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2015年08月の記事

本流逆流(8月25日付コラムより)
2015/08/25

 原水禁世界大会への参加を呼びかけ、広島・長崎の原爆資料館の見学を勧(すす)める立場の私がこう言うと身もふたもないが、大阪にいながらでも原爆について学習することはできる。漫画「はだしのゲン」(作=中沢啓治、刊=汐文社など多数)。季節柄か、コンビニの書架で廉価版を見かけた。
 作者の広島での被爆体験がすべて描いてある。主人公の少年・ゲンの目前でなすすべもなく焼け死ぬ父、姉、弟。熱線で溶けた皮膚を引きずり水を求めてさまよう人々。腹部がガスで蛙のように膨張した無数の屍が浮かぶ太田川。熱線を免れた人々を蝕む放射能。社会から忌避される被爆者。私は小学校高学年時に読んだ。
 単行本では原爆が投下されるのは第2巻で、第1巻では戦前の日本がどういう社会だったのかを描写している。ゲンの父は戦争反対を公言したことから特高警察に連行され激しい暴行を受ける。一家は町中から「非国民」と呼ばれ、さまざまな嫌がらせを受ける。いわゆる「同調圧力」である。さらには朝鮮から強制動員されゲンの隣家に住む「朴さん」へのイジメも描かれている。
 「ゲン」を読めば自民党の二世、三世議員が取り戻そうとする“美しい日本”の正体がよくわかる。だからこそ彼らは学校の図書室から「ゲン」を排除しようと企(たくら)む。私は「ゲン」と出会っていなければいまごろは会社の同調圧力に抗(あらが)うこともなく、労働運動にも携わっていなかったかもしれない。
 自民党の「憲法改正草案」は「個人」の尊厳を否定し、「国民」として服従せよと私たちに強要する。「嫌韓・嫌中」本が書店に平積みされ、テレビで「日本人はスゴい」などと過剰な自賛が垂れ流されているいまこそ一人でも多くの人に「ゲン」を読んでもらいたい。何なら「嫌韓・嫌中」漫画と読み比べてもいい。作品のベースが実体験か妄想か、クォリティの差は歴然としている。

心ゆさぶる被爆者の声 被爆体験の継承が課題
2015/08/25

〈手記〉自交総連大阪地連
    松下末宏書記次長


 3回目となる2015年原水禁世界大会長崎ですが改めて、原爆の展示物や写真以上に、被爆者が生で語る言葉に、心を揺さぶられる思いになりました。
 8月7日・長崎の集いでは被爆者だけのコーラスグループも参加し、被爆者がそれぞれの思いをもって原爆の悲惨さを伝え、原水爆廃絶を訴え、併せて安倍政権が進めている憲法違反の戦争法案撤廃を求めていました。
 被爆から70年、被爆者の平均年齢は80歳を超えています。近い将来被爆者の生の声を聴くことができなくなります。被爆者の思いをどのように受け継ぎ、将来へつなげるかが大きな課題ですが、9日・閉会総会では高校生が平和運動への取り組みを紹介する中で「私たち一人ひとりは微力だが無力ではない」と力強く平和への決意を伝えました。
 同総会でスクリーンに映し出された原爆投下後の長崎の映像ではすべての建物が消え去っていて、東日本大震災の津波に襲われた街と重なって見えました。すべてがなくなるとはこのことかと…そして、震災では福島原発事故によって多くの人が今も避難生活を余儀なくされています。津波は防ぎようのない大自然の猛威ですが、原爆は人の手によって落とされました。防ぐことができるのです。
 8日・「動く分科会」では、佐世保を海上からと弓張岳展望台から米軍基地・自衛隊基地を視察しました。案内の方からは「住民からの苦情を口実に、弾薬庫・揚陸艇基地を思いやり予算によって移設拡充し、跡地は自衛隊が使う予定で、米軍の強襲揚陸艦の岸壁も移設拡充している」との説明がありました。
 沖縄の普天間基地も同様に住民への安全を口実に辺野古へ移設拡充しようとしています。そして、安倍政権は多くの国民が反対する中、福島原発事故の原因が解明されないまま、川内原発を再稼働させました。そして、日本を戦争する国へと推し進める憲法違反の戦争法案を強行採決しようとしています。
 原水禁世界大会長崎に参加し改めて、多くの犠牲者を出す戦争は二度と繰り返してはならないことを実感し、日本の平和憲法を守るために、戦争法案を廃案にしなくてはならないと強く感じました。

