HOME < ハンドルおおさか
ハンドルおおさか
ハイヤー・タクシー・観光バス労働者の新聞
月別バックナンバー
2011年06月の記事
「原発問題を考える」学習講演会
2011/06/27
「原発問題学習講演会」に集まった380人の人々(6月17日、住吉公園体育館で)
民主主義欠落が招いた原発事故
日本科学者会議・岩本智之氏が政府・電力会社・御用学者を斬る
発生から100日以上が経過した現在もなお、収束の見通しが立たない福島第一原発事故。この問題について考える学習講演会(実行委員会主催)が6月17日に住之江区内で開かれ、日本科学者会議の岩本智之氏が講演しました。一部を抜粋して紹介します。
電力会社の民主化図れ
福島第一原発の3キロ以内は一時帰宅さえも禁じられていますが、この中では数千人の技術者・労働者が、大変な苦難の中で事故の拡大を防ごうと、必死に努力しています。放射線の危険もさることながら、防護服に身を包んで、湿度の高い中で作業されておりますから、多くの人が熱中症で倒れています。
日本の原発で働いている技術者は非常に優秀です。でも、その優秀な人たちを組織的にちゃんと動かすようなシステムになっていないのが問題ですね。
もうひとつの問題は電力会社の職場に民主主義がないんです。モノが言えませんし、労働者同士がいがみあう、対立するような職場になっているんです。聞いた話ですけどね、関西電力では正社員の御用組合が“危険な作業を外注化せよ”というんです。労働者の連帯という意味では“なんかいな!?”という気がしますが、そういう職場では、優秀な技術者でも技倆(ぎりょう)を発揮することができません。
米国には知らせたのに
東京電力が原発安定に向けた「工程表」を発表していますが、しょっちゅう内容が入れ替わっています。これを書いた本人も自信がないのかもしれません。新聞にこんな川柳がありました。『見直しと 書いて読み方 先送り』というんですね。
こういう事態が起こりますと、政府や東電、報道機関に求められることは3つあります。「隠すな、ウソは言うな、過小評価するな」ですが、実際にはその3原則から外れまして、「隠す、ぼかす、遅らせる」。メルトダウンが起こっているのに日本国民には知らされませんでした。ところがアメリカには現場の技術的な情報を送っていたようですね。だからアメリカは日本在住の同国民に80キロ以上離れるよう警告しましたし、空母『ジョージ・ワシントン』は「トモダチ作戦」が終わると、怖いからということで、母港の横須賀を通り越して佐世保へ行ってしまいました。
内部被曝を軽視するな
報道で御用学者が「この放射線量では直ちに健康に影響はない」とよく言っていますね。あれが一番悩ましいです。たしかに20ミリシーベルトというのは、やけどしたり髪の毛が抜けたり下痢したりということにはなりません。しかし20年も30年も経ってからガンになるとか遺伝的な影響が現れる“晩発性”について、この量は決して無視できないわけです。放射性物質を鼻や口から体内に取り込んでしまって、体内から放射線が当たってしまう内部被曝についての警戒もしないといけません。
新聞の川柳にすごいのがありまして、日本の川柳史上でも最高傑作ではないかと思うんですが、『節電は御用学者が 出たら切る』──テレビでね、毎日毎日東大の先生が出てきて解説しますけど、あの人らが話したら余計にわからなくなりますね。政府も電力会社も節電、節電と国民にばかり負担を押しつけていますが、御用学者が出てきたらテレビを切ってしまう、そうすると節電になるやろう、という皮肉です。
原発に国費年間5千億
私は7年ほど前、自宅に「いわもと発電所」というのを作りまして、屋根の上に合計34枚の太陽光パネルを設置しました。これはあくまでも実験のためにやっているんですが、240万円の自己負担で作りました。発電所を経営して改めて思ったのですが、電気は作った瞬間にすぐ売れるんです。我が家には受電と送電、メーターが2つあります。
