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2016年04月の記事
すすむ白タク合法化の動き
2016/04/25
まず過疎地から導入し全国各地に拡大する企みは明白
国家戦略特区法改正案が3月11日に閣議決定され、4月14日に衆院本会議で審議入り。法案の趣旨説明では「国家戦略特区」で外国人観光客を地方に呼び込むため、自治体やNPO法人に限って中山間地などで自家用車を使い有料で観光客を送迎するサービスをできるようにすることなどを盛り込んでいます。
この改正案は、ライドシェアの解禁、白タク合法化をねらう新経済連盟(代表理事=三木谷浩史楽天会長)などの提案を特区諮問会議が取り入れ、まず特区で自家用車による運送を導入しようというものです。
法案は、事前の国交省との調整を経て一定の制約があるようにもみえますが、国会質問を通じてその内容は限定の少ないあいまいなものであることが明らかになっています。
暗躍するウーバー
事業を実施する主体は、市町村・NPOなどとされていますが、企業のダミーのようなNPOがつくられることも想定され、配車アプリを提供するのはウーバーなどライドシェア企業です。
輸送の対象は、観光旅客を主たる目的とするとされ、ビジネス客でもいいということです。
事業が実施される地域は一般事業によることが困難ということだけで、過疎地でも市街地でも制約がありません。この事業を申請するのも更新するのも特区会議で、地域の事業者との協議が必要とされていますが、合意が条件とは書かれていません。
乗合タクへの補助を
過疎地での住民の足を確保するためには、すでに各地で行われている、コミュニティーバスやデマンドタクシー、乗合タクシーなどのしくみを充実させることの方が大切です。
過疎地型の乗合タクシーはすでに全国3000コースで実施されています。こうした輸送への補助制度として地域公共交通確保維持事業が行われていますが、年間予算はわずか30億円程で十分ではありません。政府が予算を増やせば必要な地域で、もっと事業を充実させることができます。
国家戦略特別区域諮問会議の有識者議員(秋山玲子・坂根正弘・坂村健・竹中平蔵・八田達夫氏)は4月13日の第21回会議で、今後の進め方について、この2年間で「戦後最大の経済・GDP600兆円」のための「新たな目標」を掲げ、早急に決定すべきであると主張しています。
白タク求める有識者
同議員らは残された岩盤規制打破のための「突破口(ドリル)」の重点課題として、各分野における「外国人材」の受け入れ促進など6項目を明記する中で、観光分野に留まらない、各分野での「シェアリングエコノミー」の促進を求めています。彼らの主張は、新たな儲けのためなら「安全規制」も「岩盤規制」の一つとしか見ていないのは明らかです。
まさに、全国各地で「白タク合法化」を推し進めようとしているは明白で、無責任な彼らの思惑を阻止しなければなりません。
国家戦略特区改正案の要旨(道運法の特例)
○国家戦略特別区域会議(特区会議)が自家用有償観光旅客等運送事業を定めた区域計画を申請し認定を受けたときは、同事業を道運法第78条第2号に規定する自家用有償旅客運送とみなす。
○自家用有償観光旅客等運送事業とは、市町村、NPOその他国土交通省令で定める者(農協、生協、公益法人等)が行う、一の市町村の区域内における外国人観光旅客その他の観光旅客の移動のための交通手段を提供することを主たる目的として有償で自家用自動車により行われる旅客の運送であって、一般旅客自動車運送事業者によることが困難であるもの。
○特区会議は、市町村、当該事業の実施主体、関連する一般旅客自動車運送事業者の協議を経た後でなければ、国家戦略特別区域自家用有償観光旅客等運送事業を定めることができない。
東京発の運賃改定、大阪も26社提出
2016/04/25
市民への映り違う―先に非常識な“運転者負担”をやめろ
タクシー業界はライドシェア・白タク合法化問題が現時点で、道路運送法78条2号(自家用自動車による有償運送)での運用になり一定歯止めがかかったとする、根拠のない安堵感に包まれているのか、東京発の運賃改定が焦眉の問題として進行しています。
東京では、関西にも進出している日本交通(株)(川鍋一朗代表取締役会長)が、基本運賃2キロ730円を1.059キロに短縮し410円、加算237メートル80円とする運賃改定要請書を提出しています。
大阪では3月30日に、商都交通(株)の三野文男代表(大阪タクシー協会会長)が現行中・小型を普通車として1.7キロ680円、加算246メートル80円で同要請書を大阪運輸支局に提出しました。
