えることが重要であり、そのうえで個人によって休息期間の過ごし方が異なるので、運転者がきちんと睡眠をとるよう、休息期間の過ごし方についても事業者が適切に指導を行うことが必要と思う。(後略)
○武田議員 “まずは事業者が”と言うが、答弁にあったように、原則11時間が各委員から様々な意見があって9時間になっている。“事業者が”ということでいいのか。改善基準告示には睡眠時間については書いていないが、国交省のマニュアルにはある。だったら、「健康、命が大事」「周りの方の安全も大事」というなら、それに合わせた休息期間が必要になると思う。
厚労省が2014年に出した「健康づくりのための睡眠指針2014 睡眠12箇条」のなかにも、〈睡眠時間が6時間未満の者では7時間の者と比べて居眠り運転の頻度が高い〉とか、〈交通事故を起こした運転者で夜間睡眠が6時間未満の場合に追突事故や自損事故の頻度が高い〉といった研究結果が示されている。
こういう研究も踏まえて国交省のマニュアルもつくられているのだから、6〜7時間の睡眠時間(の必要性)を認識するならば、休息期間は9時間ではなくて11時間が必要だということを、大臣の立場で明確に言っていただくことが必要ではないか。
○斉藤国交大臣
(中略)
運転者の睡眠不足や過労運転による交通事故の防止は重要な課題であると認識しており、改善基準告示において、労使間の合意の上で、運転者が十分な睡眠を確保する観点からも効果的かつ実効性のある基準に見直されることが重要であると考えている。
国土交通省としては、引き続き厚生労働省の専門委員会にオブザーバーとして参加し、適切な改善基準の見直しが行われるよう厚生労働省に協力するとともに、運送事業者への指導を通じ運転者の健康と輸送の安全を確保していく。
○武田議員 睡眠をとらなければ事故につながるということを国交省もマニュアルで示し、厚労省も医学的根拠を持って言っているわけだから、労使の間でというだけでなくて、これだけ必要だということを行政がはっきり言うことが必要だ。(後略。質問・答弁の一部省略・意訳=編集部)
改善基準告示改正 バス乗務間インターバル論議
2022/03/08
「雇用共同アクション」の宣伝行動(2月17日、東京都内で=自交本部提供)
命預かる運転者の休息期間
9時間では睡眠確保できぬ
改善基準告示の改正について議論する労働政策審議会・専門委員会の第5回バス作業部会が2月17日、東京都内でリモート方式で開かれました。会場前では「雇用共同アクション」が宣伝を行い、会議は自交総連本部・菊池書記長が傍聴しました。
(自交総連本部『自交労働者情報』2月18日付)
焦点の休息期間(現行8時間以上)について、厚労省事務局は「継続11時間以上の休息期間を与えるよう努めることとし、継続9時間を下回らないものとする」という修正案を提示し、使用者側は了解、労働者側も修正案の「努めること」という部分には何ら反論せず、11時間は努力規定でよしとする態度でした。公益委員が「“努めることとする”というのは実際は9時間で運用されることになる」と異論を出し、案の確定には至りませんでした。結論は次回(3月16日)に持ち越しとなりました。
労働者委員の発言は、交通労連、私鉄総連の代表二人とも、「休息期間11時間が大切」と言いながら、肝心の11時間が「努めること」という努力規定にされてしまっている点については、まったく触れていません。この案で決まってしまえば、公益委員が指摘したように“努力したができませんでした”でよいことになり、実際の規制は9時間ということになります。
公益委員が、「安全を守るという認識に立てば11時間が必要」と言っているのに、労働者側が努力規定でよしとしてしまったのでは、労働者を代表して審議会に出ているという責任を果たしていないと言わざるを得ません。次回作業部会では、姿勢を改めて明確な主張をすべきです。
21日には第5回ハイヤー・タクシー作業部会が開かれ、厚労省事務局はバスと同様の修正案を提示しています(=詳細は次号)。
世論喚起が重要
当日は会場前で「雇用共同アクション」と共同で宣伝行動を行いました。
インターネット署名(第2弾)も1万5000人以上の署名が数多くのコメントとともに集まり、2月8日に審議会の全18人の委員全員に郵送で提出して、休息期間11時間とするよう申し入れをしています。
東京新聞が2月16日、17日と連続して朝刊1面でこの問題を取り上げ、過労死が多い業界に休息期間11時間は必要との識者の声も紹介しています。
世論は盛り上がりつつあります。最終決定はまだ先であり、最後まで11時間を求めて世論を高めていくことが必要です。
第5回バス作業部会
主な意見
(1日の拘束時間、休息期間について)
○使用者委員(※1)
ILO条約でも最低は8時間となっているところを9時間にするのは前進だ。過労防止の点から行われることを厚労省も周知してほしい。
○労働者委員(※2)
休息期間は原則11時間というのが大切だ。アンケートでも11時間必要という回答が多かった。拘束時間14時間超えを2日以上連続しないという規定がなくなったのは後退している。本文に回数を書くべきだ。休息期間は原則11時間、やむを得ない場合9時間とした方がいい。
○労働者委員(※3)
継続11時間というのを原則11時間という表記にしてほしい。
○使用者委員(※1)
原則というのは問題。一般の労働者には休息期間が定められていない中で、自動車運転者だけ適用されるのに、原則というのは踏み込みすぎだ。
○労働者委員(※3)
原則と入れても、実際多くのところで11時間は守っているのだからいいのではないか。
○使用者委員(※1)
原則という言葉をなぜ入れないといけないのか。
○労働者委員(※2)
拘束14時間超えの回数は、連続性を考慮すべきだ。休息期間は11時間、それによらない場合は9時間とするということで、労働側も譲歩したが、11時間というのは疲労回復のために必要ということは使用者も考えてほしい。
○公益委員(※4)
自動車運転者は命を預かる人、安全を守るという認識に立てば、継続11時間――もうひとつ10時間という考え方もあるかもしれないが、11時間は必要だ。「努めることとする」というのは“努力したけどできなかった”ということでもよいということになり、実際は9時間で運用されることになると思う。11時間未満では6時間を切る睡眠になってしまうので、国民の安全を守るとの考えからは、11時間というのは意義のある数字と考えている。
○使用者委員(※1)
9時間になった時は、後でどこかで11時間にならなければならない。永遠に9時間ということにはならない。
※1 齋藤隆氏(京成バス株式会社代表取締役社長)
※2 池之谷潤氏(日本私鉄労働組合総連合会中央副執行委員長)
※3 鎌田佳伸氏(全国交通運輸労働組合総連合軌道・バス部会事務局長)
※4 小田切優子氏(東京医科大学公衆衛生学分野講師)