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2020年05月の記事
本流逆流(5月25日付コラムより)
2020/05/25
今国会での検察庁法改正が世論の猛反対を受けて見送られ、5月20日には黒川弘務東京高検検事長の賭けマージャンが表沙汰に。「官邸の用心棒」を検察トップに据えようという安倍首相の企ては頓挫した形だが、時の政権による検察人事への介入という重大な問題を黒川氏の辞任だけで終わらせるわけにはいかない。
1月末、安倍内閣は法改正の手続きを経ずに閣議決定のみで黒川氏の定年延長を決定した。検察官は必要であれば首相ですら逮捕できる強大な権力を持つ。その責任の特殊性、重大性から国家公務員法とは別に検察庁法という特別法が定められている。
検察官の定年は検察庁法で定められており、一般法である国家公務員法の定年延長は適用されない、という法解釈が長年維持されてきた。そのことを野党から追及された安倍首相は国会答弁で「従来の解釈を変更することにした」と言い放った。検察庁法改正に反対する大物検察OB14人が法務省に提出した意見書は、「フランスの絶対王政を確立し君臨したルイ14世の言葉として伝えられる『朕(ちん)は国家である』との中世の亡霊のような言葉を彷彿とさせる」と安倍氏の答弁を指弾している。
「永続敗戦論」などの著書で知られる政治学者・白井聡氏は「日本はひょっとすると近代国家じゃないのかもしれない…近代国家じゃない国家というのはどんな国家でしょう。例えば日本でいえば江戸時代、領地や領民は殿さまの持ち物だったわけです」「結局、安倍晋三さんのような人は、日本の国土も国民も自分の所有物だと思っているふしがある」と分析している(2017年5月13日、豊中市での講演)。
安倍氏がマイナンバーの普及に躍起なのも、国家私物化のためのツールと考えれば腑に落ちる。年貢を効率よく召し上げ、“次の対テロ戦争で米軍に差し出すのはコイツ”などと自分が使いやすいように国民の背中に番号札をペタペタ貼りつけるわけだ。まさしく安倍氏の「マイ」ナンバーである。
本流逆流(5月15日付コラムより)
2020/05/15
安倍政権がパンデミックのどさくさに紛れて検察庁法を改悪し、「官邸の用心棒」とも噂される黒川弘務・東京高検検事長を検察トップに据えようとしている。医療崩壊の危機が迫り、余儀なく廃業を選ぶ商店主、職を失い今日の飯にも事欠く労働者もいる中で、いったい何をやっているのか。
本来なら黒川氏は2月8日の誕生日で63歳の定年を迎え、退官するはずだった。しかし政府はその1週間前、1月31日に黒川氏の定年延長を閣議決定した。延長に関する法解釈を唐突に、口頭決裁で変更するという前代未聞の暴挙だった。それを合法化するのが法改正の狙いだ。東京高検検事長は検事総長の待機ポストと位置付けられており、8月に検事総長人事が控えている。
黒川氏は昨年1月までの計6年余、法務省官房長として3年10か月、事務次官として2年4か月、安倍政権を支えてきた。その間に起こった小渕優子元経産相の政治資金規正法違反・証拠隠滅、松島みどり元法相の公職選挙法違反、甘利明元経済再生担当相によるUR都市再生機構への口利き疑惑、下村博文元文科相の加計学園パーティー券200万円不記載、森友問題で佐川宣寿元国税庁長官以下37名が手を染めた公文書改ざん、これらはすべて不起訴となった。
「火事場泥棒」との批判を浴びながらも政府・与党がなりふり構わず突き進むのは、検察まで支配しなければ安倍首相と周辺の人間が逮捕されるという危機感の表れではないか。森友・加計問題、桜を見る会の捜査をあきらめきれない検察官も多かろう。
罪を犯した権力者を捕らえ、裁くことができなければ近代国家とはいえない。この国が人治主義、縁故主義で腐っていくのを黙って見過ごすわけにはいかない。SNSでの発信や、地元与党議員への抗議・要請など手を尽くしたい。
コロナ禍でも工夫し声あげよう
2020/05/15
主権者国民欺くな
新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言が出される中、規模を大幅に縮小しての「第91回大阪メーデー宣言集会」が国労大阪会館(大阪市北区)で開かれ、大阪労連加盟の各単産・地域から代表が参加しました。
