HOME < ハンドルおおさか
ハンドルおおさか
ハイヤー・タクシー・観光バス労働者の新聞
月別バックナンバー
2009年04月の記事
労働問題研究家・筒井晴彦氏 講演A
2009/04/27
貧困と格差なくすため人間らしい労働の実現を
連載A 日本とヨーロッパの労働時間規制
均等待遇で男女平等を促進
ヨーロッパは公休日も有給
日本は残業時間の上限規制がない、という点で労働時間規制がたいへん立ち後れています。「月45時間」「年間360時間」という基準はありますが、36協定を結んで特別条項を盛り込めば、360時間をはるかに超えて700時間でも800時間でも残業できる仕組みになっています。
それからもうひとつ、有給休暇が少ないことも日本の大きな特徴です。日本の有休の最低日数は10日ですが、ベルギーは30日、ドイツも30日、フランスは31日、イタリアは33日です。ヨーロッパではこれに労働協約の上乗せがありますから、実際はもっと多いんですね。
また、日本のパートの人たちは公休日の賃金が保障されていないので、大型連休のある月は生活が不安定になりますが、ヨーロッパでは公休日も有給にしているので、そういう不安定なことにはなりません。
ヨーロッパの法定労働時間は1週間につき48時間、これは所定内労働時間だけではなくて残業も含めて48時間です。
ヨーロッパの労働時間規制は非常におもしろくて、「24時間につき連続11時間の休息時間を設けなければならない」としています。先に休息時間を規定することで労働時間を規制しているんですね。24時間につき11時間の休息ですから、残業も含めて1日13時間以上働かせてはならない、ということです。日本でもそういう規制の仕方を考えてみたらいいんじゃないかなと思います。
家族にやさしい労働時間を
国際労働機関(ILO)はいま“すべての人に人間らしい労働を保障しよう”ということをグローバル目標に掲げて全力をあげています。そして、これを労働時間の分野で実現しようという提起が『ディーセント・ワーキングタイム(人間らしい労働時間)』です。
この提起の中で私が特に強調したいのは『家族にやさしい労働時間』と『男女平等(ジェンダー平等)を促進する労働時間』、この2つの項目です。ILOは、女性が最も困難な労働実態におかれているとして、ジェンダー平等を真正面に掲げて取り組んでいますが、労働時間規制の中でも一貫しています。
女性は家族的責任を不当に重く背負っています。家族的責任は日常的に果たさなければなりませんから、週や月の単位ではなく、1日の労働時間を規制することによって男も女も家族的責任を果たせるようにしようという提起が『家族にやさしい労働時間』です。EUが1日の労働時間の上限を13時間としているのもこういう立場からです。
ILOが労働時間に関する報告書で「真の人間らしい労働は、均等待遇なしには実現できない」と記述しているのもこの立場なんですね。女性が圧倒的多数であるパートの人たちに対して均等待遇を実現しなければ、彼女たちの『人間らしい労働時間』は実現できないということで、ここでもジェンダー平等を重視しているということを強調したいと思います。
日本でも全労連などが『人間らしい労働』を実現するために『働くルール署名』を全力あげて取り組んでいます。これからはジェンダー平等・男女平等をもっと正面に、座標軸にして取り組む必要があるんじゃないかなとILOやヨーロッパを研究して感じているところです。(つづく)
大阪交運共闘「運輸職場の劣悪な労働環境を告発」4・18シンポ
2009/04/27
規制緩和進めた政治 総選挙で転換しよう
大阪交運共闘(八剱〈やつるぎ〉秀明議長=国労大阪)・大阪交通圏構想検討委員会は4月18日、交通・運輸職場の劣悪な労働環境を告発するシンポジウムを国労会館(大阪市北区)で開き、80人が参加。5つの産別が各分野での実態を報告しました。
主催者あいさつで八剱議長は「小泉構造改革のもとで交通・運輸の分野でも規制緩和が強行された結果、利用者の安心・安全や事業の長期的・持続的な発展をないがしろにして目先の利益を追い求めるルールなき競争が激化した。人件費の圧縮が最優先され、労働条件は大幅に悪化した」「賃金の低下と過酷な長時間労働、非正規雇用、人権無視の労務管理など劣悪な労働条件を背景に重大事故が続発し、安心・安全がいま本当に損なわれている」と指摘。「交運労働者として実態を告発するとともに、経営者はもとより行政に対しても実効性のある対策を求めていくことが重要だ。来たる総選挙では規制緩和を進めてきた政治を転換させなければならない」と強調しました。
