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2009年05月の記事
「えん罪!救おう無実の人々 関西市民集会」
2009/05/25
遠い他人の悲劇ではない
関西えん罪事件連絡会が発足
5月16日、大阪市北区内で開かれた「えん罪!救おう無実の人々、関西市民集会Part.11」で「関西えん罪事件連絡会(たんぽぽの会)」が発足し、「冤罪は、遠い他人の悲劇ではない」と訴えました。
裁判の原則は“疑わしきは罰せず”
集会では「えん罪」を訴える9つの事件が紹介されました。「地裁所長オヤジ狩り事件」では警察が少年に対して脅しや暴力で「自白」を強要し5人の青年・少年を犯人に仕立てあげました。しかし5人が無実を主張した結果、刑事裁判や少年審判にかけられた4人の無罪が確定、当時13歳で児童相談所に通報された元少年も、国家賠償裁判を提訴して、無実を訴えていることが報告されました。
5月21日から施行される裁判員制度についての報告では、「裁判員の負担を軽減するための公判前手続で、すべての証拠予定事実の明示(証拠の予約)を行い、公判中の新たな証拠は認められない」「弁護側は裁判が始まってからしか事件の内容がわからないが、検察側は裁判前に十分な時間を使い立証準備ができ、裁判途中弁護側の証拠を見てから主張の変更も行なえる」「捜査段階での全面可視化を行なわない現状では、“自白の強要”などの立証が難しく、被告人にとって不利な点が多い」との指摘があり、報告者は「もしあなたが裁判員に選ばれたら、えん罪をなくすためにも、“疑わしきは罰せず”の原則を守り、検察側の立証に対して、少しでも疑問があれば無罪を主張しましょう」と締めくくりました。
最後に「関西えん罪事件連絡会(たんぽぽの会※)」は「私たちはえん罪犠牲者。そして家族。そして支援者」「えん罪は、決して遠い他人の悲劇ではありません」「無実の人は無罪に」「無実の人々を救い、この社会からえん罪をなくすために」と発足を宣言しました。
(※会名の由来=どうか、見知らぬあなたのもとにも、たんぽぽの綿毛のように風にのって届きますように、との願いから)
労働問題研究家・筒井晴彦氏 講演 最終回
2009/05/14
貧困と格差なくすため人間らしい労働の実現を
日本と世界の最低賃金(下)
ナショナルミニマムの確立を
全労連はいま、ナショナルミニマム(国民が国家に最低限保障されるべき公共サービス)の確立をめざす運動に取り組んでいます。必要生計費をもとに最低賃金を決め、それを基準にすえて社会保障給付に連動させようという運動です。
実はすでに多くの国がナショナルミニマムを確立しています。ILOが調べた101か国のうち41か国が最賃と社会保障を制度で連動させており、その大半は全国一律最賃制の国です。ナショナルミニマムを確立するためには最賃を全国一律にしないと無理なんですね。日本のような都道府県別・47種類のバラバラ最賃では、確立すべき年金の最低保障制度などの基準にはなり得ません。
07年、08年と労働組合の奮闘によって最賃が大幅に引き上げられましたが、この運動の教訓としては、“全国一律最賃制をつくれ”という要求をテコにして大幅引き上げを勝ち取ったという点がいちばん大きいと思います。
日本の最賃闘争の歴史を調べてみると、制度を改善した、あるいは最賃を大幅に引き上げた年が2回ありますが、“最賃の全国一律化”要求を掲げて勝ち取ったという点で共通しています。
68年の春闘で労働組合が“最賃全国一律化”を掲げて運動を強め、労働大臣から「日本でも全国一律最賃制は可能だ」という答弁を引き出したことが大きな転機になり、それまで事業者だけで最賃額を決める仕組みだった最低賃金法の改正を勝ち取りました。
75年には野党(日本共産党、社会党、公明党、民社党)が全国一律最賃制を盛り込んだ共同法案を国会に提出し、同時期に労働団体(総評、同盟、新産別、中立労連)も共同で同じ提案を行なったことによって、最賃の大幅な引き上げを勝ち取りました。
中小企業経営者と一緒に運動
日本の場合、中小企業の実態を考えると、最賃を円滑に引き上げるためには全国一律制にするしかありません。いまのバラバラ最賃では、大企業は最賃の安い地域に仕事を流していくからです。中小企業の方々も本当は時給千円以上の最賃を実現したいと思っているんですけれども、自分のところだけ引き上げられると最賃の安い地域に仕事を奪われてしまうから賛同できないんですね。“日本全国どこでも最賃は時給千円以上”を実現すれば、大企業もこれを保障する下請け単価にせざるを得ません。
アメリカでは07年2月、800社(多くが中小企業)の社長や重役が「労働者の購買力を高め、地域経済を押し上げる」などとして最賃引き上げを支持する声明文に署名しました。同国の最賃は全国一律ですから経営者も賛同できるんだと思います。しかも連邦最賃制の上に各州ごとにさらに最賃を上積みしています。そういう意味では中小企業の経営者と労働組合の皆さんがいっしょに最賃引き上げの運動を進めていくためにもこの制度要求を掲げることが私は大事だと思います。
最後に、大阪労連が取り組んでいる「働くルール署名」が労働者の実態をふまえた切実な要求を掲げているだけではなく、ILOやEUなどの「働くルール」から照らしても、国際的な基準をふまえた要求になっているということを申し上げて、私からの報告といたします。ありがとうございました。(おわり)
第80回大阪メーデー なくせ失業と貧困 働くルール確立せよ!!