大体売れるのは年間20万円ぐらいで、関電から振り込んできます。元をとるまで12年かかるんですね。当初は1キロワット/時あたり23円、いま余剰電力だけは46円になっています。それがドイツでは州によって違いますが、法律によって80円で買うことになっているんです。5〜6年で元がとれるんですね。そうすると環境問題に意識がない人でも太陽光パネルを導入するわけです。だからドイツではあんな大きなデモが起こって、“原子力やめてしまえ”という世論が起こりやすいんです。
安全な再生可能エネルギーをもっと開発して、国民も発電に参画できるようにしなければならないと思います。原子力に関して国費が年間5千億円入れられていますが、再生可能エネルギーについてはその100分の1以下です。そういう政策そのものを変えていく運動をしていかなければなりません。
太陽光や風力は不安定だといいますが、それはたくさん作ればいいわけです。昼間に電気を起こして、夜はバッテリーに蓄電した分を使う、あるいは火力発電で補う、ということでやっていけば原子力がなくても日本のエネルギーはまかなえるはずです。そしてエネルギーを使いすぎるような社会のシステムもみんなで変えていく必要があると思います。
君が代強制条例案の撤回求める緊急府民集会
2011/06/15
「ゆとり・自由という2つの大切な宝物が、日の丸・君が代を軸にした強制・抑圧の教育行政に奪われてきた」と話す三上氏(6月1日)
学校をもっとやさしく温かく 人間への信頼に満ちた場所に
偽りの追い風を“教基法”改悪に
元・中学校教諭の三上氏は東京都文京区と葛飾区の公立中学で非行対策などの教育実践を積み重ね、テレビドラマ「3年B組金八先生」のモデルの一人にもなりました。以下、講演の一部を抜粋して紹介します。
「安倍晋三氏が首相在任時、教育改革推進の世論を作り上げようとして、まっさきに行なったのは日本の教師を悪(あ)しざまに罵(ののし)ることでした。“指導力不足の例は枚挙に暇(いとま)がない、セクハラ教師はいざ知らず、問題教師が次から次へと出てくる”こんな言い方で、あの『美しい国へ』という本の中で悪しざまに罵った、そのことによって作られる偽(いつわ)りの追い風を、教育基本法改悪のエネルギーにしたわけです」
「その頃、私はある統計を見ました。それは、教師に対する信頼感についての調査でした。結果は“現在学校に通っている児童の親”が教師に寄せる信頼が非常に高いということをはっきり示していました。逆に、“在学中の児童がいない世帯”からの信頼感が低かった。それは不信感というものが、煽(あお)られ作られたものだったからだろうと思うんです」
強要、陰険な監視教育の悪化を招く
「教育の現場では校長も含め、教職員集団が信頼関係で結ばれ、協力して教育活動にあたることが何よりも大切。学校が人間への信頼に満ちた場所でなければ、子どもたちに人間への信頼、人間として生きる喜びを育(はぐく)むことはできない」
「日の丸・君が代の強要、その実施の陰険な監視、処分の脅迫・実行は、個人の思想・良心の自由を侵すのみならず、教育の場に最も大切な人間関係の温かい雰囲気を壊し、校長・管理職と教職員との間に対立関係を持ち込んだ最悪の行為だと思います。学校は、もっと優しく、柔らかく、温かいものでなくてはなりません。多様な考えを寛容に重ね合わせられる学校こそ、子どもたちが人間として成長できる学校です」
「お互いに価値観が違ってもそれを主張しあい、聞きあい、許しあう中でみんなが折り合いをつけて、活力があり調和のとれた社会をつくっていく、それが民主主義だと思うわけです」
戦前に戻る大問題 権力が国民に介入
「権力が国民の心の中に介入して、腕ずくで足なみを揃えさせる、このことがいかに犯罪的で非民主的なことか、私たちは肝に銘じて知らなければなりません。一連の動きは、戦前の日本が忠君愛国≠ナ日の丸・君が代や国定教科書を使ってやろうとしたことと軌を一(いつ)にしています」
「民主主義の根幹を揺るがす問題として、大きな世論の拡がりの中で、必ず条例案を押し返してほしい。私もこのたたかいを全国に拡げていかなければならないと思っています」
日本機関紙協会大阪府本部 第63回定期総会
2011/06/15