特別報告を行なった私鉄連帯する会・佐藤洋樹氏は同会が阪急電鉄で取り組んできた活動を紹介。合理化による分社化で駅員や乗務員に正規と非正規が混在する状況下で、職場新聞の発行やアンケート、対話を積み重ねてきたことで、「仕事を非正規にとられる」といった狭い見方にとらわれていた正規社員の意識に変化を起こすとともに、腰の重かった労組も動かし、昨年12月の「子会社社員840人の本社直接雇用」につながった経験を話しました。
労働問題研究家・筒井晴彦氏 講演@
2009/04/15
貧困と格差なくすため人間らしい労働の実現を
「人間らしい働き方と暮らしの実現を求める国会請願署名」(働くルール署名)運動に取り組む大阪労連は4月7日、同運動を推進するための交流集会を国労会館(大阪市北区)で開催。労働問題研究家の筒井晴彦さんが「国際労働基準とルール署名を学ぶ」と題して講演し、“働くルール”をめぐる世界の動きを解説しました。本紙では要旨を連載します。
連載@ 世界の「働くルール」はどうなっているか
人間らしい労働は男女平等の視点で
いま、世界で貧困と格差が大きく拡がっています。国際労働機関ILO※はその根底に雇用や働くルールの破壊があるという認識に立って、貧困と格差をなくすためにはすべての人々に人間らしい労働を保障する必要がある、という提起をしています。
中でも極めて劣悪な状態におかれている非正規労働者を保護することを重視し、とりわけ女性、若者、移民労働者の保護、それから児童労働をなくすことを重視しています。なぜならこの人たちが最も困難な労働実態のもとにおかれているからです。
同時に、非正規労働者の中でも請負や委託といった雇用されていない働き方が増えてきている、これが偽装請負や偽装雇用となって違法・無法の温床になっていますから、こういう働き方をしている労働者を保護していこう、という提起をしています。
ILOがいうディーセントワーク(人間らしい労働)の柱は4つです。1つめは十分な所得があること。2つめは団結権や団体交渉権などの労働者の権利が職場で保障されているということ。3つめは社会保護、これは社会保障よりもやや広い概念で、たとえば家賃補助なども含めた社会保護によって労働者が守られているということです。
そして4つめがジェンダー平等、男女平等です。これは最初の3つと並列ではありません。全体を貫く基軸としての役割が与えられています。賃金、労働者の権利、社会保障を考えるうえで、男女平等の視点から考えなければならないということで、このジェンダー平等をとりわけ重視しています。
そして、人間らしい労働を実現するために政府と労働者と使用者が協力して実現しようということで、あらゆる労働問題をこの三者が協力してしていく(三者構成主義)、とりわけ労働者と使用者の団体交渉を重視しています。
ヨーロッパでは正社員が当たり前
ILOが提起していることを非常によく実現しているのはヨーロッパです。特徴は4つあります。
1つめとして、「正社員が当たり前」の社会になっています。非正規労働者(雇用契約に期間の定めがある労働者)の割合は約1割程度です。具体的にはベルギーが8・7%、デンマークは8・9%、ドイツは14・5%、フランスは13・5%、イタリアは13・1%、オランダが16・6%。特に大企業はほとんどが正社員です。
2つめに、非正規であっても正社員と同じ待遇にするという「均等待遇」が法律で定められています。賃金や社会保障、有給休暇などはすべて正社員と同じ待遇が保障されているのです。ですから、やむなく非正規になっている人はさきほど言った数字の約半分です。
3つめの特徴は、簡単に首切りできない社会になっている、ということです。解雇規制法が充実しているうえに、政府が先頭に立って、大企業の解雇を撤回させています。
そして万が一、解雇にあって失業した場合でも手厚い失業保険によって生活が守られる、これが4つめです。給付期間が長く、しかも1週間ほどで認定されて給付の対象となります。日本の場合は自己都合でやめると3か月間の受給制限期間がありますが、こんな制度を設けている国はヨーロッパにはありません。そして給付期間中に再就職できなかった場合は公的扶助に移行します。日本でいう生活保護です。
派遣法改正してみなし雇用制度を
ヨーロッパでも派遣労働者は増えていますが、臨時的、一時的業務に厳しく限定されています。日本では公務職場でも派遣が拡がっていますが、ヨーロッパで公務への派遣を全面的に解禁している国はありません。少なくない国が禁止しています。