2009/05/14
集会最後の団結ガンバローで拳を突き上げるなかま(5月1日、大阪市北区で)
働く者の団結で生活と権利を守り、平和と民主主義、中立の日本をめざそう――
5月1日、五月晴れの扇町公園(大阪市北区)で開かれた「第80回大阪メーデー」には各地域メーデー(府下15か所)と合わせて1万人が参加し、くらしを守り政治を変える総決起の場として大きく成功させました。
憲法をくらしに活かし、アメリカ・大企業いいなり政治からの脱却を
大阪労連の川辺議長(同メーデー実行委員長)は主催者あいさつで、大阪府の木村副知事が「公務員組織は民間と違い、職員を強制的に辞めさせることはできない」と発言(4月14日、戦略本部会議)したことを紹介し、「民間企業は解雇が自由であると言わんばかりの悪質な暴言だ。大阪労連はただちに抗議を行い、発言の撤回と謝罪、一方的解雇が違法であることの周知徹底を求めてきた」と報告しました。
そして「大阪ではこの間、、タイガー魔法瓶の偽装請負を告発して報復解雇された派遣労働者が勝利和解、さらに全国一般・協和メインテナンス岸貝労組が府労委闘争で勝利(=岸和田市貝塚市清掃施設組合の使用者性を認定し、直接雇用に関する団交の応諾、謝罪文手交を同施設組合に命令)し、全国のたたかいに大きな影響を与えている。この成果のうえに立って労働者派遣法改正、解雇規制強化のたたかいをいっそう進めていかなくてはならない」と強調しました。
続く連帯あいさつでは日本共産党の吉井英勝衆院議員が「いまこそ憲法9条を、そして25条の生存権も27条の労働権もきちんと守り、憲法をくらしに活かしていくときだ。アメリカいいなり、大企業の利益第一主義で行き詰まった麻生内閣の誤った政治を、大本から正していくことが今度の総選挙にかかっている最大の課題。全力を尽くしてたたかいぬく」と決意を表明しました。
集会が終わるとなかまはデモ行進に出発し、「消費税増税反対!」と声を張り上げました。
労働問題研究家・筒井晴彦氏 講演B
2009/05/05
貧困と格差なくすため人間らしい労働の実現を
連載B 日本と世界の最低賃金(上)
異常に低い日本の最低賃金
この経済危機のもとでは、労働者を保護するうえで最低賃金が極めて重要な役割を担っています。3月に行われたG8労働相会合の議長総括でも、雇用対策とあわせて適切な最低賃金設定の必要性を強調しています。
世界では全国一律最賃制が当たり前になっています。地域別最賃制の国はILOの調査によるとわずか9か国です。その特徴は国土の広い発展途上国が多いということです。たとえば中国は面積が日本の25・4倍、インドネシアは5倍ありますが、地域別最賃の数は日本の47に対して中国が39、インドネシアは30です。カナダとメキシコはOECD(経済協力開発機構)に加盟している先進国ですが、両国とも連邦国家なので州政府が最賃を決めています。それでも地域別最賃の数はカナダが12、メキシコは3つですから、日本のような国土の狭い先進国が47種類ものバラバラの最賃をもっているのは異常だと思います。
最賃は月額で定めるべき
ヨーロッパの多くの国の最賃額は平均賃金の5割近くですが、日本は28%しかありません。ここからも日本の最賃が非常に低いということがわかると思います。ヨーロッパでは「平均賃金の6割以下しかもらっていない人は低賃金である」と定義しています。それから「平均所得の5割以下しかない人は貧困である」とも定義しています。このように定義がはっきりしていると、政策的な目標もはっきりしてきます。ヨーロッパは「当面、最低賃金は平均的な賃金の5割をめざす」ということを目標に掲げ、その先に「6割をめざす」ということを掲げています。
それから私がぜひここで強調したいのは、最賃額の表示方式です。月額表示をしている国が圧倒的多数なんですね。なぜ月額が大事なのかというと、たとえば大型連休のある月ではパートの人たち、時間給で働いている人たちは給料が減りますから、そういうことがないようにするためにも最賃を時間額だけではなく月額で定めることが大事だと思います。残念ながら日本は時間額しか定めていませんから、月額の重要性を念頭においた制度改善が必要だと思います。
家族のために必要な金額を
世界では最低賃金をどういう基準で定めているのでしょう。ILOの報告書によると、調査対象の6割を超える国が「労働者とその家族の必要」そして「生計費」、この2つのいずれか、あるいは両方で決めています。
私が強調したいのは、この「労働者とその家族の必要」という基準がいま非常に重要になっているということです。それはシングルマザーが増えているからです。シングルマザーは、もう本当に身を粉にして、自分の命を削って子どもたちの生活を支えています。ですから労働者本人だけではなく「家族を支えるために必要な金額」は、いまシングルマザーが増えている中で重要な最賃の決定基準だと思います。それが世界では当たり前になっているんですね。
日本も一応「生計費」は掲げています。けれども異常なのは「企業の支払能力」を基準に決めていることなんです。先進国では日本だけです。この「企業の支払能力」が最も強い影響力をもって最賃引き上げを抑制してきたんですね。最賃を改善していくためにもこのあたりは考慮する必要があると思います。(つづく)