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2021年11月の記事

「自動車運転者の労働時間」改善基準告示見直し
2021/11/15

過労・睡眠不足放置は許されぬ
安心安全、労働者の健康最優先


 労政審労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会の第6回会議が10月29日に開かれました。この間、バス、ハイヤー・タクシー、トラックの3作業部会に分かれて審議してきた委員が全員参加して、各作業部会の検討状況の報告に基づき意見が出されました。(自交本部『自交労働者情報』11月4日付)

 専門委員会では、事務局(厚労省)が、バス、タクシーで提案した「見直しの方向性」を説明し、意見が交わされました。トラックは、アンケートを取り直している関係で審議が遅れて、まだ改正案は出されていません。今回の休息期間(勤務間インターバル)11時間についての議論は次のとおりです。

バス使用者側
休息期間11時間に反発
「夜間の減便避けられない」


○バス使用者側 休息期間11Hは受け入れ難しい。朝5時に出る人は前日18時に退勤していないといけないので、夕方から夜間の減便は避けられず、社会的影響が大きい。運転者をもっと採用すればいいかというと、コロナで影響を受け赤字になり、採用もできない。欠勤者を埋める勤務変更も難しくなり、運行管理者の過労をまねく。日本ではインターバル規制はまだ一般化されていない。
○タク使用者側 実態は休息期間8H未満というのはほとんどない。過労死労災もタクシーは少ない。タクシーはEUや海外でも休息期間の規制はなく、ILO条約は10Hだ。労災認定基準検討会の審議から11Hということが入ってきたのを否定する気はないが、例外的に超える場合もあるということを理解してほしい。
 働き方に柔軟性をもたせるため、11Hでなく8Hを基本に考えてほしい。
○バス労働者側 11Hは評価する。産業に魅力がないから労働者が入ってこない。若い人が入ってくるためにも長時間労働を是正しないといけない。
 現行の8Hというのは絶対見直すべきだ。赤字だから短くできないというのを認めると、赤字企業は長時間労働してもいいのかということになってしまう。
○タク労働者側 実態はほとんど13H拘束が守られているので、休息期間を11Hにしても問題はない。例外規定が週3回もあるというのは議論しないといけない。
○トラ労働者側 労災発生を防ぐためにも休息期間は長くするべきで、11Hは適切。
○トラ使用者側 トラックでは、無理な要求をする荷主の規制ができないと、結果的に経営者が違反で捕まってしまう。商習慣を我々の力で変えるのは難しい。労働時間規制を厳しくするなら、厚労省から荷主に言ってもらわないといけない。
○公益委員 荷主勧告制度の強化が必要と思う。労働時間規制の底が抜けてしまうのは避けないといけない。商慣行の見直しは努力したい。
○公益委員 議論のなかで、例外の規定は気をつけて議論しないといけない。休息期間を例外でどこまで縮めていいのか、何回ならいいのか、何日連続していいのか、連続はだめなのかなどを議論する必要がある。

労働時間短縮に
背を向けることは許されない


【解説】
 改善基準告示改正は年度末までに結論を出す予定ですが、現時点では、事務局が提案した休息期間11時間という点が最大の焦点になっています。
 休息期間の現行8時間から11時間への延長は、労働者の健康を維持し、自動車の安全を守るために最低限必要な規制です。8時間では、通勤2時間、食事等生活時間2時間を引いたら4時間しか残らず、睡眠不足となるのは自明のことです。ようやくそれを11時間にする可能性が出てきたのに、それをつぶすことは許されません。
 バス使用者側は、「運行ダイヤが組めなくなる」「減便せざるを得ず、社会的影響が大きい」と主張していますが、これは現に休息期間8時間の運転者を前提に運行ダイヤが組まれているということで危険です。前日の午後9時まで乗務した人が翌朝5時から乗務しているのが実態というのなら、睡眠不十分で運転しているのは明らかです。この実態をそのまま認めろというのは、健康無視であり、路線バスの事故が多発していることからも、利用者の理解を得られるものではありません。
 タクシー使用者側は、実態としては休息期間11時間が守られていると言いながら、タクシーの過労死労災は少ないとか、EUではタクシーの規制はないなどと主張しています。タクシーの過労死はトラックよりは少ないですが、一般労働者と比べれば多く、今年に入ってからも、運転者が意識を失い暴走する死亡事故が相次いでおり、十分に安全だなどとは言えません。EUの休息期間規制がタクシーに適用されないのは、当地ではタクシーは個人タクシーで法人タクシーがないからです。実態が11時間を達成しているのなら、11時間の規制にしても問題はないはずです。

わがまま許さない

 バス・タクシーとも使用者側は、経営が苦しい、運転者不足で採用も増やせないと主張しますが、「運転者不足」を解消するためにも、労働時間を短縮して賃金を増やし、魅力のある産業にすることが必要で、異常な長時間労働を続けたままでは人は集まりません。
 トラックの荷主や観光バスの旅行会社のような優越的地位から無理な運行を押し付ける事業者は規制し、運賃改定や国からの補助金など経営への支援は当然要求しつつ、経営が苦しいから労働時間短縮はできないという使用者の「わがまま」は、世論に訴え、社会的に包囲して許さないことが必要です。

「自動車運転者の労働時間」改善基準告示見直し
2021/11/05

「自動車運転者の労働時間」改善基準告示見直し

休息期間「原則11時間」の攻防


過労死基準検討会報告を考慮、使用者側は難色

 厚生労働省の労働政策審議会で、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)の見直しについて議論する作業部会の第3回会合が開催され、自交総連本部の菊池書記長が傍聴しました。(自交本部『自交労働者情報』10月12日付)


 10月8日午前に「バス作業部会」が、午後に「ハイヤー・タクシー作業部会」が開かれ、両部会とも事務局(厚労省)が「見直しの方向性」(たたき台)を提案しました。
 事務局は、休息期間(=勤務と次の勤務の間、睡眠時間を含む労働者の生活時間)について、バス、タクシーとも「原則11時間」(現行は8時間)とし、その根拠として過労死基準の検討会報告などを提示。睡眠時間の確保が必要だとしました。
 「休息期間11時間」は自交総連が重点要求として、審議でも労働側がつよく求めていたもので、この点は大きな前進といえます。経営者側は難色を示しました。
 休息期間以外は、ほぼ現行と同じ基準が示され、あまり時間短縮になっていません。タクシーでは、日勤の1か月の拘束時間を299から288時間に短縮、車庫待ち特例の延長時間を縮めたほかは、ほぼ現行と同じです。バスでは、拘束時間に「年3300時間を超えない範囲で」という規定を入れたうえで、ほぼ現行と同じです。この点では、かなり不十分といえます。
 事務局から提示された各項目の「見直しの方向性」は、この日の論議では結論を出さず、年度末のとりまとめに向け労使双方から意見を出しあうこととされました。