劣化ウラン弾被害の実態について報告する西谷文和氏(6月3日、福島区内で)
原発も戦争も利権のかたまり
原発推進のカラクリ・総括原価方式にメスを入れろ
日本機関紙協会大阪府本部(西岡健二理事長)は6月3日、第63回定期総会を大阪機関紙会館(大阪市福島区)で開き、「東日本大震災の救援・復興を機関紙活動で広めよう」などとする新年度運動方針を決定。フリージャーナリスト・西谷文和氏が記念講演を行いました。
記念講演のテーマは「劣化ウラン弾による被曝の実態」。西谷氏はイラクやアフガニスタンに何度も赴き、現地で撮りためた映像や写真を各地で紹介、テレビのニュース番組でも戦争の残虐な実態をリポートしてきました。
劣化ウランとは、天然ウランを原発燃料用に濃縮する際に発生する低濃度ウランです。比重が鉄の2.5倍あることから、対戦車用弾丸の貫通力を強めるため弾頭に劣化ウランを用いたものが「劣化ウラン弾」です。
アフガニスタンの病院で入手したという、異常分娩で生まれてきた赤ちゃんの写真を西谷氏がプロジェクタ画面に映し出すと、参加者は息をのみました。生まれつき眼球がない、心臓が体内から飛び出ている、異様な大きさの腫瘍など、どれも見るに堪えないものばかり。劣化ウラン弾が使用された戦場で、母親が放射性物質を肺や胃に取り込んでしまった(内部被曝)ために起きている現実です。西谷氏は「(福島第一原発事故で)御用学者が安全を主張しているのは、すべて外部被曝のこと。放射性物質が体内に入るとガンになるまで5年かかる。ただちに影響はない≠ッれどもガン患者や異常分娩が増える可能性が高い。私たちはもっと関心を持って原発を止めさせないといけない」と警鐘を鳴らしました。
さらに西谷氏は、2008年に星野仙一氏が出演した関西電力のCM動画を紹介したうえで「関電が独占事業なのにCMを制作するのは電気料金が『総括原価方式※』で決まるから。CMをバンバン流しても関電は電気料金で取り戻せる」「テレビ局はこのCMがおいしいので関電や東電の悪口は一切言えなくなり、原発神話が作られていく」と指摘。
※電気料金収入=発送電・電力販売に関わる全ての費用+報酬(電気事業に投下した資産の3.5%)
同氏は続けて「原発を1兆円かけて造れば350億円が電力会社に入る。これが建設費1千億では35億しか入らない。巨額を投じて造れば造るほど儲かるこの仕組みを是正すべき」「戦争も原発も利権の塊(かたまり)だ。どちらも巨額のカネが動き、テレビも新聞も絶対に批判しないから人々は騙されていく」と強調し、私たちの教宣活動強化を呼びかけました。
全国一律・誰でも時給1000円以上に!大阪労連・最低賃金学習会
2011/06/07
最低賃金額での生活体験について報告する地域労組おおさかの組合員(5月30日)
最賃大幅引き上げで生存権守れ
「全国一律・誰でも時給1000円以上の最低賃金」の早期実現をめざす大阪労連は5月30日、最低賃金についての学習会を大阪市北区の国労会館で開き、66人が参加。全労連調査局長の伊藤圭一氏が講義を行なったほか、4月に「最低賃金生活体験」に取り組んだなかまが、結果・感想を報告しました。
ストレスがたまる最賃体験
4月の1か月間を最低賃金(大阪府=時給779円)の金額で生活することで、最賃の低さを実証する「最賃生活体験」に今年は8人がチャレンジ。学習会では地域労組おおさかのなかまと、生協労連のなかまが報告を行いました。
地域労組おおさかのなかまは、「住居費を払うと残りは6万7千ぐらいで非常にストレスがたまる生活だった。飲酒・喫煙量を減らすのはもちろんのこと、交際ができない。特に冠婚葬祭は祝儀や香典を捻出できないので絶対無理。季節に合った服も買えない。ユニクロに行っても高い≠ニ思ってしまう。先々の健康に不安を感じながら非文化的で最低な1か月だった」と振り返りました。
また、生協労連のなかまは「毎日、これを買うとあといくら残るのかということばかり考えた。友達からお茶に誘われても断ってばかりいて、本当にギスギスした気持ちで過ごした。最賃は早急に1000円以上に引き上げなければいけないし、医療や年金、生活保護など社会保障の問題や、税金の問題などいろんなことを考えさせられる体験だった」と話しました。
