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ハイヤー・タクシー・観光バス労働者の新聞
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2010年12月の記事
第9回役員セミナー 浜林正夫氏(一橋大学名誉教授)講演 最終回
2010/12/15
労働組合?何のため、誰のため
─労働組合の社会的責任を考える─
最終回 労働組合の社会的責任
お情け≠ナはなく自分の問題として
「企業の社会的責任」がしきりに言われるようになってきました。「社会的責任」の中心は、労働者の雇用を確保する、ということです。国連も「グローバル・コンパクト」を出して、「団結権・団体交渉権を実効あるものにする」「雇用と職業の差別禁止」など9項目を企業の社会的責任として求めています。
日本では経団連が04年に「企業行動憲章」というものを出しましたが、これが企業の社会的責任なのか≠ニ思うようなレベルの低さです。つまり、企業は悪いことをしませんよ≠ニ言ってるだけで、労働者の権利に対する責任には触れずに「従業員の人格・個性の尊重」という程度です。こんなものは企業の社会的責任としては恥ずかしくて世界に顔向けできません。同憲章は「反社会的団体との対決」も掲げていますが、それはつまり、いままでは反社会的団体とのつきあいがあった、ということでしょうか(笑)。そういう団体とは縁を切りましょう≠ンたいなレベルの話になっているんです。だから、企業の社会的責任は今後も引き続いて追求しなければいけないと思っています。
最低賃金引き上げが重要
最後に私は、労働組合にも社会的責任があるということを言っておきたいと思います。
労働組合は組合員の生活と権利を守ることは基本ですけれども、しかし、同じ職場の非組合員や、あるいは非正規労働者の生活や権利が圧迫されるのを黙って見ているだけでいいのか、という問題です。つまり、あんな簡単に派遣が首を切られるとね、それで年末になると「派遣村」ができるような状況を、正規労働者の組合は黙って見ていていいのだろうかという問題だと思います。
それは決して立場の弱い人を助けてやろう≠ニいうお情けではないんです。日本の低賃金構造を支えているのは派遣労働者や中小・下請の低賃金労働者であり、彼らの賃金を底上げしないと、低賃金構造は改まりません。そういう貧しい人が放置されていることが、日本の労働者の全体の水準を下げているんです。これは他人事ではなく、自分たちのためにも取り組むべき問題だと思います。
その点では最低賃金の引き上げが非常に重要だと思います。最賃は全国一律ではなくて都道府県別ですし、その額も非常に低いんですね、時間額700円ぐらい。せめて1000円にしろという運動がいまようやく始まってきたところです。
歪んだ経済の立て直しを
雇用の確保、最賃引き上げは決して労働者のエゴイズムではなくて、歪んでしまった日本の経済を立て直すという目的も含んでいます。雇用が確保され最低賃金が上がれば国内需要が増えるわけで、つまりそれは輸出主導型の日本経済を内需主導型の経済に戻すということです。
いまそういう方向を目指さないといけないのであってね、菅直人さんみたいにお金をばらまくようなことではなくて、労働者の雇用を守り、最低賃金を上げていくということが基本でなければいけない。これが日本経済を立て直す一番の基本だと私は思います。
そのためには労働組合だけではなく、やはり国民多数の支持が得られるような運動を展開していくべきだろうと、それが労働組合の社会的責任だろうと考えているところです。(おわり)
JMIU・ダイキン工業・大私教・近大泉州学園争議支援合同統一行動
2010/12/15
「労働者をモノ扱いするな!」と声を張りあげるなかま(12月2日)
労働者モノ扱いする悪質企業に徹底抗議
JMIUダイキン工業、大私教近大泉州学園の両闘争勝利に向けた合同統一行動が12月2日、大阪市北区で行われ130人が参加。両闘争の原告が決意表明し、支援を訴えました。大阪地連のなかまもデモで「労働者を使い捨てにするな!」と声を上げました。
ダイキン工業は203人もの「有期間社員」を8月末で雇い止めにし、別の200人を新たに雇い入れました。雇い止めにされた「有期間社員」は、07年12月に同社が大阪労働局から「偽装請負」の是正指導を受けたことから、直接雇用に切り替えられた人々です。本来なら正社員として雇用されるべきなのに「ダイキンを辞めるか、有期で働くか」の二者択一を迫られ、やむなく有期を選択しました。ダイキンがこのような首のすげ替えを強行したのは、雇用を継続すると「期限の定めのない労働者」となり、身勝手な解雇ができなるからです。
近大泉州学園は08年3月、経営難を理由に専任教員7人を一方的に解雇し、話し合いも拒否。経費削減のための人員入れ替えとして新たに教員を雇い入れました。昨年12月に大阪地裁堺支部は学園側の主張を鵜呑みにし「整理解雇4要件」を無視する不当判決を下しました。行動当日の控訴審では同学園・佐々木理事長が証人として出廷しています。
両闘争とも労働者の権利を無視し、モノ扱いする悪質企業・法人とのたたかいであり、大阪地連も引き続き支援に奮闘します。
大阪交運共闘が第20回定期総会開く
2010/12/15
規制強化の流れを交通運輸全分野に
大阪交通運輸労働組合共闘会議(大阪交運共闘)は12月4日、第20回定期総会を国労大阪会館(大阪市北区)で開き、2011年度の活動方針などを決定。役員改選(任期1年)も行われ、山本和義議長(建交労大阪府本部)をはじめとする新役員体制を確立しました。
日航ニアミス事故
