HOME < ハンドルおおさか
ハンドルおおさか
ハイヤー・タクシー・観光バス労働者の新聞
月別バックナンバー
2011年01月の記事
日本航空165人不当解雇
2011/01/26
「安全性」「人権」切り捨てる暴挙
日本航空は昨年12月9日、経営再建のための人員整理として202人の「整理解雇」を通告、同31日に運航乗務員81人、客室乗務員84人、計165人の解雇を強行しました。
日航の更正計画では人員削減目標が9月時点で残り1500人でしたが、希望退職者は12月末までに1700人を超えています。営業利益も11月までの累計で1460億円に達し、更正計画上の目標額(年度末で641億円)を大幅に上回っています。これらの点からも今回の解雇が「整理解雇の4要件」を満たしていないのは明らかです。
解雇強行に先立つ同24日には「JAL労働者のたたかいに連帯する緊急集会」(呼びかけ=航空労組連絡会大阪地方連絡会、民主法律協会)が大阪市中央区内で開かれ、270人が参加。支援の謝辞を述べたCCU(キャビンクルーユニオン)の組合員は「私たち客室乗務員は保安要員なんです。お客様の安全を守るためには経験が絶対に必要ですが、ベテランがバッサリ切られることで経験が若手に継承されず、安全性が切り下げられているんです」と訴えました。
航空業界最大手の日航による今回の不当解雇事件は、航空業界に限らず全ての労働者の雇用に関わる問題です。大阪地連も積極的に支援を行っていきます。
特集4 労働問題研究家・筒井晴彦氏講演 −労働者を大切にする社会に−
2011/01/06
国際競争力論にだまされるな
企業負担 アメリカは日本の2倍、ドイツは3倍
大阪労連と大阪春闘共闘は11月20〜21日に「2011年国民春闘討論集会」を和歌山市内で開き、11春闘に向けた運動強化をテーマに議論を深めました。特集4はこの集会で労働問題研究家・筒井晴彦氏が行なった講演から「大企業と社会的ルール」に関する部分を抜粋して紹介します。
日本の企業は「国際競争力」をつけるためにまずコスト削減、労働者=コストと考えていますから賃金カット、人員削減に走っています。けれどもヨーロッパはそうではありません。
各国の自動車産業の賃金と社会保険料負担を比べてみましょう。賃金はアメリカが日本の約2倍ですね。ドイツは約3倍です。社会保険料負担が労使折半になっているのは日本と米国と英国、新自由主義路線の国ですね。他の国では労働者の負担は軽く、使用者側の負担は重くなっています。賃金と社会保険料使用者側負担の合計、つまり企業がどれだけ負担をしているかという割合を見ると、多い国では日本の2倍も3倍も企業が負担しているのがわかります。
こういうヨーロッパの企業が日本の企業と国際市場で競争して、立派に渡り合っているんですね。何でこんなに日本と違うのかというと、「国際競争力」に対する考え方が違うんです。「ヨーロッパは、コストだけで競争するようなことを望むわけにはいかない」ということが公式の文書で明記されています。また別の公式文書でも「ヨーロッパは、低賃金と低技能を利用して国際競争力を維持することはできない」と明記しています。派遣労働者やパート労働者など低賃金で無権利の労働者を使って国際競争力をつけるというようなことはしてはならない、というのがヨーロッパの考え方であります。
その結果、ヨーロッパに進出している日本の企業はどうなっているのでしょう。トヨタ本社の「行動指針」と英国トヨタの「行動規範」を比べてみました。トヨタ本社のほうは「(トヨタ労働者の)人権およびその他の権利を尊重し、不当な差別を行わず、権利侵害を許しません」と、ごく一般的な規定にとどまっています。ところが英国トヨタは「私たちは人権を尊重し、人種やジェンダー、民族性、年齢、宗教、性的志向、身体的障害、結婚、育児を理由とする差別を行わない。職場におけるハラスメントや脅迫を認めない」というふうに具体的に定めているんですね。こういうことを定めないとヨーロッパでは活動できないんです。国際的・社会的なルールが確立しているんですね。
たたかって労働者守るルールが実現
ひとつ例として紹介したいのは、リーマンショックのときに日本では大量の派遣切りが行われましたけれども、日本の自動車メーカーは減産を国内でしかできなかったんです。ヨーロッパでも米国でも生産調整できなかったんです。なぜかというと、欧米では労働者の使い捨てが許されないからですね。それからもうひとつは中小企業です。日本のようにジャスト・インタイムで○時にこれだけの品物を納入しなさい≠ニいうようなことがヨーロッパではできません。そして下請単価を30%も買い叩くようなこともできません。ですから数十万人もの派遣切り・期間工切りが日本で行われたんですね。