原水爆禁止2015年世界大会‐長崎
2015/08/25

原水爆禁止2015年世界大会‐長崎 閉会総会の前に舞台で記念撮影する大阪地連代表団(8月9日、長崎市民会館で)

被爆地は長崎で最後に
戦争法案絶対許さない


 「被爆70年を核兵器廃絶の転機に」「長崎を最後の被爆地に」──原水爆禁止2015年世界大会‐長崎が8月7〜9日に開かれ、初日の「長崎のつどい」に5千人、最終日の「閉会総会」には6千人が国内外から集結。自交総連大阪地連からも11人が参加し、「広範な人びとの共同の力で、『戦争法案』を必ず廃案に追い込みましょう」などとする「長崎からのよびかけ」を満場の拍手で採択しました。

 7日の「長崎のつどい」で田上富久・長崎市長は、「広島・長崎からの発信だけでは核兵器廃絶への大きな流れになりにくい」と指摘。「被爆者の皆さんは、広島・長崎だけの問題ではなく世界中の問題、過去の話ではなく未来に向けた話だから、一生懸命に思い出したくない話を、心の中を傷つけながら話してくれている」として、参加者に向けて「長崎で感じたこと、長崎で受け取ったメッセージをそれぞれの町で伝えてほしい」と訴えました。
 そして長崎の被爆者・谷口稜曄(すみてる)さん(日本原水爆被害者団体協議会代表委員)は「背中一面大やけどのため1年9か月はうつ伏せのままで死の淵をさまよった。そのため私の胸は床ずれで骨まで腐った。いまでも胸の肉はえぐり取ったようになり、肋骨の間から心臓の動いているのが見える。肺活量は人の半分近く」との代読に続けて、最後に自分の声で「いま集団的自衛権の行使容認を押しつけ憲法改正を推し進め、戦争の時代に逆戻りしようとしている。私は戦争につながる戦争法案は絶対に許せない」と強調しました。
 9日の閉会総会では長崎の被爆者・奥村アヤ子さんが家族全員を失った被爆体験を切々と語り、「戦争へ続く安保関連法案は絶対許してはならない。平和の原点は人の痛みがわかる心を持つこと。世界中の人が痛みを理解しあえたら核兵器は地球上からなくなる」「長崎が最後の被爆地になるように被爆の実相を多くの人に伝えていきたい」と決意表明し、参加者は大きな拍手で応えました。

“安保法案に怒る”憲法学者・小林節氏 痛烈に安倍批判
2015/08/05

“安保法案に怒る”憲法学者・小林節氏 痛烈に安倍批判 「アベ政治を許さない」と書いた紙をかざしアピールする参加者たち

−専守防衛なし崩し−自衛隊が最後まで米軍と戦い続けることになる!!


 憲法に違反し、日本を殺し殺される国へと導く戦争法案。同法案反対の論陣の先頭に立つ憲法学者・小林節さんの講演会が7月28日にエルおおさか(大阪市中央区)で開かれました(主催=大阪革新懇)。講演の後半部分を抜粋して紹介します。(文責=編集部)

国際法上も
法的資格無


 法案は、海の向こうでアメリカが戦争に巻き込まれて、明日は日本が危ないと、安倍さんが客観的・合理的・総合的に判断したら出兵できるという法律でしょ?、どうやって戦争に参加するんですか、軍隊も持たずに。自衛隊は軍隊の格好をした警察です。
 憲法9条2項で、陸海空軍それぞれ戦力は持てないと書いてるでしょ?、だから日本は第二警察たる警察予備隊を創りました。いまの自衛隊です。
 その次に交戦権を持ってないでしょ?、交戦権を持ってないということは、国際法上、戦争をする法的資格がないんです、だから日本の自衛隊は外へ行ってドンパチやったら海では海賊になり、陸では山賊になるんですよ。つまり、相手に捕まったら犯罪人になるんです。
 自衛隊が軍隊じゃないことをもうひとつ裏付けるのは憲法76条2項で、軍法会議を持てませんって書いてあるんです。何で軍法会議が必要かというと、軍隊は勝つために何やってもいいんです。勝つために建物を破壊したり、あるいは危険を感じて撃ってみたら、たまたま子どもだった…軍隊はそれを許すんです。つまり軍隊というのは勝つために何をしてもいい、ただしドサクサまぎれに強盗や強姦をやったり、よくあることです。それはきっちり軍法会議で裁かれるんです。そういう特殊な法体系を扱うのが軍法会議なんです。でも自衛隊は、普通の民法、刑法で裁かれる、がんじがらめの組織なんです。本来は怖くて海外に出ていけないんです。このことを自民党の当局者と議論してもひとつも反応が返ってきません。磯崎補佐官とテレビで生討論した時、彼は途端に聞こえなかったふりして話題を変えました。