4月21日現在、大阪では26社(2813両・18%)が提出。同改定には70%ルールがあり、行方は混沌としています。各業界誌の報道では大タ協理事会で賛成派、反対派の双方が論陣を張っているとのことです。
運賃改定は事業者の専権事項ですが、東京の労働団体は総じて、反対の立場を鮮明にしています。
東京と大阪のケースは市民への映りがまったく違います。運賃改定に労働条件や労働環境の改善を言うのなら非常識な“運転者負担”をすべてやめるべきです。
白タク阻止宣伝−現地に赴き、市民の「生の声」を聴く
2016/04/19
峰山タクシーの乗務員と対話する京都地連・福岡地連のなかま(4月5日、京丹後市で)
失敗懸念する市民
役所は説明しない
自交総連関西ブロックが4月4〜6日に取り組んだ「白タク合法化阻止市民宣伝」では、京都府京丹後市と兵庫県養父市で両市民やタクシー・バス乗務員と対話し、「生の声」を聴くとともに、宣伝場所周辺で全戸ビラ配布を行いました。
峰山タクシーの乗務員
社長の賛成知らず驚く
ウーバーアプリを利用したNPOによる自家用有償運送が始まる京丹後市。同市市会議員の平林智江美さんは宣伝隊のヒアリングに「NPOが動き出したのは急だった。ウーバーは表に出てこない」「自家用有償運送への期待度は高いが市民には何も見えない」と話しました。
京都丹後鉄道・峰山駅で峰山タクシーの乗務員と対話すると、京丹後市のウーバー導入に同社社長が賛成したことについてまったく知らなかったようで、「賛成したって本当ですか」と私たちに訊き直しました。
そして、同乗務員は「今はスマホでクレジット決済だと言っているが、実際始まると現金でも乗せることになる、私たちの仕事が奪われタクシーは成り立たなくなる」と吐き捨てるように述べていました。
JR八鹿駅では全但バスの営業所で白タク合法化阻止運動への理解と協力を求めたところ、乗務員は「私たちも反対の立場でやってます」と応じました。
タクシー会社としての社会的役割を果たそうと日本城タクシーが京丹後市網野町開業準備中の「網野タクシー」、近畿自動車が同市久美浜町で開業準備中の「久美浜タクシー」を宣伝の合間に訪問。「網野タクシー」は不在でしたが「久美浜タクシー」では所長が「ライドシェアは海外でトラブルや暴力事件を引き起こしており、こんな危険なことを放置するわけにはいかない」と話しました。
ライドシェアは市長のチョイ走り説明もせん
JR養父駅で対話した男性は、養父市が農業分野の国家戦略特区に指定されていることについて「(合併前の)旧養父市は但馬地方で専業農家が最も少ない地域。農協の力が一番弱い所を狙って特区指定して、農業委員会の権限を取り上げて、という試しに使われたような感じ」と話し、「企業が入ってきて、うまくいくのかわからへん。あんなもん金儲けでくるからな、失敗して出ていかれた後がどうなるかという心配はしとる」と懸念を示しました。
そしてライドシェアについては「あれはほんまに市長のチョイ走りでな、誰かがポッと言(ゆ)うたやつに市長が乗ったんじゃろうと思う。だから市の職員もまったく相談受けてへん。(市長自身も)困っとんちゃうか」「(市民に)ひとつも説明せえへん。特区の説明はするんや。養父で何するかは“いま緒に就いたばかりです”以下、何も言えへん」と憤っていました。
京丹後・養父市に白タク阻止宣伝
2016/04/19
過疎地利用するウーバーの企み
自交総連関西ブロックは4月4〜6日、ウーバーの配車・決済システムを利用した自家用有償旅客運送の実証実験が行われる京都府京丹後市と、国家戦略特区としてライドシェア導入に意欲を示している兵庫県養父市を中心に「白タク合法化阻止市民宣伝」に取り組み、同ブロックの10人(大阪7、京都3)と東京地連、福岡地連各1人の計12人が参加。市民に白タク・ライドシェアの危険性を知らせるとともに、過疎地住民の足を確保する方策として国の補助金増額や、交通事業者が「企業の社会的責任」を果たすことの必要性などを訴えました。
宣伝隊はまず京都市左京区の比叡山観光タクシーを訪ね、京都タクシー協会・安居早苗会長(同社社長)と懇談。安居会長は開口一番「ご苦労さま」と労いのことばをかけ、続けて「白タク問題は労使とも大変な問題、一緒になって阻止しなくてはならない、今は一応、有償運送ということになったが、スマホを使った白タク行為はこれからやってくる。危機感を持って対処しなくてはならない」と問題意識を吐露しました。
秋山委員長は「京丹後や養父だけで終わる問題ではない、都会に波及させてはならない」と応じました。
