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2016年12月の記事

バスの重大事故は軽井沢を最後に(1) 規制強化に転換せよ 改善基準告示見直せ
2016/12/06

再発防止策検証3回で打ち切り


衆議院国土交通委員会(11月18日)
質疑=清水ただし衆院議員

 政府は軽井沢スキーバス事故の再発防止策として道路運送法改正案を提出し、今国会での成立をめざしています。11月18日に開かれた衆議院国土交通委員会で質疑に立った清水ただし衆院議員(日本共産党)は、規制緩和路線の抜本的な転換、改善基準告示の改正・法制化などを強く求めました。清水氏の質疑と政府側の答弁を連載で紹介します。(抜粋、一部意訳=編集部)


 1月15日、長野県軽井沢町で15人が亡くなり26人が重傷を負うという重大なスキーバス事故が発生し、10か月になる。改めて亡くなられた方々へのご冥福をお祈りし、怪我をされた方、遺族の皆様方に心からのお見舞いを申し上げたい。
 石井国土交通大臣は本法案について「このような悲惨な事故を二度と起こさないという決意のもと提出した」と説明された。法令違反を繰り返し、安全対策をないがしろにするような不適切なバス事業者の参入を防止するために、5年ごとの事業許可更新制を導入することや、許可を取り消された事業者が再参入できない期間を2年から5年に延長する、あるいは安全確保命令に違反した場合の罰則を強化するなどの内容となっており、いずれも必要な措置であると考えている。
 しかし、貸切バスの重大事故のおおもとにある、2000年以降に需給調整を廃止した規制緩和路線を転換するものとはなっていない。私たちは、この規制緩和路線が過当競争を生み出し、安全の規制まで緩和してきたという立場に立っている。
 そもそもこの軽井沢事故は起きてはならなかった、起こしてはならなかった事故だった。2012年4月29日に7人が亡くなり39人が重軽傷を負った関越自動車道高速ツアーバス事故、この時も政府は「こうした事故は二度と起こしてはならない」として対策をとった、にも関わらず同様の事故が起きてしまった。「高速・貸切バスの安全・安心回復プラン」、これは関越道事故が起こった1年後、13年4月2日に発表されたものだが、それに基づく対策はどうであったのか、検証が大前提だと思うが、いかがだろうか。
 石井啓一国交大臣「関越道事故を受けて国交省としては安全コストを反映した新たな運賃料金制度の導入や、交替運転者の配置基準の強化など、安全対策の強化を図ってきた。にも関わらず軽井沢事故を防ぐことができなかったのは誠に遺憾。国交省としては、軽井沢事故をふまえた総合的な対策を6月にとりまとめた上で道路運送法改正案を提出しているが、これらの対策や法改正の内容は、関越道事故後の対策の効果の検証の上に行なったものだ」
 「安全・安心回復プラン」には、「平成26年度末を目途にその効果を検証」と書かれている。検証は行なったのか。
 国交省・藤井直樹自動車局長「平成25年10月から26年6月までフォローアップ会議が開催されている」
 会議が開催された日時は。
 藤井「第1回が25年10月7日、第2回が26年1月14日、第3回が26年6月16日となっている」
 なぜ第4回目以降は開かれなかったのか。
 藤井「第3回会議で一部の委員から最低車両台数の引き上げ、車齢にかかる制限の導入の提案があった。これらについて最終的に意見の一致をみることができず、それが第4回が開かれなかった理由であると承知している」
 さまざまな意見が出るのは当然のことであって、そのことが会議を開催しない理由にはならないのではないか。
 第3回ですべて検証は終わったということか。
 藤井「検証については継続的に行われるべきものであると考えている」
 だったらフォローアップ会議を開催しておけば良かったのではないか。
 結局、関越道事故後の対策についてその効果を検証する会議は、第3回を最後に軽井沢事故が起こるまで開かれなかったということだ。検証をしないままに軽井沢事故の対策検討委員会が進められたということにもなる。悲惨な事故から何を教訓とするのか、検証がなければ事故の再発防止なんてできない。もっといえば、フォローアップ会議が繰り返し行われて「プラン」がしっかり強化されていたら軽井沢事故は防ぐことができたかもしれない。
 石井「『プラン』の効果の検証自体は事務的に継続して行なっていたものと認識している」
 軽井沢事故対策検討委員会・第10回の議事概要には「関越道事故時の対策の漏れが今回の対策で埋まったのでは」という意見が出ている。つまり関越道事故の後の「プラン」では不十分だったということの裏返しではないか。結局、需給調整など参入規制の強化に背を向けてきたことが軽井沢事故の背景にあるのではないかと、改めてバス事業の許可制を免許制に戻すなど、規制緩和路線の抜本的な転換を強く要求しておきたい。

(つづく)