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2021年04月の記事
軽井沢スキーバス事故からもう5年 業界の現状は?
2021/04/15
コロナで潜む悪貨の存在
4月6日に開かれた参議院・国土交通委員会で質疑に立った日本共産党・武田良介議員は、15人もの死者を出した軽井沢スキーバス事故(2016年1月15日)以降の再発防止策、貸切バスの安心・安全確保について、悪質事業者の排除を徹底するよう訴えました。
取り組み強調する国交省
武田氏 コロナ後の懸念指摘
武田議員「今年は軽井沢スキーバス事故から5年目を迎えた節目の年。死者15人、重傷者26人という大変悲惨な事故だった。改めて亡くなられた方々に哀悼の意を表するとともに、ご遺族の皆さんに心からお見舞いを申し上げたい」
「私は先日、ご遺族の皆さんでつくられている『1・15サクラソウの会』の田原義則さん(同会代表)からお話をうかがった。田原さんは『“もう5年”という思いもあるにはあるが、“5年は長いな”という思いもある』『まだESP(事故を起こしたバス会社)の社長と運行管理者の刑事責任がはっきりしていない。再発防止対策もまだ途上ではないか』と話されていた」
「今日は軽井沢事故を二度と繰り返さない、再発防止を徹底するという決意を共有したい。今後の安全確保をどうしていくのか大臣の所見をうかがいたい」
赤羽一嘉国交大臣「この間の貸切バスについては道路運送法および関連省令を改正した。事業許可における5年ごとの更新制を新設、不良事業者をそこで退出させるということで、(事業者数が)平成27年度は4508者あったがこの4年間で500者が業界から排除された」
「適正期間を新設して全ての貸切バス事業者に原則年1回の巡回指導も実施している。営業所ごとの運行管理者の必要選任数を引き上げるなどの取り組みを行ってきた」
「発注元である旅行業者に対しては旅行サービス手配業者・ランドオペレーターの登録制度の創設、また旅行業者が作成する募集広告への、運行する貸切バス事業者の記載を義務づける取り組みも行ってきた」
「こうした施策の結果、この事故以降、貸切バスの乗客の死亡事故は現時点で発生していない。乗客以外を含めた死傷者数も減少している。ただ、コロナ禍の影響で貸切バス事業者は大変な状況になっているので、安全が軽んじられることのないようにしっかり安全対策を推進しながら貸切バスの安心安全確保に万全を期していきたい」
武田議員「私が大変重要だと考えているのは、法令違反を犯すような悪質事業者を市場に参入させないこと。軽井沢事故以降も処分件数、処分率は減っていない。許可取り消し、事業停止という重い処分を受ける事業者も依然としてある。これらの事業者の中には、許可更新制が導入された2017年度以降に参入している事業者もある。更新制を導入したのは一歩前進だが悪質事業者を完全に排除できていない」
国交省自動車局・秡川(はらいかわ)直也局長「軽井沢事故以降、貸切バスの新規参入にあたって許可基準の厳格化を行っている。それにあわせて新規許可事業者に対しては早く監査に入る、その監査の結果30日以内に、監査での指摘事項を確認する“呼び出し”をやっている。それで未達成の場合には事業停止とか事業取り消しという対応を行っている。監査は悪質事業者に集中して入るということにしている。監査で1回処分を受けるとそれが累積の点数になる。早く悪質事業者を市場から排除しようという制度になっている」
武田議員「すべて排除しきれていないのではないか、まだ悪質事業者の群がある」
秡川局長「(制度が)新しくなっても悪い事業者がいるのは事実なので、事前の取り締り、事後の監査等々でしっかり把握して排除していきたい」
武田議員「貸切バス事業者の運賃下限割れについてもうかがいたい。これは当然の話だが、運賃下限割れということになれば労働者の賃金とか、安全投資に必要な資金を確保する上で支障が出てしまうということで、軽井沢事故がひとつのきっかけで改めてこれを注目しなければならない。2017年以降、下限割れ運賃で貸切バスを運行していた事業者の数、それから2015年以降になるが運賃の届出違反を確認された営業所の数はいくつあるか」
秡川局長「アンケート調査によるサンプル的な数字だが、下限割れ運賃の事業者は平成29年度は81、30年度は109、令和元年度は0。監査の際に運賃の届出違反が確認された営業所は平成27年度は14、28年度は81、29年度は77、30年度は107、令和元年度は107営業所となっている」
武田議員「下限割れも“まだある”というのが現状。このアンケートは抽出でやっているので実態を反映しているのか疑問符がつくとのことだが、それでもこれだけの数字が出ているということはよく見なければいけない」
「いまコロナのもとで、バス事業者が大変な経営的困難にある。コロナが明けて営業を再開するとなったときに、経営が苦しくて安全がないがしろにされる、そういう状況で再び営業を開始するということはないだろうか」
「バスドライバーに話を聞くと、すでに1年間運転していない、しばらく運転していなくていざ運転するといった時に技量がどれだけ落ちているか、非常に心配だと仰っていた。軽井沢事故の教訓は、ひとつはドライバーの技量という問題があったと思うし、安全を軽視する経営がなされてきたことがこれまでの調査でも明らかになってきた。コロナを受けてこの後どうしていくのかというのは非常に重大な課題だ。この点で国交省の考えを聞きたい」
秡川局長「事業者のほうは監査、巡回指導でしっかり見ていきたい。運転者の技量の問題は、再開するにあたって同じ会社の路線バスに乗務させるとか、復帰前にベテラン運転者が添乗して指導を行っている事業者もいて、こうした事例を、今後お客さんが増える時期が到来する前にヨコ展開するとか、安全対策に関する講習会を私どもで開くということで、ドライバーの技量をしっかり維持していきたい」
武田議員「(前出の)田原さんが仰っていたのは再発防止、二度と繰り返さない、ということ。コロナのもとでその後どうするのか、技量の話もあったし、経営も大変だということから、潜っていたというか、見えない所にいた事業者が出てきてそういう運営をしないかどうか、このことはしっかり見ていただきたい」