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2016年03月の記事
ライドシェア特区、白タク合法化進める楽天・三木谷会長
2016/03/28
規制改革の利益むさぼる
経済学者・戸崎肇さん
3月8日に東京都内で開かれた「安全破壊の白タク合法化阻止!! 3・8ハイタク労働者総決起集会」では経済学者の戸崎肇さん、利用者代表の佐藤千恵子さんが次のとおり発言しました。
ここ数年の適正化の中で、ようやくタクシーが公共交通として位置づけられるようになりました。残念ながら今回の白タク合法化の動きはそれに真っ向から逆行するものであり、きちんと反対して、事態を改善していかなければなりません。
ライドシェアが社会でどのように捉えられているのか、“安ければいい”“便利”という声のほうがたぶん一般的でしょう。したがって白タク合法化反対の論拠を具体的に示さないといけません。
まず第一に、公共交通機関として24時間、きちんと輸送サービスを提供できるか、それをどうやって保障するのか。ライドシェアは、運転手さんが“やりたい時にやる”というものです。
二番目は、ドライバーの質をどのように担保するのか。地域の足を保障するのであれば、それは交通政策基本法の枠内でやるべきです。せっかく作られた法律が活かされないまま、それとはまったく違う文脈で、軽井沢バス事故(1月15日)の教訓を考えずに、労務管理のできないライドシェアが導入されていくというのは、本末転倒な話ではないでしょうか。
今後数か月が勝負
反対運動は戦略的に行わないといけません。確かに選挙というのは一つの形ではありますが、それが本当に実を結ぶのはまだまだ先のこと。とすれば、これから2〜3か月の間に進展していくライドシェアをどのように止めていくのか、ということを真剣に考えないといけません。
政権の中心で規制改革を進める立場の人が「リフト」などに出資して、規制改革の果実が自分の利益になるという矛盾、本来、一般社会で許されないことがなぜ政治で行われるのかという、常識的なところから変えていく必要があります。
今年はライドシェアに始まって、タクシーにとって未曾有の危機的な状況にあります。これからの高齢化社会、地域活性化、地域創生の中でタクシーという公共交通機関がいかに重要なのかということを社会に認知させるために、今日を出発点としてお互いがんばりましょう。(文責=編集部)
安心して乗れるタクシー
いつまでも守ってほしい
利用者代表
佐藤千恵子さん
私の前職は客室乗務員ですが、その時にはタクシーに大変お世話になりました。
早朝の出勤には、タクシーの運転手の方が予定時刻よりも早く来て待っていてくださり、時間になりますと玄関まで迎えに来てくださり、また帰りの遅い時にはクタクタの状態で乗り込み、ウトウト乗車していても玄関先まで送ってくださりと、とても気が休める時間でした。それは私の勤務先が契約していた、安全なタクシー会社だったからなのだと思います。
いまでは、子どもを持つ一人の親として、ちょくちょく利用させていただきますが、やはり普通のタクシー以外は乗ろうとは思いません。海外でよくある話では、非認可タクシーを使っていたがために事件になるケースも耳にします。想像もつかないような恐怖だと思います。
日本のタクシーは、安全性はもちろんのこと、場所への的確さ、サービス面を見ても世界に誇れるものだと思います。近くの国では、よく回り道をされたり、ぼったくりされたり、人種が違うと思われたとたんに料金が変わることが多々ありますが、日本のタクシーはしっかりと対応してくださる運転手の方ばかりと信じて、毎回安心して使わせていただいております。
このようにいつまでも、安心して乗れるタクシーを今後とも守っていってほしいと願っております。
