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2013年05月の記事

業界の利益擁護、安全に背むけた運輸行政
2013/05/27

業界の利益擁護、安全に背むけた運輸行政


 あずみ野観光バス事故から6年、関越道事故からちょうど1年になりました。
 この間、国交省はバスの輸送の安全確保にむけて「バスのあり方検討会」や「過労防止のための検討会」などを設置、検討を続けてきました。今回、示された「貸切バス」と「高速乗合バス」に対する「交替運転手の配置基準」(案)は、その総仕上げとも言うべき、安全にとって最も重要な部分です。
 大阪地連バス部会では、乗客の安全確保とそれを担保する「最低限の労働条件」(500キロ規制、夜行ツーマンの法制化)を求めて、たたかいが進められてきました。今回出された「乗務距離の上限」は、6年前の「あずみ野観光バス」事故当時の、業界の平均的距離を大きく引き延ばしたものとなっており、明らかな安全の後退。その上、「夜間のワンマン運行」を公然と認めるものとなっており、危険運行を広げる法改悪そのものとなっています。

実質無制限のワンマン規制

 改定案の「交替運転者の配置基準」は、6年前の業界では1日600キロを超える労使の協定や慣習はほとんど例がない状態で、1日500キロは長い水準として見られていました。「総務省」もこの点を指摘して「国交省」に「見直し」の勧告をしていましたが、無視された形となっています。
 貸切の昼間運行については、原則実車・500キロ。運行途中に1時間(分割も可)以上の休憩をとれば600キロ。回送距離は別ですから実質無制限といえるものです。
 また、生体のリズムに反する夜間運行は睡魔とのたたかいもあり、危険と疲労を高めるものです。この点をふまえ運輸規則21条第6項では、「疲労等で安全な運転を継続することが出来ない恐れがある時は交替運転者を配置するように」と規定しています。しかし、改定案では夜間も2つの条件を満たせば実車・500キロプラス回送距離で、実質無制限の状態です。距離を大幅に延長した上、深夜のワンマン運行を公然と認めることは、バスの安全運行にとって大きなマイナスとなることを指摘しておきたい。
 また、走行距離の延長(実車・原則400キロまた500キロからの100キロ延長)にあたって、いくつもの条件をつけています。が、これらの条件は夜間運行には当然の措置で、「距離延長と夜行ワンマン化への改悪」に替わるものではありません。むしろ距離延長と労働過重への批判をかわすための姑息なやりかたと言われても仕方のないものです。

事故を契機に規制緩和

 今回の運輸規則改定(案)は、重大事故による被害者への思いや、事故への教訓は全く活かされていないばかりか、事故を契機に「高速ツアーバス」と「高速乗合バス」の一体化・規制緩和を進めるものとなりました。また、バス事業者や現場で働く運転手の声を無視し、総務省の見直し勧告すらも脇に置いたものとしてバスの仲間の大きな批判を受けることになるでしょう。
 一部の利益業者や団体に顔を向け、安全に背をむけた運輸行政の姿勢は厳しく糾弾されなければなりません。