労働者、中小企業を守る社会的ルールをつくるということ、ルールをつくって外部から企業に縛りをかけることが重要になっていると、リーマンショックをかえりみて痛感しているところです。
では、このルールがヨーロッパでどのようにつくられたのかというと、いうまでもなく「たたかい」であります。例えばジェンダー平等、男女平等を進めていったのもこれは労働者のたたかいなんです。戦後間もない頃はヨーロッパでも「女性の人権としての男女平等賃金」という水準には到達していませんでした。
でも50年代にベルギーの航空会社の客室乗務員がたたかいに立ち上がるんです。同じ飛行機で同じ仕事をしているのに何で女性の賃金が低いんだということで裁判に訴えて勝ちました。こういうたたかいから男女平等賃金がヨーロッパに拡がっていって、ILOが100号条約(=同一価値の労働に対しては性別による区別を行うことなく同等の報酬を与えなければならない)を51年につくって、これが国連の女性差別撤廃条約につながっていきました。
ですからルールというのは「たたかい」でつくってきたんだと、日本から見ると高水準の社会的ルールをつくっているヨーロッパですけれども、これは政府が自主的につくったのではなくて、やっぱり労働者がたたかって勝ち取った成果なんですね。
たたかって勝ち取った経験は私たちにもあります。派遣切りの時に派遣・非正規労働者5千人が労働組合をつくったり、あるいは労働組合に入ったりしてたたかいに立ち上がりました。裁判にも訴え、労働局にも申告しました。その結果、直接雇用を勝ち取ったり、いすゞ相手の裁判では期間工の雇い止めは違法≠ニいう判決を勝ち取ってきました。まさにたたかいが日本でもルールをつくってきたということを私たちは経験しています。
それから自治体の職場でも、地方公務員法の壁を乗り越えて臨時・非常勤職員の雇い止めを撤回させるたたかいが進んでいます。法律の壁を乗り越えたルールをつくっているのはやはり労働者のたたかいなんですね。ですから労働組合をつくって大きくするということがルールをつくる上での最大の保障なんだということを私は強調したいと思います。
特集5 「戦火の中のアフガン・イラクのこどもたち」
2011/01/06
戦争の裏に蠢く金の亡者
フリージャーナリストの西谷文和さんは、イラクやアフガニタンに何度も赴き、撮りためた映像や写真を各地で紹介し、戦争の残虐な実態を伝えてきました。12月17日には「戦火の中のアフガン・イラクのこどもたち」と題して同氏が映像を交えながら講演しました。抜粋して紹介します。(主催=9条をいかそう・木津川地域連絡会)
堕落するマスコミ
テレビはアフガニスタンとかイラクの真相をなかなか報道しません。で、何が流れているかといえば海老蔵≠ナすね。もうエエわと、何時間海老蔵すんねんって(笑)。ちょっと前まではずーっと大相撲の野球賭博ばっかりでね。これもエエわって思てんねんけども、テレビが海老蔵≠ニか野球賭博≠ニかそういう、しょうもないニュースを延々と流してるということは、裏に何か隠したいことがあるんでしょうね。
本来なら最も大事な問題は沖縄ですよね。それとアフガニスタンに自衛隊の医官が派遣されようとしています。それから思いやり予算が全然削減されずにそのままいく、なおかつ消費税が上げられようとしている、あるいは武器輸出三原則が緩和されるなどと大事な問題があるのに、まともに報道しないのが日本のテレビの特徴です。
米国大統領がブッシュからオバマになって、イラク戦争は終わる方向なんですが、オバマはアフガニスタンでブッシュよりも激しく戦争してるんですね。ノーベル平和賞をもらっておきながらどういうことや?ということで、私は年に3回ほどアフガニスタンに行っております。
家族殺され自爆テロに走る
アフガニスタンでは現在も米軍の空爆で、多くの民間人が犠牲になっています。多いパターンは、米軍の戦闘機がタリバンを掃討するために村の上空を通過する時に、ロケット弾撃つ奴がおるんです。そのロケット弾は外れることが多いんですけど、米軍機のパイロットはここでクレイジーになってしまいます。村に引き返してきて、本来なら誰が撃ったかを調査して捕まえて裁判にかけるのが普通なのですが、米軍は村ごと焼くわけです。
村人が50人いたとすると、1人のタリバンを殺すために村ごと50人が焼かれるわけです。父母を殺された若者は当然米国に対する憎しみを燃え上がらせてニュータリバン≠ノなり、体に爆弾巻きつけて自爆テロに走ります。で、米兵が死ぬのでまた激しく空爆するという泥沼ですね。