「3・8ハイタク労働者総決起集会」基調報告(3月8日、日比谷公会堂)
2016/03/15
ライドシェアの「合法化」は安全と輸送秩序の崩壊招く
今村天次書記長(自交総連本部)
世界一安心なタクシー守ろう
ハイタク労働8団体産別が約40年ぶりに結集した「3・8ハイタク労働者総決起集会」で、自交総連本部の今村天次書記長が基調提案を行いました。
白タク合法化を許してはならない
基調の第1は、白タク・ライドシェアの合法化を断じて許してはならない、ということであります。その最大の理由は、白タク合法化が「輸送の安心・安全」を破壊し、ハイタク労働者の暮らしと労働にとっても、深刻かつ重大な影響を及ぼすからです。
推進派は、次のように主張しています。――『子供を保育園に預けている間、家事の合間に短時間だけ働きたい女性などがライドシェアのドライバーになって働くことが可能。ライドシェアによって働き方革命が起こり、一億総活躍社会の実現に貢献する』
安倍首相が提唱している「一億総活躍社会の実現」や「地方創生」に貢献するとされるライドシェア。果たして、ライドシェアは、国民生活の豊かさや地域社会の活性化にとって、貢献の名に値する結果をもたらすのでしょうか。
世界に目を向ければ、ドイツ・フランス・アメリカをはじめ欧米・アジア等の多くの国において、ライドシェアには、営業の禁止や業務停止命令が出されています。運転者による乗客への恐喝や暴行事件、損害賠償責任の所在を巡る訴訟も起きており、輸送の安全が大きな議論になっています。
白タク・ライドシェアの合法化は、日本においても、安全の破壊と輸送秩序の崩壊という問題を引き起こし、法人・個人を超えたハイタク事業の存続さえも揺るがしかねません。
交通機関の安全性は労働と関わる
第2は、「交通機関の安全性は、交通労働者の労働と深く関わっている」という原則を忘れてはならない、ということであります。
ILO第153号条約では、自動車運転者の長時間労働は、「家庭的にも、社会的にも影響を及ぼし、本人の安全の他にも危険をさらす」と述べ、労働時間の規制を厳しく指摘しています。
賃金水準については、第51号覚書で「運転手の賃金は熟練手工業労働者の賃金に匹敵するものであるべき」と指摘しています。白タク合法化は、白タクと競争させられるハイタク労働者の賃金・労働条件を大幅に押し下げます。まさに死活的な問題です。
昨年10月ジュネーブで開かれたILO道路運送部門会議では、ライドシェアの運送形態に対する国内法規の全面的履行を加盟国に求める決議が採択されました。これは、ウーバー等のライドシェア事業者の市場参入を許可する前に、乗客の安全と運転者の権利を保護する規則を順守するよう各国政府に求めたものであります。
“ライドシェアの運転者は労働者ではない、業務請負人である。”“ライドシェア事業者は、雇用責任や賃金・労働時間等における規制から解放され、かつ事故時の責任の一切を運転者に負わせることができる。”
こんな働かせ方は、運転者保護そして安全確保の観点からも絶対に許してはなりません。
新たな負担と犠牲を強いる自由化
第3は、8年余の努力を台無しにし、新たな負担と犠牲を強いる自由化への道を許してはならない、ということであります。
タクシーの規制緩和は、今から14年前の02年2月に実施されました。当時、規制緩和によって利用者サービスは向上し、新規サービスの開拓と相まって市場は拡大し、利用者、運転者、事業者のそれぞれにプラスの成果がもたらされる、と盛んに喧伝されました。しかし、規制緩和は、都市部を中心に増車と運賃値下げ、ルールなき競争の激化を生み、運転者の貧困化、交通事故の増加と環境への悪影響をもたらしました。
そんな中、全国のハイタク労働者は、様々な苦労を乗り越えながら、実態告発と規制強化を求める活動に大変な力を注ぎました。そして、ついには世論を変えることに成功し、07年以降の規制強化の流れをかちとるに至りました。
