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2021年03月の記事
〈大タ協交渉〉コロナ禍で顕在化する諸問題
2021/03/25
要請趣旨を説明する福井委員長(左側前列中央、11日・大阪市中央区で)
集団交渉での解決求める
自交総連大阪地連(福井勇委員長)は3月11日、春闘ヤマ場の「大阪総行動」(提起=大阪労連・大阪春闘共闘)の一環として大阪タクシー協会(大タ協、坂本栄二会長)交渉に取り組み、コロナ禍の中で労働者の命と暮らし、タクシー産業を守るために必要な施策、白タク合法化阻止に向けた共同、労働条件改善などを要請しました。
交渉に組合側は大阪地連三役・執行委員ら9人が参加。協会側は井田信夫専務理事、黒田唯雄参与が応対しました。
今回、大タ協に提出した要請書で大阪地連は、
@〈雇用調整助成金を活用した計画休業は必要な限り延長して実施し、休業手当は平均賃金の100%を支給すること〉〈労働者が個人で休業支援金を請求する場合には、休業指示の確認などに協力するよう事業者に徹底すること〉
A〈恒久的な減車など需給調整をはかるための施策を講じ、地域ごとに関係者が適時集まって減車などを協議する場を設けるよう検討すること〉〈業界の構造的問題や過度な運賃割引など山積する問題を是正するため、業界団体と労働団体が一堂に会して集団交渉を行えるよう尽力すること〉
B〈白タク解禁を阻止するため、自家用有償旅客運送の安易な拡大に与(くみ)せず、国家戦略特区でのライドシェア実証実験など白タク合法化に向けた動きに反対すること〉
C〈4月から中小企業でも適用される『同一労働同一賃金』では、低位平準化することなく賃金・労働条件を改善し、(タクシー産業の持続安定性の観点から)若年労働者に向けた業界イメージ刷新をはかること〉などを求めています。
要請の趣旨説明を行なった福井委員長は「このコロナ禍でタクシー労働者は本当に生きていけるかどうかの瀬戸際だが、我々の目に映るような協会としての動き、発信が少ないように思う」「事業者がコロナを口実に賃下げを図ることがないよう徹底してもらいたい」と訴えました。
安全配慮義務徹底せよ
また、大阪メトロが大阪市生野区と平野区で実証実験を行うAIオンデマンド交通※について、組合側は「オンデマンドは本来はタクシーが担うべき仕事。いわば旧市バスの業態変更であり、タクシー業界への影響は計り知れない」と警鐘を鳴らしました。
さらに組合側は「“これからPCR検査を受けに行く”という濃厚接触者がタクシー利用することもある」「労働者だけに痛みを押しつけるのはおかしい」などと実態を紹介し、運転者の感染を防ぐ手立て・安全配慮義務の徹底を求めました。
協会側は濃厚接触者の事例について「運輸局に報告したい」、集団交渉について「組合から提案があったことは役員・理事会に伝える」と応じました。
※AIオンデマンド交通=区内に網目状かつ300メートルごとに乗降場所を設置し、複数の利用者がスマホアプリなどで指定した日時や乗降場所に応じてAIが最適な運行ルート、配車をリアルタイムで行う乗合輸送サービス。8人乗りワンボックスカーを使用。
本流逆流(3月15日付コラムより)
2021/03/15
3月1日にいよいよ大阪の緊急事態宣言が解除された。市内は飲食店が1時間延長で、府下については全面解除になった。賛否は分かれると思うが、第4波の危険性、そして感染力・致死率ともに高い変異株が報告されている中での解除である。
タクシー乗務員としては安全性が確実に担保された状態であれば大歓迎だが、去年の緊急事態宣言が出た時よりも職場の仲間や身近な人が感染して、酷い人は完治しても肺に後遺症を負って咳が止まらないなどの症状を訴え、数か月経った今でも仕事に復帰できずにいる。でも病院はコロナの後遺症とは認めない。
郡部で乗務しているが、解除当日は確かに解除前の夜とは様子が違い月曜日の夜にも関わらず乗客は増えた。この日を待ち侘びたかのように飲酒をされたお客さんをお送りしたわけだが、油断から来るのかマスクをしていないお客さんが多く、今まで以上に乗務員の感染リスクが高まっているように感じる。
お客さんが戻りつつあることのみをもって知事や国の決定を手放しで喜ぶのはいかがなものか。今までの経過を見ても労働者の安全より経済を優先し、タクシー乗務員は見放されたように思える。
自交総連本部「3・5中央行動」国土交通省交渉
2021/03/15
プラカードで「ライドシェア阻止!」などとアピールする埼玉地連、東京地連、神奈川地本のなかま(3月5日、東京・霞ヶ関で)
タクシーの公共性守れ
自交総連本部(高城政利委員長)は3月5日、自交労働者の労働条件改善をめざし、「コロナ危機突破」「白タク合法化阻止」「雇用を守れ」「人間らしく暮らせる賃金確保」を掲げて、「3・5中央行動」を東京・霞ヶ関で実施。国土交通省、厚生労働省、全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)への要請に取り組みました。
例年の「中央行動」には多くの仲間が集まりますが、今年はコロナ禍で緊急事態宣言が発出されている状況を考慮し、少人数の行動に切り替えて取り組みました。国土交通労組の仲間も駆けつけ、全体で28人が参加しました。
国交省前で10時30分から集結。主催者あいさつを行なった高城委員長は、タクシー運賃のダイナミックプライシング(変動相場制=天気や時間帯など需要に応じて金額が変わる)について「タクシーの公共性を損なう危険性がある」と訴えました。同制度は河野規制改革担当相が国交省に導入を要望し、同省も認める方向で検討に入っています。
その後、個人署名「自交労働者のいのちと健康を守り、安心・安全な公共交通を確保するための請願書」を提出(全体=3811通、関西=417通)。厚生労働省でも同様に請願行動を行いました。
変動料金 誰のため?