貧困状態の人こそお金必要
続けて講義を行なった全労連の伊藤調査局長は冒頭、自身が「最賃生活体験」に取り組んだり、派遣切りに遭った労働者と関わる中で発見したこととして、「各地を転々として財産をほとんど持たずに暮らしていた人が寮を追い出されたり、あるいは今回の震災のように着の身着のままで避難している人は、物持ちよりもお金がかかる。私が最賃体験に取り組んだ時は下着を買う必要もなかったが、ゼロスタートの人は日々、物を買わなければならない」「今回の体験を最賃引き上げ『意見書』に活かしてほしい」と話しました。
本題に入ると、伊藤氏は私たちの最賃闘争についてその「成果」、「どうすればみんなのものにできるか」、「震災に関わって今年はどのように取り組むのか」について講義を行いました。要旨は連載記事で紹介します。
学習会では当面の行動提起も行われ、大阪労働局・地方最賃審、厚労大臣・中央最賃審に向けた署名の取り組み(第1次集約=7月15日、第2次=7月29日)や、大阪労働局交渉(6月21日)などについて確認しました。
大阪維新の会が君が代押しつけ条例案提出
2011/06/07
「民主主義を破壊する君が代起立条例反対!」と横断幕でアピールするなかま(5月27日、大阪府庁前で)
悪しき歴史繰り返すな
強制された教育は危険
大阪府・橋下徹知事が率いる「大阪維新の会」は5月25日、学校での儀式の際に「君が代」の起立斉唱を教職員に義務づける条例案を府議会に提出。大阪労連など労働・法律・教育関係7団体は共同アピールを発表するとともに、府議会本会議が開かれた27日には府庁前で80人が宣伝行動に取り組みました。
「維新の会」が提出した条例案の名称は、「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例」。「府立学校及び府内の市町村立学校における服務規律の厳格化を図る」としています。可決されれば「日の丸」「君が代」を義務付ける条例は全国初となります。
「日の丸」「君が代」をめぐる動きとしては、東京都教育委員会が03年に通達で卒業式・入学式での「国旗掲揚」「国歌斉唱」を義務付けて以来、「思想・良心の自由」を貫いた教職員に対する不当な処分が繰り返されてきました。
最高裁の補足意見に真意を見いだすべき
5月30日には最高裁が、国歌の起立斉唱の職務命令を「合憲」とする初めての判断を示しています。同31日付の読売新聞社説は「妥当な判断である」と評価し、「この判決を機に、教育現場で長く続いている国旗・国歌を巡る処分や訴訟などの混乱に終止符を打つべきだ」と論じていますが、そもそも教育現場に国旗掲揚・国歌斉唱が持ち込まれなければ、混乱など生じてなかったはずです。
また、同社説は「自国、他国の国旗・国歌に敬意を表すのは国際的な常識、マナーである」と断じていますが、抵抗する教職員を処分でねじ伏せてまで指導すべきものなのでしょうか。
国旗・国歌は、先の大戦で生徒を戦地に送り死なせてしまった、との自責の念を持つ少なくない教師たちの思いが背景にあります。学校で環境が整わない段階で、強権的に推し進めていくことが、生徒にとっても本当に有益なことなのでしょうか、強制された教育の行方≠ニいうものを国民全体で考えなくてはならない問題です。
石原氏も橋下氏も財界と一体で大型開発を推進する一方で、都民・府民のくらし・福祉を破壊してきました。両知事が国旗・国歌の押しつけにこだわるのは、教育をお上に逆らわない∞国・自治体の施策であれば人権が侵害されても文句を言わない$lづくりに変質させることが狙いにあるとしか思えません。
最高裁の初判断に伴い3人が補足意見を出しています。千葉勝美裁判官は「国旗・国歌は国民が心から敬愛するものであってこそ、その本来の意義にそうものとなる。国旗・国歌が強制的にではなく、自発的な敬愛の対象となるような環境を整えることが何よりも重要である」と述べています。
この判事の補足意見にこそ問題の真意があるのではないでしょうか。