以後、今日までの8年余、供給過剰の解消と安全の確保、運転者資質の向上と労働条件改善にむけた新法制定や関係法改正に基づく対策を講じさせてきました。しかし、目標は未だ達成されてはいません。然るに政府は、これまでの政策を大きく転換しようとしています。許しがたい暴挙です。
今なすべきは、自由化に道を開く白タク合法化ではありません。安全確保と労働条件の確実な改善にむけた規制強化こそなすべきではありませんか。
「新地域貢献」の視点が極めて重要
第4は、「地域貢献」の視点が、ハイタク事業の将来を展望する上で極めて重要、ということであります。
規制緩和は、地方都市・郡部においては、撤退・廃業の自由による生活交通の破壊をもたらしました。鉄道の廃線や路線バスの廃止が続く中、最後に残されたタクシーも廃業して、一切の公共交通機関が存在しない地域も生まれました。そして今、住民の移動手段を確保したいという切なる願いにつけ込み、特区を足掛かりに既成事実を積み上げ、やがてはライドシェアの合法化、都市部への進出によって、ビジネスチャンスをものにしようとする動きが強まっています。
3・8ハイタク労働者総決起集会 集会決議(案)
2016/03/15
本日、われわれハイタク労働者は、ライドシェアと称する「白タク合法化」に怒り、その導入阻止の一点で結集し、集会を開いた。集会は、ここ日比谷公会堂を埋め尽くし、入りきれない仲間が日比谷公園にあふれている。
いま、政府が国家戦略特区などを使って推し進めようとしている「ライドシェア」は、明らかに道路運送法で禁止されている「白タク」以外の何ものでもない。
国が、交通空白地域の解消などと強弁し、「白タク」を超法規的に合法化することは、2002年のタクシー規制緩和という失敗を隠蔽すると同時に、タクシー特措法やその後の法改正に対する規制緩和推進論者の巻き返しであり、その責任をハイタク産業に押しつけていることに他ならない。彼らにはそこで生活している労働者のことなど頭にない。
「白タク」の配車サービスを行う事業者は、手数料を取るだけで、運行に責任を持つわけではない。ましてやドライバーは二種免許を持たず、請負で、配車サービス事業者には雇用責任もない。事故や犯罪が起ころうと、その責任はすべてドライバーと利用者の自己責任という、無責任極まりない事態である。
こうした「ライドシェア」によって、事故や犯罪が頻発したことから世界中の多くの国々が禁止または規制を始めている。なぜ過去から禁止している「白タク」を日本に導入する必要があるのか、強い憤りを禁じ得ない。
一民間事業者が、規制改革諸会議に民間委員として参加し、自らの企業が潤う政策を日本のためと謳い政府案として進める。立場を利用した正に「政商」であり、断じて許されることではない。
われわれハイタク労働者は、プロドライバーとしての自覚とプライドを持って日々、乗客を安全・快適に目的地まで送り届けている。日本のタクシー・バスなど公共交通事業者には、道路運送法や運輸規則など、利用者の安全を守るために様々な法令・基準・制度が義務づけられている。そうした中でも過日のスキーツアーバス事故のような大惨事が起こる。行き過ぎた規制緩和は人命よりも利益優先となり、大勢の尊い命が犠牲となってきた。
事業者もわれわれ一人ひとりも、安全輸送の使命を守り、タクシー業界の適正化に取り組んで行かなければならない。そこに「白タク」など必要ない。
本日結集したすべてのハイタク労働者は、あらためて安全破壊の「白タク」合法化阻止の意思統一をおこなった。本決起集会を契機に、さらなる反対の声をあげ続け、その導入阻止に向けて運動の輪を広げ、最後の最後まで闘い抜くことを決議する。
2016年3月8日
安全破壊の白タク合法化阻止!!
