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2019年11月の記事

自交総連本部 第42回定期大会 大阪地連からの発言
2019/11/05

規制緩和で事故頻発 バスの安心安全守れ



 貸切バスの規制緩和前からの経過と現状を述べ、討論に参加します。
 私は35年前にバス業界に入ったのですが、その翌年の1985年1月、長野県犀川のダム湖にスキーバスが転落し25人が死亡する重大事故が発生しました。11日間連続勤務による過労運転が原因とされています。
 バス会社はこの事故を契機に運転者(組合)と協議し過労運転防止の措置としてワンマンでの1日の最高走行距離や連続勤務日数などを自主的に協定化していきました。ちなみに私が勤務していた会社ではワンマン1日350`、夜行は完全ツーマン運行で、夜行スキーバスの新人は必ずベテランとペアを組みました。
 当時バス運転者の採用条件は大型運転経験3年以上が一般的で、担当車も一定の運転技量を習得してからでしか与えられませんでした。私は大型経験が少なかったために担当車を任されるまでに2年9か月かかりました。このように観光バス運転者は高度な技量が必要とされていました。
 2000年の規制緩和で、家族経営の零細事業者や、それまで違法営業していた白バス事業者が安全を度外視した違法な安い運賃で参入した結果、重大事故が頻発しました。07年2月の「あずみ野観光バス」事故、12年4月の関越道高速ツアーバス事故、14年3月の北陸道小矢部川SA事故、16年1月の軽井沢スキーツアーバス事故、この4件すべてが夜行運行、そして北陸道事故を除く3件は、大型車経験の浅い運転者がハンドルを握っていました。規制緩和前ではありえないことです。

形骸化する公示運賃
 犀川事故を契機に当時の労働省(厚生労働省)は1989年に「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準)を告示しました。「改善」といいながらその内容は「過労死認定基準」を超える時間外労働にお墨付きを与えるものでした。国が容認したことで規制上限まで働きハンドルを握ったまま命を落とす運転者が続出しました。
 国土交通省に届けられた、一般道の路線バスなどを含むバス運転者の健康に起因する運行不能は、2015年から17年の3年間に451件、そのうち119件が脳・心臓の重大疾患による意識喪失です。この数字は届けられたものだけですから氷山の一角でしかありません。私たちは厚労省に対し、「改善基準」を実効性のある内容に改定し、法制化で罰則を設けるよう今後も強く求めていかなければなりません。
 国交省は2014年7月、重大事故を受け安全を担保する適正運賃料金が必要として公示運賃の改定を行いましたが、実際には手数料名目で48%を旅行業者にキックバックしている事例もあり、新「公示運賃」は形骸化しています。インバウンドは増えましたが国内の団体旅行客は減少し「嫌韓」のあおりで、韓国からの旅行者も激減しバスが余っている状態ですから、料金の半分近くをキックバックしてでも仕事を受けているのがバスの実態です。

都市型ハイヤーの問題
 最近、都市型ハイヤーの運転者から労働相談がありました。都市型ハイヤーとは、都市部のインバウンド特需に対応するため2014年の国交省告示で設けられた新しい区分で、その運行実態は、乗車定員以外は観光バスと類似し、異なる点は営業区域です。
 バスの営業区域は都道府県が基準ですが、都市型ハイヤーはタクシーと同じく交通圏です。大阪市域の車は発着のいずれかが大阪市域でなくてはなりません。
 ところが都市型ハイヤーには運行記録計(GPS連動デジタルタコグラフ)が装備されていないので、発着地、運行経路をごまかすことが可能です。運賃についてもバスと同じく、紹介料の名目で旅行業者へのキックバックが可能です。契約や決済が中国本土で行われることが多く実態把握が困難であることなど、都市型ハイヤーには問題が山積しています。
 運行記録計の装着を義務づけるよう行政に求めていくなど、運動の強化が必要です。