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2016年02月の記事

大阪地連第73回中央委員会〈発言録〉 人柱行政許さない 入口規制強化せよ
2016/02/26

中央交通労組 服部一弘氏

 2000年にバス事業の規制緩和が行われ、バス事業への参入がそれまでの免許制から許可制になった結果、事業者数が急増し競争が激化。生き残りをかけたダンピング競争が繰り広げられた上に、足もとを見た旅行業者からの低運賃強要もあり、バス事業者はコストダウンを図るため人件費や整備費用を抑制。運転者は長時間・過重労働を強いられるようになりました。その結果として2007年の「あずみ野観光」事故、12年の関越道事故、14年の東名阪事故など居眠り運転による重大事故を招きました。
 国土交通省は関越道事故をふまえ規制強化の一環として1日にワンマン運行できる距離を日中は500キロ、夜間は400キロまでとしましたが、回送距離は含まれていません。
 規制緩和後に参入してきた零細事業者は経験未熟な運転者を低賃金で雇い入れ、乗務させています。1月15日に軽井沢で発生したスキーツアーバス事故の運転者も大型バスの経験が不足していたとのことです。
 国交省はいったい、犠牲者を何人出せば規制強化に動くのでしょうか。バスに限らず国は事故が起きてから対策に重い腰を上げますが、“人を人とも思わない行政”と言わざるを得ません。
 国交省は規制緩和を終わらせ、入口規制を強化すべきです。そして「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」を実効性ある内容に改正し、法制化で罰則を盛り込むよう厚生労働省に求めます。全国バス部会のなかまと共に対行政交渉に取り組んでいきます。

オピニオン OBの視点−軽井沢スキーバス重大事故
2016/02/16

「トカゲの尻尾切り」で済ますな


元・大阪地連バス部会事務局長 尾崎博明

 長野県軽井沢市で起きたスキーバス事故(死者15人重軽傷者27人)から一週間あまり。関係当局の懸命な捜査と報道のなかで、事業者の法令違反やずさんな管理、事故原因や背景が明らかになってきています。スキーバスと言えば貸切バスが「犀川ダム」に転落して25人(運転者2人を含む)が犠牲になった大事故を思い起こします。あれから31年、教訓はまったく生かされていません。
 大寒を迎えた列島は、寒波の襲来とともにバス事故が相次ぎ業界的にダメージが拡がっています。運転者の高齢化とともに、健康に起因する事故が増え、今回もそうした原因が指摘され、原因の徹底究明が求められています。世論とメデイアの突き上げをうけ、行政も腰を上げて対策を強めていますが、一過性のものとして終わらせないこととともに、事故の背景と後ろにある真の原因をつきとめ、改善をめざすことが何にも増して重要です。今回の重大事故で、安全確保への問題点は何か、大きな課題は何か探ってみました。
 ◆事故の概要 事故現場の2km手前(峠の頂上付近)に設置されたカメラの解析では、転落現場250m手前までの平均速度は70km程度。250m手前に設置されたカメラによると、現場手前100メートルのところまで蛇行している状況がみえます。そして左側にタイヤのスリップ痕を残して左ガードレールに接触し、道路中央部に向きを変え、今度は右に傾いて右にスリップ痕を残してセンターラインを越えて転落。これまでの調査で事故直前の速度は80km。ブレーキ関係に異常のないことが明らかになっており、ギアがニュートラルであったことなどから、「運転手に起因」との指摘もされています。
 ◆報道の問題 メディアは乗務員の健康や、運行面でのずさんな管理や違法な下限割れ運賃など、安全を支える部分での違反を厳しく指摘しています。反面、関越道での事故のあと、一日の走行距離の上限は「670キロから夜間は原則400キロ。昼間は500キロに規制」された、と報道しています。あずみ野観光バスの事故後、国交省は、当時のバス業界の平均的運行距離(総務省アンケート調査=580km)を無視した大幅な距離延長の指針(670km)を発表。夜間の一人運行を公認しました。さきの夜間原則400kmは、それとの比較であり、行政による距離延長を前提としたものです。行政の不当な距離延長に対する視点がありません。
 ◆国交省・厚労省の動き 交替運転者について。今回の事故車の運行予定は現地で仮眠、同日折り返すというハードな業務での二人運行でしたが、いずれにしても「深夜のワンマン運行」を認めた行政側としては、大きな救いとなりました。深夜長距離の一人運行についての批判や、「是非」が問われないからです。
 事故を受けて国交省は、バス会社「イーエスピー」に特別監査を実施。監査強化・処分の厳格化を決め、事故対策委員会を設置しました。現在の監査要員不足などの問題については、民間委託などの話が出ていますが、安全確保にむけた実効ある入口規制への改革こそが急がれています。
 また、厚生労働省も労働基準法違反で臨検監督を始めました。運輸労働者は過労死率の高いことで知られています。改善基準では過労死基準を超える労働時間を認めており、こうした矛盾の改善と法制化にむけた取り組みが緊急な課題です。
 原因解明が進む中で、安全確保と働く労働者の条件改善にむけた多くの問題点が浮かび上がり、厳しい指摘もされています。常態化している業界的な法令違反と「監査」の人員不足問題。運転手の高齢化の進行や車両の老朽化。最賃なみの非正規運転者の賃金と長時間労働。それを可能にする過労死基準を超える「告示」の存在。公示運賃をつぶすブローカーと運賃ダンピングで応える小規模業者など、バス労働者をとりまく問題・改善点は多岐にわたっています。
 「トカゲの尻尾切り」で済ましてはなりません。