3・8ハイタク労働者総決起集会
白タク合法化阻止!!ハイタク労働者総決起集会
2016/03/15
横断幕に「安全破壊の白タク合法化阻止!!」と掲げ市民にアピールする労働団体の代表ら(前列右2人目=高城自交総連本部委員長)
日本に白タク持ち込むな
「白タク反対!!」「安全破壊の白タク合法化阻止!!」と書かれた鉢巻きと襷(たすき)をかけた2500人のハイタク労働者が産別の違いを乗り越え、政府が進めようとする「ライドシェア合法化」を阻止するため3月8日、東京・日比谷公会堂で総決起集会を開催。デモではライドシェアの危険性を市民に告発し、白タク合法化の阻止にむけた運動への理解を求めました。
ハイタク労働者総決起集会・労働8団体を代表して伊藤実実行委員長(全自交)は「タクシー規制緩和の時にも実現しなかったハイタク8産別の大同団結。これまでの運動の経過を乗り越えた歴史的な集会である」と意義を強調し、「政府が15日に国会に提出する国家戦略特区法案に盛り込まれる『過疎地域等での自家用自動車の活用拡大(観光客を含めた外国人の受入れ等)』について、「今回民営化は見送られたが、ウーバーがスマホアプリで介在してくる」と指摘し、「彼らの狙いは都市部、阻止するために大同団結してがんばろう」と呼びかけました。
戸崎肇教授(早稲田大学ビジネススクール)は、「ここ数年の適正化の中で、ようやくタクシーが公共交通として位置づけられるようになったが、残念ながら今回の動きはそれに真っ向から逆行するものである」と指摘し、「タクシーという公共交通機関がこれから高齢化社会、地域活性化、地域創生の中でいかに重要なのかということを社会に認知させるために、今日を出発点としてほしい」と提言しました。
関係労使の共同を
今村天次(自交総連本部)書記長が4つの角度から基調提案を行い「日本のプロドライバーの誇りにかけて、白タク合法化を阻止し、世界一安全なタクシーを守ろう。地域共闘や関係労使の幅広い協力・共同を実現させ、その力を背景に“白タク合法化は断固許さない”という世論を広げていこう」と語気を強め提案しました。
全タク連からは、神谷俊広理事長、坂本克己タクシー事業適正化・活性化推進特別委員会本部長、武居利治労務委員長が出席。
政党は民主、社民、共産、生活、維新、公明の各党から代表が挨拶し、自民党はハイタク議連から激励メッセージが寄せられました。
デモ隊は内幸町、外堀通り、銀座、八重洲口前を行き交う市民に「白タク合法化反対」「安心安全のタクシーを守ろう」などとシュプレヒコールでアピールしました。
2015年賃金センサスまとまる
2016/03/08
タク労働年収微増
埋まらぬ格差続く
厚生労働省が2月18日に公表した「平成27年(2015年)賃金構造基本統計調査(賃金センサス)」の調査結果から、大阪府の男性タクシー運転者の年間賃金を編集部が推計してみたところ320万5100円、前年より26万9500円増との結果となりました。
賃金センサスとは、主要産業労働者の賃金実態を、雇用・就業形態、職種、性別、年齢、学歴、勤続年数、経験年数別に明らかにすることを目的として毎年6月(賞与は前1年間)の状況を調査するものです。
今回調査が行なわれた大阪府のタクシー運転者(男)は14110人(前年は6170人)、平均年齢は57.8歳(同59.6歳)。6月度給与額の平均は23万300円で前年同月比4800円増。前年1〜12月に支給された賞与総額の平均は44万1500万円で前々年比21万1900円(月あたり17658円)増でした。
年間賃金を〔6月度給与×12+前年賞与〕で推計すると320万5100円となり、前年比26万9500円(月22458円)増という結果になりました。
大幅賃上げ勝ち取ろう
一方、大阪府の全産業労働者(男)を見てみると、6月度給与は39万3200円、前年賞与は110万700円で、年間賃金推計額は582万9100円(前年比17万7700円増)となりました。大阪府・男性の全産業とタクシーの格差は昨年より縮まったとはいえ262万4千円もあります。
この格差を解消するためには月あたり21万8666円もの賃上げが必要です。仮にB賃・賃率60%であれば営収を月36万4443円、隔勤月12乗務なら1乗務当たり3万370円増やさなければなりません。大阪市域の昨年10、11、12月の中型車日車営収平均・3万1953円(大阪タクシー協会の統計)からすれば文字通りの倍増が必要ということです。
白タク合法化という危機に直面し、運転者の質の向上が求められているいま、本気で大幅賃上げ・労働条件改善に取り組まなければ業界の未来はありません。