実行委員長の菅(かん)義人・大阪労連議長が主催者あいさつ。今回のメーデー集会について「大幅な変更と縮小を余儀なくされたがメーデーの意義に変わりはなく、自粛要請の中でも切実な要求はハッキリと主張し、たたかうメーデーの歴史と伝統を中断させず、引き継いで発展させることが必要」との考えを示しました。
また社会の状況について「『緊急事態宣言』が出されて1か月、感染者は増え続け、医療機関の努力も限界だ。外出自粛、休校や休業要請の一方でくらしと営業の補償は行き届かず、先行きが見えない」と指摘。また保健所の大幅削減や、住吉市民病院の廃止、府立病院の予算削減など医療機関が徹底したリストラ対象にされてきたとして、「今日(こんにち)の大阪の医療危機を作り出したのはほかならぬ維新政治」と厳しく批判しました。
さらに、「大企業の内部留保が449兆円を超える中、労働者の格差と貧困が依然として拡大している。コロナ禍の真っただ中のいまだからこそ、大企業は労働者の賃上げと雇用の安定、中小企業支援に内部留保の一部を具体的に活用し、社会的責任を果たすべき」と訴えました。
最後に「私たちは、たたかうメーデーの歴史と伝統を引き継ぎ、誰もが8時間働けば人間らしく暮らせる職場と平和な社会をめざす」「主権者国民を欺(あざむ)き国家を私物化する安倍政権を打ち倒し、安倍政権と一体となって悪政をすすめる維新政治を打ち破るために、労働組合のたたかいや市民運動を強め、共同を拡げよう」と呼びかけました。
雇用・営業を守れ
コロナ感染拡大防止の最前線でたたかっている大阪医労連の前原嘉人書記長からの決意表明に続き、メーデー実行委員会事務局長の嘉満智子・大阪労連事務局長が行動提起。
最後に、「新型コロナウイルス感染の拡大を防ぎ、労働者の雇用と国民のくらしと事業者の経営、そして経済を守る政治の役割発揮を強く求めましょう」などとする第91回大阪メーデー宣言案を満場の拍手で採択。副実行委員長の有田洋明・大阪自治労連委員長からの閉会あいさつと団結ガンバローで集会は幕を閉じました。
また、集会後に大阪市内を宣伝カーで「いのち・くらし・雇用・営業を守れ、誰もが8時間働けば人間らしく暮らせる職場と平和な社会をめざそう」と呼びかけました。
本流逆流(5月5日付コラムより)
2020/05/07
小池百合子・東京都知事がゴールデンウィークを含む12日間を「死活的に重要な期間」「ステイホーム(家にいよう)週間」として、スーパーでの買い物を3日に1回程度に減らすよう呼びかけた。「ステイホーム」という言葉は米国の外出禁止令「Stay at home order」からきているものと思われる。
その米国では黒人の感染率・致死率が他人種に比べて高く、シカゴでは人口比3割の黒人が感染死の7割超を占めるという。背景に人種間の経済格差、貧困問題がある。
日本のような国民皆保険制度がなく、普段から適切な医療が受けられない、食生活もジャンクフード中心となると、重篤化の要因となる糖尿病や高血圧など基礎疾患が必然的に多くなる。さらには経済格差が学歴の差となり、黒人は感染リスクの高い対面サービス業で働く人の割合が高い。
日本に話を戻す。「一致団結してウイルスに立ち向かおう」との声を聞かぬ日はないが、実態はこうだ。「すでに2週間ほど派遣社員だけが出勤しています。テレワークの社員に会社にいないとできない仕事をメールで指示され時間が過ぎていきます。都内に毎日出勤は怖いし、悲しいです」(ツイッター、@prin738)。
こんな書き込みもあった。「選民思想なのかなと思う。特にロスジェネ世代。俺たちは入社試験勝ち抜いてんだ。同じ職場にいても違うんだよ!差別化しないと気がすまない」「会社もここで差別化することで、正社員の士気をあげ、他の問題から目を逸らさせることができる」「穢多非人を作った徳川幕府のよう」(@15_2_28、原文ママ)。
「一致団結」の必要性に異論はない。ただし、それは生存権が等しく保障された者同士の団結でなければ、屍の山を築いた戦前の全体主義と変わらない。一人たりともブラック国家を守るための「英霊」にしてはならない。