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2010年09月の記事
総務省が国交省に指導・監督強化を勧告
2010/09/27
貸切バスの実態把握不十分
総務省は9月10日、「貸切バス事業における安全確保対策の徹底」「旅行業者への指導・監督の強化」などを国土交通省に勧告しました(前号で速報)が、その根拠となった総務省行政評価局による調査結果は、過重労働を前提にしたバス事業者の値引き行為や、旅行業者の値切り行為の実態を浮き彫りにしました。
2000年2月の需給規制の廃止以後、貸切バスの事業者数は1.8倍に増加。競争が激化したうえ旅行商品の低価格化、燃料費の高騰で営業収入が減少。人件費抑制のための過重労働が常態化し、事故件数も大幅に増加しました。
総務省行政評価局は、07年2月の「あずみ野観光」事故を契機に国交省が行なった重点監査で調査対象の65%に法令違反があったことや、「届出運賃を下回る契約運賃」「運転者の労働時間等を無視した旅行計画」を旅行業者から一方的に提示されるなどの苦情が貸切バス事業者から出ていることなどを背景に、貸切バスの安全確保対策の推進を図る観点から、一昨年8月〜今年9月にかけて、貸切バス事業者における安全確保対策の実施状況、同事業者と旅行業者等との運送契約の締結状況などについて調査を実施しました。
調査結果のうち、「届出運賃の収受状況」によると、実地調査で運送契約が確認できた76事業者の運送契約369件中、313件(84.8%)が届出運賃の下限額を下回り、収受率が50%を切る契約が133件(36%)ありました。
同調査の「届出運賃を収受できていない理由」では、前出の76事業者のうち、「規制緩和による供給過剰の状況下で、契約先の主導による下限割れ運賃が提示され、この運賃で契約しないと次の契約ができない恐れがあるためやむを得ず契約している」が45事業者、「採算が確保できれば自ら低運賃で契約している」が20事業者となっています。
また、「届出運賃を収受できていないことによる影響・支障等」では、76事業者のうち「運転者等の人件費の抑制」が31事業者(40.8%)、「車両更新時期の延長」が22事業者(28.9%)、「車両整備費の抑制」が8事業者(10.5%)。事業者アンケートの回答の中には「任意保険経費を削減し、価格競争を行なっている事業者も存在する」との意見があったといいます。
低価格を謳い文句に利用者本位を装いながら、「安心・安全」の責任を現場に丸投げしている旅行業者。規制緩和によって悪質事業者が利益を拡大している構図は貸切バスもタクシーも全く同じです。また、旅行業者の貸切バス事業者に対する姿勢は、タクシー乗務員に値引きを求めてくる長距離利用者のイメージにも重なります。
なぜ、「運賃」があらかじめ決まっているのか。その金額を決める際に最も重視されるべきものは何か。事業者・乗務員・利用者が「安心・安全」の価値観を共有しなければ三方共倒れ≠ノなってしまいます。国土交通省は今回の勧告を真摯に受け止め、旅行業者・貸切バス事業者への指導・監督を強化すべきです。
運賃値切る旅行業者への指導徹底を勧告
2010/09/15
総務省の国交省に対する勧告と調査結果を報じるNHKニュース(9月10日、13時)
総務省が独自調査の結果ふまえ国交省に
報道によると総務省は9月10日、貸切バス事業者の半数以上で法令違反があるとして、国土交通省にバス事業者や旅行会社への指導を勧告しました。
総務省行政評価局が2008年から地方運輸局やバス事業者などを調査したところ、抽出した84業者のうち44業者(52%)が法令に違反しており、そのうちの37業者で乗務員の拘束時間や運転時間が基準を超過していたことが分かりました。
さらに、84業者の9割に当たる76業者が、国交省に届け出た運賃を契約先の旅行会社に値切られていたことも判明。安全運行に支障が生じる恐れがあるにも関わらず、こうした実態を地方運輸局の大半が把握していなかったことから、総務省は国交省に実態把握および悪質事業者に対する課徴金導入の検討を要求。同省観光庁に対しては、旅行業者が違法な値下げを求めるなどした場合の指導を徹底するよう勧告しました。
バス部会の伊藤文男会長は「今回の勧告が、旅行会社に安全意識が芽生えるきっかけになることを願います」とコメントしました。
バス部会「2010年度総括学習会」
2010/09/06
運動の力で争議解決・労働環境改善進めよう
バス部会(伊藤文男会長)は8月19日午後、自交会館で「2010年度総括学習会」を開き、1年間の運動総括と新年度の運動方針を決議するとともに、同部会の元事務局長・尾崎博明氏を講師に迎えて学習しました。
伊藤会長はあいさつで「貸切バス業界は2000年の規制緩和以降年々厳しい状況に追い込まれ、バス料金は30年前の水準を下まわる異常な状況がつづき、経営が逼迫している」「安心・安全の問題では、07年に長時間労働による居眠り運転で死傷者27人を出した『あづみ野観光』事故以後も労働環境は改善されていない」と指摘し、バス事業者に対して優位に立つ旅行業者を巻き込んだ規制強化実現に向けて奮闘することを呼びかけました。
また、この1年の活動報告を行なったバス部会・山本事務局長は、同部会が東洋経済新報社から取材を受け、週刊東洋経済・7月17日号に運転手の過酷な労働実態∞改善されない安全対策≠ニ題して掲載されたことや、7月23日付「日本経済新聞」も『あづみ野観光』事故を取り上げ、「安値競争が現場に過労を強い、事故を引き起こしている」と掲載するなど、貸切バスの労働実態に対する関心が高まっていることを報告しました。
各単組からの報告では、中央交通労組の服部委員長が「5月13日の大阪地裁で原告の訴えを全て棄却する不当判決が下されて以後、大野会長・松尾課長による陰湿な報復がエスカレートしている」「原告のひとりを2年前の事案で会長室に呼び出して判決文を読め≠ニ迫ったうえ、事情聴取にかこつけた嫌がらせの退職強要を行なっている」と報告しました。
組織拡大で一年契約制撤廃
「貸切バスの一年契約制の不当性と撤廃闘争の重要性」(安全で安心なバス輸送と職場をめざすたたかい)と題して講義を行なった尾崎博明氏は、「定年まで安心して働ける明るい職場」にするために裁判・労働委員会闘争など事業者の不法行為に対するたたかいだけにとどまらず、「一年契約制をなくすしかない」と確信して組織拡大に全力をあげた経験を述懐。18年にわたる職場ニュースの発行、公休・年休を活用して家庭訪問で成果をあげたことなどを当時のニュースを示しながら説明。組織拡大が撤廃闘争勝利につながった経験を力説しました。
「総括学習会」は最後に、争議解決と労働環境を改善するため奮闘することを全体で確認して終了しました。