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2012年06月の記事
国交省 安全最優先の体制構築を
2012/06/26
事故を究明するには背景直視せよ
自交総連バス部会 山本事務局長
46名もの死傷者を出したツアーバス事故が注目を浴びましたが、共通する問題は07年に起こったあずみ野観光スキーツアーバス事故の背景と同じです。私たちは、4月17日に近畿運輸局交渉を行い、今の運行指針はデタラメなので規制を強化し、夜行ツーマンの法制化をしなければ重大事故が再び起こると、指摘し改善を求めていました。
私たちは、あずみ野バス事故以降、総務省の調査に積極的に協力し、同省が国交省にたいし安全面を指摘する「勧告」を出しました。国交省がこれに従い交通行政を進めていたら、今回の事故が防げたのではないかと思い残念でなりません。
居眠り事故を起こした運転者は、第一義的に悪いのですが、究明するに当たっては背景を問題にすべきです。事故の根本は規制緩和にあり、旅行業者の低運賃押しつけをバス事業者は断れない、あずみ野でもあった問題です。事故が起きればバス会社は徹底的に叩かれますが、旅行業者やエージェントへの批判報道は殆ど出てきません。
私たちは取材にも協力し、規制緩和の問題点や背景を説明しましたが、マスコミは行政批判を繰り返すだけで旅行業者への『責任追及』をしませんでした。
被害者が集中していた石川や富山県の地元紙は、大手新聞の論調と違い、楽天や旅行業者への追及記事が大きく割かれていました。
事故を教訓に、国交省が二度と重大事故を起こさせない、安全最優先の体制構築に向け規制強化を早急に実現しなければ、亡くなった犠牲者が報われません。
大阪労連 第38回評議員会・討論
2012/06/15
バスの安心安全担保する法改正急げ
大阪地連・松下末宏書記次長
6月2日に開かれた大阪労連・第38回評議員会の討論で、大阪地連からは松下書記次長がバス部会の運動について発言しました。要旨を紹介します。
4月29日に関越道・藤岡JCT付近で、居眠り運転により死者7人、重軽傷者36人を出すツアーバス事故が発生しました。旅行会社「ハーヴェストホールディングス」が企画・発注、2社を経由して受注したバス会社「陸援隊」が日雇い運転者に運行を任せた結果、起きた事故です。
同じく過労による居眠り運転のバス事故としては、07年2月に死者1人、重軽傷者26人を出した「あずみ野観光バス」事故があります。また、古くは85年1月にスキーツアーバスが長野市の犀川に転落、乗務員2人を含む25人が死亡した事故がありました。原因は運転者の2週間連続勤務、そして当日朝からの通し勤務による過労運転でした。大阪地連・バス部会は犀川事故の直後から、過労運転につながる長時間労働の防止や走行距離規制の法制化を求めてきました。
国交省が長距離ワンマンにお墨付き
多くのバス会社は犀川事故を教訓に、ワンマンでの走行距離を1日500`以下に抑える自主規制を設けましたが、00年の規制緩和で「陸援隊」のように違法が当たり前の事業者が参入し、運賃ダンピング競争が激化。それに加え旅行会社からの圧力もあり、既存バス会社も乗務員の人件費切り下げ、非正規化で安全をないがしろにする事態が進みました。
それに拍車をかけたのが、国交省の「交替運転者の配置指針(08年6月)」です。これは「あずみ野」事故を契機に策定されたものでありながら、ワンマンでの走行距離の上限を「2日平均で1日670`」としています。この距離は「あずみ野」事故の長野〜大阪間を大きく上回り、東京〜大阪間のワンマン運行に国がお墨付きを与えるようなものです。しかも、隔日乗務なら1日1340`の運行が可能で、ワンマン運行距離を無制限にする暴挙です。
今回の事故で、運転者のアルバイト雇用、名義貸しなどバス会社の違法行為が野放しになっている実態が明らかになりました。そして中小バス会社の足もとを見て運賃を値切る旅行会社に対しては取り締まる法律も罰則もありません。
国交省・厚労省の不作為が大事故に
大阪地連・バス部会は、事故以前から国交省・厚労省に対して、
『運賃、雇用に関するバス会社への監督・指導強化』
『低運賃や無理な運行を強いる旅行会社への監督・指導強化、罰則制定』
