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2014年09月の記事

オピニオン OBの視点−過酷な労働実態広く伝えよう
2014/09/26

過酷な労働実態広く伝えよう


元・大阪地連バス部会事務局長 尾崎博明

 新しい「交替運転者の配置基準」(一日における最高乗務距離の上限規制)が実施されて1年あまり…。私たちはこの間、新しい基準は〈走行距離の延長と夜間運行のワンマン化〉であり、危険運行の拡大にほかならない─との指摘をしてきました。幸い大きな事故もなく1年が過ぎホッとします。
 しかし、大事故がないのはこの間、夜間長距離でのワンマン運行を実施しているバス会社がまだ1社もないからです。走行距離延長やコスト削減策は、業界あげての要望のはずでした。しかし、行政による“夜行ワンマンOK”のお墨付きが活用されなかったのは、“「配置基準」は慣行や実態を無視した大きなリスクだ”とバス事業者が認識していることの表れです。
 さて、いま「配置基準」が実施され、それが活用されていないという業界のなかで、国土交通省は「配置基準」について、ホームページ(HP)で次のように宣伝しています。
 「利用者の皆さまへ」と題して「より安全・安心なバスを利用頂くため、新たな安全対策を実施しています!」とし、要約すると(1)長距離運行時は交替運転者を配置、(2)高速乗合バスは安全なバス停を設置、(3)事業者がルールを守っているか点検を実施、(4)乗合バス事業者が安全・利用者保護の責任を一元的に担う、(5)過労防止のためワンマン運行の上限を策定。夜間は〈距離=原則実車400キロ、運転時間=原則9時間、連続乗務=4夜まで〉。昼間は〈距離=原則実車500キロ、運転時間=原則9時間まで〉。(6)バス事業者に安全を最優先する企業風土・管理体制を構築させた。(7)悪質事業者に対して監査を集中的に実施、処分を厳格化─などと書かれています。
 HPでは“走行距離も短縮されて安全”との印象を受けますが、比較の土台となっている「670キロ」(指針)は、「あずみ野観光バス」事故当時の平均距離を国交省が大きく引き延ばした点や、夜行ワンマンが業界的なタブーとされてきた点、空車・回送距離を入れると無制限に近いことなど抜け落ちています。
 国交省は、安全確保にむけて細かい規制を行なってはいますが、重要なポイントが何か、という視点が抜けているといわざるを得ません。それは〈妥当な走行距離規制=長時間労働の規制〉と〈夜間ツーマン運行=危険時の交替〉です。
 もうひとつの問題は、こうした国交省のHPについて利用者はどう見ているかという点です。閲覧した乗客・利用者が、“行政が安全確保に最大限の努力をしているから大丈夫”との印象をもち、それが世論化してしまうと、安全にとって大きなマイナスとなります。
 こうしたなかで、いま取組むべき重要なたたかいは、事故の教訓を活かす「安全対策・基準」が、逆に大きく後退していることを明らかにすることです。そして、長距離バスの運行は“つねに時間やコースに縛られ、いつ来るかわからない睡魔とのたたかい”であり、“一人運行に備えて寝だめ・食いだめができない”などの過酷な労働実態を伝えていくことも重要だと思います。
 スキーシーズンが近づいてきました。リスクを抱えたままの「配置基準」は、「新高速乗合バス」では導入されていません。一番の心配はスキーバスのワンマン運行です。安全・安心なバス輸送という業界的な課題を実現するには、幅広い仲間との共闘が必要です。これからも闘いの先頭に立っての頑張りに期待しています。