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2017年10月の記事

本部第40回定期大会・大阪からの発言(抜粋)
2017/10/25

重大事故は軽井沢を最後に

改善基準告示改正を
個人請負波及に危惧


大阪地連バス部会・山本雅広事務局長
(大阪地連常任執行委員・大阪はとバス労組委員長)

旅行業者対策強化せよ


 15人もの命が奪われた軽井沢スキーバス事故をうけて対策が講じられてきましたが、事故の背景にある規制緩和による過当競争、旅行業者の安値強要などにメスを入れなければ実効ある対策は作れません。
 旅行会社がバス会社に手数料バックを強要している問題では、運送取引書には下限運賃を上回る額を記載して実際の取引額との差を手数料とするやり方が大半で、ひどい場合で50%を超えるものもありました。手数料の通報については第三者委員会がありますが、窓口を旅行業協会が担っているため、バス会社からは力関係もありなかなか通報しづらくなっています。
 総務省は今年7月、「貸切バスの安全確保対策に関する行政評価・監視」に基づく「勧告」を国土交通省に出しました。今回は、運賃下限割れ、「運転者の労働時間の改善のための基準(改善基準告示)」超過、安全投資に支障をきたす過大な手数料、ブローカーの登録制度などを重点的に勧告が出されました。バス部会は国交省に、この勧告に従って改善するよう交渉で求めていきます。

経験不足が事故要因に

 最近の重大事故の要因には運転者の経験不足もあると思います。大型バスの経験がほとんどない運転者がバス会社に採用されてすぐ運転するケースが見受けられます。経験がものをいう世界なので、ブレーキのかけ方が未熟であったり、高速道でのトラブル発生時に後方への安全措置が不十分で追突されるケースが多く見られます。乗客の避難誘導のタイミングも難しく、ワンマン運行であればなおさらです。発煙筒は通常の備え付けは2本ですが、私は6本積み、三角板は運転席の足元に置いています。
 一昨年、中央交通のバスが東名高速の路肩で故障停車中に、不幸にも居眠りのトラックに追突されてバス運転者2人が亡くなりました。この事故以降、会社は仕事の受注が減り、身売りすることになりました。ひとつの事故で受ける影響は計り知れないものです。
 行政は依然として改善基準告示の改正には手をつけず、安倍政権の「働き方改革実行計画」も長時間労働を容認するものとなっています。バス部会は実効ある労働時間短縮実現をめざして、規制緩和の根本的な見直し、改善基準告示・交替運転者配置基準の改正を求めていきます。

「貨客混載」真の狙いは

 報道によると、国交省はバス業界の人手不足解消策として、閑散期の観光地の運転者を、同時期に繁忙期を迎える別の観光地で雇用するためのマッチング制度を検討しているといいます。将来、バス運転者が労働者ではなく個人請負として扱われる、その先駆けになるのではないかと危惧しています。団結の分断や労働条件の低下にもつながる重大な問題だと思います。
 国交省は、過疎地で貸切バスやタクシーが貨物も運び、トラックが旅客運送もできるようにする「貨客混載」を推進していますが、旅客と貨物の垣根をなくす規制緩和が無限に拡大し、交通運輸労働者の個人請負化につながる恐れがあります。またウーバー・イーツなどの配送シェアと一体になったライドシェア導入に利用される懸念もあります。