最高裁「判断」は間違っている
八剱(やつるぎ)議長(国労大阪地本)はあいさつで、「日航ニアミス事故(01年)について最高裁は10月26日、管制官2人に有罪判決を下した。国際民間航空条約では事故調査の唯一の目的は将来の事故防止であり、罪や責任を科すことではない≠ニされている。事故の責任を個人に負わせた今回の判断は航空だけの問題ではなく、交運労働者全体の問題として運動を展開しなければならない」と強調。さらにタクシーやトラックの規制強化に向けた動きも紹介し、「この流れをすべての交通・運輸分野に拡げることが重要」として、宣伝行動や行政に対する取り組みの強化を呼びかけました。
議案の提案を行なった芦崎事務局長(建交労大阪府本部)は、「世界的長期不況により、各産業とも運送収入の減少と燃料費高止まりの圧迫から、賃下げ合理化で危機を乗り越えようとする資本からの攻撃が激しくなっている。そして倒産による雇用喪失も多発している」と指摘し、「労働者が団結してたたかわなければ犠牲をすべて押しつけられてしまう。労働組合の役割がいまほど重要なときはない」と強調しました。
討論では6つの産別・団体が発言し、自交総連大阪地連からは山本副委員長がタクシー・観光バスの運動の到達点について報告。役員改選で同地連からは、庭和田書記長が事務局長に、松下書記次長が幹事に選出されました。
全議案が満場の拍手で採択された後、関西大学・安部誠治教授が「安全・安心な交通運輸をめざして」と題して記念講演を行いました。
総会終了後には同会議の結成20周年を祝うレセプションが開かれました。
第9回役員セミナー 浜林正夫氏(一橋大学名誉教授)講演 連載C
2010/12/06
労働組合?何のため、誰のため
─労働組合の社会的責任を考える─
連載C 続・国際比較から学ぶ
「文化」とは「くらしのゆとり」
時短闘争に取り組むべき
雇用とならんで労働時間の問題も大事です。日本には残業時間の上限規制がありません。つまり、極端にいえば何時間残業させてもかまわない、ということですね。したがって労働時間の上限もありません。法定労働時間は週40時間とされていますが、それ以上働かせても割増賃金を払っていれば違法にはならないシステムになっていて、これは非常に問題があると思います。ドイツも残業時間の上限規制はありませんが、労働時間の上限は1日8時間です。
EUの労働時間指令(93年)では、24時間につき最低でも連続11時間の休息期間を求めています。裏返せば1日の労働時間の上限は13時間ということになります。そして1週間の労働時間については時間外労働を含め、平均48時間を越えないことを求めています(算定期間は4か月以内)。つまり、残業を含めた1週間の上限が決まっていますから、ある日に残業すれば別の日に早引きできる、というシステムです。
日本は労使ともに、賃金の話には敏感であっても労働時間についてはルーズだと思います。依然として残業が多いですね。「課長が居残りしてるから、帰るわけにはいかない」なんてね。私は労働時間を厳正にしていくことが大事だと思います。
労働時間の問題は、雇用の問題にもつながっています。労働者の働く時間のトータルが減れば、会社は減った分を補わなければなりませんから、雇用の拡大にもなる、という関係です。ここがいま一番のポイントではないかと思います。時短→雇用拡大→経済も回復、という方向へ日本の労働者の問題は考えなければならないと思うんです。
憲法第25条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあります。たいていの人が見逃しているのは「文化的」という点です。「健康で」というのはわかりますよね。「文化的な生活」とはどんな生活でしょうか。
私は「文化」とは「くらしのゆとり」だと思うんです。労働者には休む時間、遊ぶ時間、勉強する時間、そういうものが保障されなければいけない、賃金だけではないんだぞ、ということです。とにかく働くことで精一杯で、ヘトヘトになって家に帰れば後は寝るだけ、という生活ではなくて、ゆとりをもった生活をめざそうと、これが「文化的な生活」の中身だと思っています。
そのためには時間短縮がなければいけません。日本の労働運動は労働時間の短縮のためにもっと大きな闘争に取り組んでいくべきだと思います。
社会的影響力の回復を
日本の労使関係の特徴を諸外国と比較すると、まず組織率の低さが挙げられます。ただしこれは、いまヨーロッパでもかなり低くなってはいます。それでもヨーロッパの場合には、組織率が低くてもそれを補うようないろんなシステムがあって動いている、日本には何もないということです。
2番目は労働協約の適用範囲が狭い、ということですね。一番典型的なのは私鉄総連です。春闘では大手私鉄が先に妥結して、その後に地方の中小私鉄やバス会社が団交を行いますが、大手私鉄で締結された労働条件が、そのまま中小やバスに適用されることはないでしょう?本当に私鉄全体の労働条件を考えて、中小やバスの労働者にも適用されるものを春闘で勝ち取ることができれば、それはヨーロッパなみということになるわけですね。
3番目は、労働組合の社会的な影響力がヨーロッパと比べて小さい、ということです。昔はそうではなかったんです。昔はね、春闘の時期になると新聞が連日、その状況を報道しましたよ。「何月何日にはストライキがあるから外出する人は気をつけろ」なんてことまで新聞が書いていましたけど、いまは春闘の報道は本当に小さくなってしまって「え?春闘まだやってんの?」みたいな調子ですよね。この労働組合の社会的な影響力をどうやって回復するかという問題が大きく突きつけられていると思います。(つづく)