また、同会長は「京丹後は道運法の有償運送、神戸市も落ち着いてきたし南砺市は協定を結んだが反対があって取りやめるなど、少し全国的に下火になってきたが、これからまたやってくるので阻止しなければならない」と指摘。
懇談の中で、道運法78条2項(自家用車有償運送)問題は「安全面に問題があり、市民にそのことも含め宣伝しなければならない。共にがんばりましょう」とエールを交換しました。
京丹後踏み台に大都市への進出
「ライドシェア・白タク合法化阻止」の宣伝隊は、JR京都駅で第一声。宣伝のマイクを握った大阪地連・秋山委員長は「ウーバーは京丹後市を足がかりにして大都市進出を狙っている。一私企業の利益のために過疎地の住民を実験材料にするなどもってのほかだ」と強調しました。
東京地連(舞弓氏)と福岡地連(丸山氏)のなかまも合流し、舞弓氏は、過去に赤門前で東大生をひき殺した“神風タクシー”を引き合いに「今日まで築いてきた安心・安全のタクシーをつぶすのは一瞬、安全性の確保こそ重要で白タクは許してはならない」と訴え(=上写真)、丸山氏と関西ブロックのなかまは、市民にライドシェアの危険性を示したビラを手渡し告発しました。
安全担保できないライドシェア
5日夕、養父市役所前で大阪地連の秋山委員長と吉田副委員長(=左上写真)、本紙・運天編集長らは「国家戦略特区は、いずれ全部規制緩和をしていこうとする国の方針に従う訳だが、農業特区は株式会社が農業・農地を引き継ぐ。当然、株式会社だから利潤・営利を追求することになり食の安全が保たれるのか」と指摘し、またタクシー特区の問題では、「養父市はライドシェア導入に意欲を示しているが、二種免許を保有しない一般市民がアルバイト感覚でウーバーなどを介して営業することになる、飲酒チェックや車両点検など安全面が担保できないのは明らかだ」と危険性を告発し、ライドシェア・白タクを導入しないよう訴えました。
ストップ!!ライドシェア──第29回自交労働学校
2016/04/05
ライドシェアの危険性を説明する自交本部・今村書記長(3月29日、自交会館で)
怒りの力で白タク阻止
自交総連大阪地連(秋山民夫委員長)は3月29日、「第29回自交労働学校」を自交会館で開催。自交総連本部・今村天次書記長がライドシェア・白タク合法化問題を中心に講演を行いました。
主催者あいさつを行なった大阪地連・秋山委員長は「昨年、大阪市域が特定地域に指定はされたが労働条件改善への方向性は見えてこない。タクシー産業が求職者から敬遠されて運転者の減少に歯止めがかからず会社によっては労務倒産の恐れもある」「危機的状況が続く中、ライドシェアが大阪に入ってきたら、あっという間にまん延して私たちの職場が失われ、利用者が危険にさらされるのは間違いない」と指摘。「私たちの反対運動が“タクシー労使の既得権を守ろうとしてるだけ”と誤解されることのないように、なぜ白タクは許されないのか利用者から訊ねられた時にしっかり返答できるよう学習しよう」と呼びかけました。
ライドシェアは無責任
「深夜に女性が一人で利用できる、そして安全。そういう日本のタクシーを築き上げるために何十年かかったか」──
演壇に立った自交本部・今村書記長は「軽井沢バス事故では運転者の技量が問われた。労働時間もメチャクチャだった。安心安全を根幹から守る仕組み、運転者の資質、技量、能力が担保されなくてはいけない」と強調。「ライドシェア事業者は“運転者は誰でもいい”という発想だから、いろんな問題が起こる。運転者に仕事を与えて中抜きするだけ。労働時間も健康状態も管理せず、問題が起こったら全て運転者の責任。そんなことで安心安全な公共交通になりうるのか」と批判しました。
また、「ウーバーが海外で展開しているのは、タクシーの質が低い国が多い」「タクシーに不満が出ている所へ進出して輸送秩序を破壊している」とした上で「世界的に評価の高い日本のタクシーを守れるかどうかの岐路に私たちは立っている。タクシー乗務は誰でもできる仕事ではない。プロの乗務員として怒らなくてはいけない」と語気を強めました。
危機感持ち体質改善を
さらに今村氏は「白タク合法化阻止の運動と同時に、労働条件を改善して魅力ある産業にしなければならない。いまは団塊の世代ががんばっているが、年齢構成をいまのまま放置していればタクシー産業は外敵が来なくても崩壊する」と指摘。「法令を遵守し、労働条件を改善して安心安全を担保する、過疎地での事業にも取り組んで地域社会に貢献するなど、『企業の社会的責任』を果たさなければ、白タク問題を訴えても市民の理解は得られない」「タクシー労働者がソッポを向いたら終わり。労働組合のがんばりが問われる」と力を込めました。