最前線での
戦闘以外可


 例えば1万人の師団だと最前線で戦うのはそのうちの2千人です。後の8千人は何をやってるかというと、通信、輸送、弾薬や燃料の補給、医療、食料、修繕などの後方支援です。で、法案を見ると最前線での戦闘以外全部できるんです。ということは、アメリカは最前線の部隊だけ派遣して後は全部日本に任せられるようになる、自衛隊が海外で戦ってる米軍と一体化することになるわけです。
 自衛隊は専守防衛という大原則がありますから、〈海外派兵禁止〉〈海外で他国の武力行使と一体化しない〉というルールがあります。自衛隊が活動できるのは非戦闘地域、イラク派兵では誰もいない砂漠の中に陣地作ったわけですよ、だから自衛隊は本当は役立たずなんです、アメリカにとって。そういう所で何かお手伝いするといって水を配ってたんですけども、今度はそれじゃ役に立たないと言われてるから、非戦闘地域という虚偽を外しました。にもかかわらず安倍さんは安全地帯とか言ってるんですけど、これもウソ。
 さらには“一体化してない証(あかし)に、敵が襲ってきたら後方支援を中止する”と。戦闘中に通信の電源切ったりしたら米軍に殺されますよ、本当に。外科手術を途中でやめられますか。隊長の判断で帰ってくる?、帰ろうとしたら後ろから撃たれますよ。そんなこと常識で考えたらわかるじゃないですか。
 だから後ろから合体したら、最後まで米軍と戦い続けるということです。これが現行の憲法の下でどうしてできるんですか。

アメリカは
すでに破産


 もうひとつの問題点はね、戦争破産しますよ。アメリカが日本に助けてくれと言ってる理由は、アメリカもすでに破産してるんですね。毎年、連邦政府職員の給料が遅配するんです。
 アメリカは調子にのって世界の警察とか言って、世界中に因縁つけて火をつけて回って、アメリカが関わった戦争でまっとうに終わったものはないじゃないですか。戦争って、すごく高額な花火大会なんです。ただただ一方的に燃やそうとするんですね。で、気づいたら破産してるんです。
 中国も日本も政策的にアメリカの国債を買って、つまりアメリカの手形を裏書きしてあげてるということです。その日本がアメリカの二軍になることで第二の戦争破産。何もいいことがないじゃないですか。

政治は道具
主権は国民


 安倍さんがあまりに愚かなことをしてくれたおかげで…権力によるクーデターと呼びますよ、権力の側が反乱したんです。だから我々が立ち上がって、武器を使わずに言論と投票箱を使って安倍さんを追い出そうという、すごい拡がりを感じるんです。絶対何かが変わってるんですよ。
 日本人にとって明治憲法は神たる天皇陛下から下げ渡されたもので、アンタッチャブルでした。その点、建国闘争に立ち上がってイギリスから独立したアメリカ人は民衆の権力を創りました。神を詐称しない民衆の権力ですから、民法や刑法の代わりに憲法で権力者を管理するという状況を創ったわけです。だからこそアメリカ人は権力者を選挙で取り替えることについて、ためらわないですね。
 主権者は我々国民であり、政治家は我々を幸福にするために権力を扱う道具に過ぎませんから、“裏切ったらいつでも取っ替えてやるぞ”という関係と感覚を我々が勝ち取るチャンスに来てるんじゃないかと思うんですね。
 ですからどうぞ、必死は結構、だけど気長にですね、とにかく廃案に追い込まないとダメだけど、その先を考えてないとガクっときちゃいますから。交替でお休みをとって、ゾンビの如く官邸を襲ってあげてください。私もどこかでゾンビの中に混じってるかもしれません。よろしくお願いします。