13時からは、自交総連の代表が国交省交渉に取り組みました。
今回の要請は「コロナ対策」「需給調整」「ライドシェア阻止、規制緩和問題」を柱とする9項目。「コロナ対策」では「臨時休車措置の延長」「事業者と労働者に対する直接的な金銭面での支援策」「車内感染防止対策への助成措置」などを要請。省側は「休車措置は6月末まで延長した。コロナの影響をふまえ今後も適切に対応していく」、「車内の新型フィルター、空気モニター等の予算措置をした」などと回答しました。
「ライドシェア阻止、規制緩和問題」では組合側が一括定額運賃、変動迎車料金など新たな運賃・料金サービスについて、「運転者の賃金に影響を与えないようにすること」「障がい者や高齢者など日常的に利用する乗客の負担が増えないようにすること」「繁閑により運賃本体を変動させる制度は導入しないこと」を要請し、「変動迎車料金は病院に行くお年寄りなど困るだけだ。こんな制度をつくってほしいと利用者から要望があったのか」と質問。省側は「利用者からの要望で出てきたものではないが、外国の例なども参考に、業界団体の“やるべき施策”にも入っていて“やろう”となったものだ」と実情を明かしました。組合側は「“外国の例”とはライドシェアのことではないのか」と疑念を呈しました。
また組合側は、昨年実施および今後行われる運賃改定について確実に労働条件が改善されるように求めるとともに、「運転者負担の解消を業界ぐるみで行わない地方もある」と指摘。省側は「協会で(解消しないと)申し合わせるとかは問題だ。運輸局を通じて調べて対応したい」と明言しました。
第78回中央委員会 2021年春闘方針 全会一致で承認
2021/03/05
中央委であいさつする福井委員長(右)と議長を務める運天氏(2月25日、自交会館で)
コロナ禍乗り越える
自交総連大阪地連は2月25日、第78回中央委員会を自交会館(大阪市浪速区)で書面開催し、「コロナ危機突破、白タク・ライドシェア阻止 雇用を守り、人間らしく暮らせる賃金確保 21春闘」をスローガンとする2021年春闘方針を決定しました。
昨年の第75回定期大会に続いて今回の中央委員会もコロナ感染防止に万全を期すため、事前に各単組に送った議決票の返送確認をもって委員会出席とする書面開催となりました。1単組に1議決権とすることを2月9日の執行委員会で確認しています。
中央委員会当日は執行委員と、執行委員会から中央委議長に推薦された運天武史氏(国際タクシー労組副委員長)が会場出席。運天氏以外の出席者の承認を受けて同氏が議長に就任し、議事を開始しました。
議長はまず執行委員9人中7人の出席(委任4)と、議決権を有する25単組中22単組からの議決票返送を確認し、中央委員会の成立を宣言しました。
福井委員長はあいさつで、「営収は最もひどかった昨年春に較べると少し改善してはいるが生活できる賃金にはなっていない。今春闘は会社が危機に乗じて合理化を提案してくることも予想され、非常に厳しいたたかいになる。いま多くのなかまが困窮している中で賃下げは絶対認められない」と強調しました。
議案採決では、議長が22議決票すべて「賛成」であることを確認。2021年春闘方針や21年度会計中間報告など提案された全議案が全会一致の賛成で成立したことを宣言しました。
雇用と暮らしを守る
いま、新型コロナウイルスの感染拡大から社会活動が一変し労働者・国民のくらしは大変な状況に追い込まれているにも拘(かか)わらず、安倍政権、菅政権のコロナ対策は後手を踏み自交産業のみならずあらゆる産業の根幹が揺らいでいます。
今回決定した2021年春闘方針では、「白タク・ライドシェアや自家用有償旅客運送の拡大という難題が山積していますが、まずコロナ禍から自交労働者の雇用を守り、人間らしく暮らせる賃金確保を求めたたかわなければ、犠牲はすべて労働者に押し付けられる」と警鐘を鳴らすとともに、「労働組合の原点に立ち返り、労働者の命と暮らしを守るため、雇用の維持、賃金・労働条件の改善をめざして、団結を固めて積極的にたたかう」ことを強調しています。
統一要求では、上限が変更されても雇用調整助成金制度を最大限活用し、資金繰り等活用できない状況にある場合は、コロナ対策休業支援金を活用し労働者の賃金を保障することや、21年4月から中小企業でも同一労働同一賃金が適用されることから、嘱託・定時制乗務員の賃金・労働条件の改善をはかることを求めています。
同地連は、コロナ禍であっても「自粛はするが萎縮はしない」との方針の下、各単組の要求提出を「3月5日まで」、回答指定日を「3月19日まで」と設定しています。
庭和田書記長は、議決票のひとつに「大宝労組が脱退したことについての総括が必要では」との意見が附されていたことについて、「コロナ禍の運動と組織拡大問題は両輪の問題。意見にあった大宝労組の脱退問題のみならず、既存労組組合員の減少や逆にコロナ禍にあっても結成当時から数倍化した労組の事例も含めて、次期大会で総括することになる」と話しました。