日本で派遣法の改正を考える場合に重要なのは、ヨーロッパに普及している「みなし雇用制度」(派遣先が期間の制限を超えて派遣労働者を受け入れている場合は直接雇用したものとみなす)です。
ヨーロッパではこの制度で派遣労働者の約50%が派遣先に直接雇用されています。日本のように期間満了で派遣切りするようなことは起きていません。日本の労働組合も派遣法改正で「みなし雇用制度」を要求していますが、非常に大事な制度だと思います。
均等待遇適用されるのはわずか1%
日本では07年にパート労働法が改正されましたが、国際的な基準からは大変遅れています。特に強調したいのは「均等待遇」です。
ILOが94年につくったパート労働条約では、賃金だけではなく社会保障や有給休暇についてもフルタイムの労働者と同じ条件を保障していますし、ヨーロッパではこれを実現しています。
日本の改正パート労働法にも「均等待遇」が入りましたが、これの適用を受ける労働者は、いまのパート労働者の1%程度だといわれていますから、今後もこの法律ををさらに改善していくのは大きな課題だと思います。(つづく)
※国際労働機関(ILO)=世界の労働者の労働条件と生活水準の改善を目的とする国際機関で、187か国が加盟。国連と協定を結んで連携し、「基本的人権の推進」「労働・生活条件の向上」「雇用機会の増進」のための国際的な政策や計画の策定、国際労働基準の設定などを行います。
春の組織拡大宣伝
2009/04/15
「声」を上げなければ何も変わらない
大阪労連は4月1日早朝、JR天王寺駅東口で、行き交う労働者に対し、大阪労連への加盟を呼びかける宣伝行動を行いました。
岡田委員長他6人の自交総連のなかまは労連のなかまとともに、「困ったときは一人で悩まないで連絡下さい」としたティッシュ1500個を配布しました。
大阪労連の藪田書記局次長は、2月に寄せられた労働相談が400件に上ったことを明らかにし、突然クビを切られた労働相談に対し「生活保護の受給や地域労組に加盟して問題解決を目指しているが、日に日に労働実態が悪化している」と指摘しました。
そして同氏は、「『(アルバイト)時間外で働いているのに賃金を払ってもらえない』『毎日娘(派遣労働者)が2〜3時間残業をさせられ、保育園に子供を迎えにもいけない。いつも疲れた顔で死にたいと漏らす、心配でならない』と父親が相談してくるなど深刻なケースが目立つ」と述べ、「黙っていては何も変わりません。大企業・金持ちだけを優遇する日本を変えましょう。そしてどんな相談でも大阪労連に」と通勤途上の労働者に呼びかけました。
大阪地連の松下書記次長も、「有給は取れていますか?6か月働けば10日間の有給があり、労働者が自由に休める権利、パートでも働いた時間日数に併せて有給は発生します」と述べて「ちょっと変と思ったら大阪労連にご相談ください」と声を大に呼びかけました。
反貧困、生活危機突破!3・22 府民大集会
2009/04/06
集会の最後にシュプレヒコールで拳を突き上げるなかま(3月22日、大阪市北区の扇町公園で)
大企業は内部留保はきだして国民の暮らしと雇用を守れ!!
3月22日、大阪市北区の扇町公園で開かれた「反貧困、生活危機突破!府民大集会」には大阪地連のなかまを含む3千人が集まり、巨額の内部留保を貯め込みながら雇用を守ろうとしない大企業や、軍事費を聖域化して社会保障を切り捨てる自公政権に対して怒りの声をあげました。
主催は労組や民主団体で構成する「軍事費を削って、くらしと福祉・教育の充実を」国民大運動実行委員会。
主催者あいさつで大阪労連の川辺議長は「労働者・国民が危機的状況に陥っている原因は財界・大企業の要望で規制緩和・構造改革を進めてきた自公政治にあることは明白だ」と指摘し、「解散総選挙を1日も早く、我々のたたかいで実現させていくことが必要だ」と強調しました。
また、連帯あいさつに立った全労連の大黒議長は「政府も大企業もこの経済危機を乗り越えるには内需拡大だと口では言っているが、やっていることは派遣切りと社員の賃下げだ。購買力が下がる一方で本当に内需が拡大できるのか」と指摘。大企業の内部留保について、13兆9千億円持っているトヨタをはじめ、資本金10億円以上の大企業だけで230兆円あることを紹介し、「いまこそ大企業に社会的責任を果たさせるために、国民的共同のたたかいを大いに進めていきたい」と決意を述べました。
集会後のデモ行進では「なくせ!貧困!生きさせろ!」とプラスターを掲げながらシュプレヒコールに声を張り上げました。