『ツアーバスの監査強化、高速路線バスの規制緩和ストップ』
『交替運転者の配置指針1日500`以下への改正』
『夜行ワンマンを禁止する法改正』
『改善基準告示※の法制化』、当面して@拘束時間1日13時間以内、A休息期間11時間以上、B運転時間1日7時間以内、C連続運転時間2時間以内とする改正を早急に行うこと──などを要求してきましたが、両省はこれらに真剣に応えようとはしませんでした。
総務省は10年9月、貸切バスの安全確保に関する勧告を国交省に出し、「行政処分の実効性確保、法令違反の抑止」「公示運賃の適正化」「旅行業者への指導・監査の強化」「交替運転者の配置指針を運転者の生理的影響を踏まえたものに改定すること」などを求めていましたが、国交省は適切な措置を講じませんでした。
このままでは、大惨事が繰り返されます。立法府と行政府に貸切バスの「安心・安全」を担保させる法改正を急がせなければなりません。
※=厚労省告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」
6.6 厚労省交渉
2012/06/15
改善基準告示の改定求め
乗客7人が死亡、乗客乗員39人が重軽傷を負った関越道ツアーバス事故問題で自交総連本部(飯沼博中央執行委員長)は6月6日午後、5月18日の国土交通省交渉を踏まえ厚生労働省に対して、「自動車運転者の労働時間の改善のための基準」(改善基準告示)を速やかに改定するよう求めました。
事故責任の一端、厚労省にも
菊池書記次長は、「バスの規制緩和から過重労働になって、それが関越事故の原因だと広くマスコミでも報道されているし、我々は以前から指摘してきた。直接的にはバスを管轄するのは国交省だが、運転労働者の労働時間を守るのは厚労省。670キロの基準も元は改善基準告示の1日9時間だが、国交省は批判されて、変える方向で検討会を設置した。厚労省でも安全な運転ができる、労働者の健康を守る基準を検討して欲しい、そうでないと二重の基準になってしまう」と、要請主旨を説明しました。
厚労省は、「現在、国交省の運転時間の基準の見直しや交代運転者の配置方針など過労運転防止対策全般を見直すために第1回検討会が5月29日に行われ、厚労省からも労働基準局長が参加している。改善告示については検討会での関係労使の議論を聞いたうえで、国交省と協議しながら対応していきたい」と回答。
組合は、大阪や宮城の実態を述べ、今回の事故原因の一つともいえる「改善基準告示」の改定に着手するよう要請し、省は「検討会の議論を聞き、真しに検討したい」と答えました。
過ち繰り返すな国土交通省
2012/06/05
谷口バス対策室長に「実効性のある是正措置を早急に講じるよう求める」緊急要請書を手交する飯沼中央委員長(左奥)と藤好議長(左前)
根本問題にメス入れろ
実効性のあがる規制を
自交総連(飯沼博中央執行委員長)と交運共闘(藤好重泰議長)の連名で5月18日午後、前田武志国交相に対し、関越自動車ツアーバス事故に関する緊急要請を行いました。同省は谷口バス対策室長他2人が応対し、「抜本的な見直しをしなければいけない」との認識を示すと共に「実効性が担保できるように、一から見直したい」と回答しました。
安全の最後の砦は運転者
18日、国土交通省交渉には、自交総連本部から飯沼委員長、菊池書記次長と大阪地連の庭和田書記長が出席した他、建交労や国土交通労組の仲間も多数参加しました。
藤好議長は「交通運輸労働者の働く条件が確立されない、運賃規制が効かない、大手からのダンピングまがいのものが克服されない限り、また事故が起こる。具体的に6項目にまとめているので、対応策に生かしてもらいたい」と求めました。
夜間ツーマン化規制やり遂げろ
国交省は、痛ましい事故を踏まえ「5月16日に自主的な夜間、交代運転者をおくなど、大臣が関係団体に要請した」と、述べるとともに「いまだに法令遵守事項を守っていないのをみると、安全対策の実効性があがっていなかった。抜本的な見直しを考えている。運転基準そのものを含めて、5月中に専門家を交えた検討会を設けてやる」などと回答しました。
庭和田書記長は「自交総連があづみの観光バス事故以降も問題点を指摘してきた経緯を踏まえ、検討会に入れるよう」要請しました。