タリバンを1人殺すたびに5人10人のニュータリバンが生まれますから、米兵が多く死ぬのも当たり前ですよね。今年は昨年より増えて690人ほど死んでます。米兵の死者がこれ以上増えるとオバマはピンチです。この戦争が失敗ではないかと言われますし、支持率が下がっていきます。
したがってオバマがいま考えているのは安全な場所から相手を殺す方法≠ナす。これは簡単ですよ、戦争を遠隔操作でやればいいわけです。で、米国は戦争をどんどん無人化しているわけです。
技術予算投じ戦争ロボット
無人戦闘機を米国から飛ばして、基地内のモニターに不審な人物が映ったらオペレーターがそれを撃つと、テレビゲームのような戦争です。軍事衛星をいっぱい飛ばしている米国だからできる作戦ですね。つまり戦争が無人化・宇宙化されているということです。
無人戦車もありますし、戦争ロボット≠燻タ用化寸前です。大きさは人と馬の中間ぐらい、4本足でぬかるみも雪道も滑らずに歩きます。そいつにマシンガンを持たせたら最強兵器ですよ、死にませんから。
戦争ロボットを作る技術があれば、お年寄りや障害者の介護ロボットもできるはずですよね。なんで人類は介護ロボットを作らずに戦争ロボットを作るんでしょうか。
ロボットは多額の予算をかけて作られるものですから、1台1億円ぐらいするかもしれません。そうすると介護ロボットが欲しいと思っても一般の家庭ではおそらく買えませんよね。だから作っても売れません。ところが戦争ロボットは国が買いますから作れば売れます。
だから戦争ロボットを禁止する国際条約を定めたり、介護ロボットを作る会社に補助金を出してみんながより安く介護ロボットを使えるようにすることが政治のちからだと思うんですが、残念ながらそうなりませんでした。
戦争の民営化でボロもうけ
ブッシュ大統領・小泉首相のときに何をしても儲けたもん勝ちだと、だから戦争ロボットでもミサイルでも作って儲けたらええねん、株を右から左に動かして儲けたらええねんと、そういう新自由主義の世の中になってしまいました。本当にそれでいいのか、よくないからアメリカも日本もチェンジした、でもそのチェンジが見事に裏切られた、というのが現状です。
なぜ戦争が終わらないのか、それは戦争が儲かるからです。
イラク戦争で米軍に次ぐ大部隊だったのは民間軍事会社(PMC)の社員、つまり傭兵でした。各PMCには親会社があって「カーライル」という投資会社もそのひとつですが、父ブッシュ(元大統領)が役員に名を連ねています。つまり、子ブッシュ(前大統領)が戦争を起こす→PMCに傭兵を発注→父ブッシュが大儲け、という図式です。ごく一部の儲けたい人たちが戦争をしたがるわけです。
そういう人たちはお金と権力を持ってますから、買収した新聞やテレビで世論操作して、国民を戦争に向けることが多々あるのではないでしょうか。
評論家の不祥事知らんぷり
角界野球賭博≠フニュースが延々と流れていた5月の末に、元自民党の野中広務氏がニュース23で「政府の官房機密費を政治評論家に配った」という爆弾発言をしました。
これは非常に大きな出来事ですよ。もらったのは誰か。たかじんの番組に出てる三宅久之氏、俵孝太郎氏、竹村健一氏の名前が出ています。田原総一郎氏はもらったけど返した≠ニ威張っているんですよ。もらった時点でアウトやと思いますけどね。
これらの人々はテレビのワイドショーに出てきて、あたかも中立のふりをして沖縄の基地は必要だ≠ニか日米同盟がいちばん大事だ≠ニか憲法を変えて自衛軍にしないといけない≠ネどと延々と言ってきたわけでしょう?そんな人たちが政府から金をもらっていたら、これはスキャンダルですよ。普通ジャーナリストは政府から金もらったらアウトですよ。
ですから各放送局は内部調査委員会をつくって、誰がなんぼもらっていたか調べなあかんわけですよ。琴光喜がなんぼ賭けてたか調べるヒマがあったらもっと身内のことを調べなあかんわけですよ。ところが各局は調査するどころか、これを報道したくないわけです。
5〜6月は鳩山さんが最低でも県外だと言っていたにも関わらず辺野古になった時期とも重なります。政府としては辺野古で盛り上がった報道を打ち消していきたいわけですよね。しかしニュース枠は10分あると。ちょうど6月は南アフリカW杯がありましたから、サッカーと野球賭博≠流しとけば10分過ぎると、こんな感じだったのではないかと思います。
いまはインターネットがありますから、おかしいやないかという声はネットではだいぶ出てましたけどね。だからテレビは非常に曲がり角というか後退しているんですよ。しかし残念ながらテレビで世論がつくられますから、大阪の橋下知事なんかテレビでつくられた知事ですからね。テレビの影響力は大きいです。だからこそメディアにはしっかりしてほしいと思います。