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2020年04月の記事
ライドシェアへの突破口狙う─自家用有償拡大法案
2020/04/27
なし崩しに白タク拡大
運転者は労災の対象外
衆議院国土交通委員会は4月14日、白タク合法化の突破口となりかねない地域公共交通活性化再生法改正案を、日本共産党を除く賛成多数で可決しました。衆議院を通過後、参議院での委員会審議は5月以降になる見込みです。
改正案は、交通の不便な地域で公共交通の維持・充実を図るためにバス・タクシーなどを動員して活用しようというものですが、そのなかに白タク・ライドシェアへの突破口となりかねない自家用有償旅客運送の拡大・道路運送法の改悪が含まれています。
自家用有償旅客運送(以下、自家用有償)とは、バス・タクシー事業が成り立たない過疎地域で、市町村やNPO法人が自家用車での輸送を有料で行うもので、運転者は二種免許がなくても講習を受ければよいとされています。
あくまでも例外的な制度であり、現在は過疎地域など限られた地域と地域内住民に限られていますが、改正案では地域限定をはずし、観光客など来訪者にも対象を拡大します。
また、バス・タクシー事業者が市町村やNPOから委託を受ける、あるいは実施主体に参画し、運行管理を含む運行業務を担う「事業者協力型」制度の創設も盛り込んでいます。
自交総連は「白タク禁止の原則をなし崩しにして自家用有償を無限定に拡大することは、公共交通機関に求められる安全性をないがしろにするものだ」として署名活動など反対運動を強めてきました。新型コロナウイルスの緊急事態宣言発出で、国会前行動や傍聴が制限されていますが、事前に衆議院議長宛ての署名8000筆を提出(参議院議長分は別途9000筆を提出)、各委員にファックスで道運法改悪部分への反対を要請しています。
タクシー事業に支援を
14日の審議で質問に立った日本共産党・高橋千鶴子議員は、自家用有償とタクシーの違いを質問。自家用有償の運行管理者は1年の実務経験があれば国家資格がなくてもよいこと、運転者にはボランティアも含まれることから労災法が適用されないことなどが国交省側の答弁で明らかになりました。
高橋議員は「労働者だからこそ労災が保障されている。ボランティアも行なっている運送をプロの運転者に委託する場合、タクシー乗務より処遇が下がる、あるいは無権利になる恐れがある」と指摘。「タクシー乗務と同じ処遇でやれるなら、タクシーのままでやればいいではないか」「ちゃんと支援をしてタクシー事業をやれるようにすればいいではないか。なんで自家用有償に変えるのか」「運転者は全員二種免許保持者でなくてもいい、そうしたら当然、処遇が下がる、下がってもいいと、念頭に置いてるということではないか」と語気を強めました。
さらに高橋議員は、ライドシェア推進派の経済学者・竹中平蔵氏が昨年3月7日の未来投資会議で、自家用有償の拡大がライドシェアへの「突破口になる」と発言したことを紹介し、「国交省としてそれは違うというならば、タクシー労働者の処遇を改善して、タクシーが地域公共交通を担えるようにするべきだ」と訴えました。
審議では、高橋議員が道運法改悪部分を削除する修正案を提出しましたが賛同する会派はなく否決、本案を日本共産党以外の賛成多数で可決しました。
附帯決議は、日本維新の会が“ライドシェア導入は認めないとの文言がある”として反対、日本共産党を含む各会派の賛成多数で可決されました。
〈続報〉ロイヤルリムジングループ600人全員解雇
2020/04/27
コロナ禍 悪用の暴挙
東京のロイヤルリムジングループ(金子健作社長)は4月8日、コロナウイルスの感染拡大による営業収入の急減を理由にして事業休止、600人の乗務員全員に解雇を言い渡しました。会社が倒産や廃業するわけではなく、コロナ特例の臨時休車措置を利用し車両は維持し、11月以降に再開をめざすもくろみで、雇用責任の放棄、コロナ禍悪用の暴挙です。
国交省が全タク連に要請
支援措置活用し雇用守れ
同グループの目黒自動車交通には、自交総連東京地連の目黒自交労組があり、8日に同社内の多数派労組と共同で団交を行いました。社長は「休業補償より失業給付を受けた方がメリットがある」「会社は11月以降にリセットして再出発する」などと説明。組合側が「休業して雇用調整助成金をもらえばいい」と提案しても耳を貸さず、解雇予告手当は払えないとして解雇という言葉を避け、全員「退職合意書」にサインしてもらいたいと言い張りました。
組合では、多数派労組との共同を行いながら、弁護士事務所にも相談、労働委員会や法廷闘争も視野に入れて、たたかうことにしています。
業界への信頼損ねる
国土交通省は4月13日、「新型コロナウイルス感染症に関する雇用調整助成金の活用について(周知依頼)」とする事務連絡を全国ハイヤー・タクシー連合会に宛てて出し、雇調金をはじめ各種支援措置を活用して、雇用の維持にとりくむよう要請しました。
事務連絡の別添1「タクシー事業者の皆様へ」では、雇調金が歩合給のため受けられないというのは誤り、雇用保険の方がメリットがあるという判断は必ずしも正しくない、などの説明をして、「恒常的な人手不足に直面しているタクシー業界において、安易な解雇に言及することは、業界や企業に対する信頼を損ね、一層問題を深刻化させる」「雇用継続の努力が十分になされることが大変重要」としています。
この要請は固有名詞こそ出ていませんが、ロイヤルリムジンの退職強要方式を事実上否定するもので、同社の不当行為が浮き彫りになりました。
すでに休業計画を立て、休んだ労働者には休業手当を支払う計画を実施している会社もありますが、中には“雇調金の仕組みがわからない”とか“労働者に不利になる”などの理由をつけて休業計画を渋る経営者もいます。
国交省の要請をもとに、特例措置を最大限活用して、労働者に有利になる休業計画をつくり、雇用を守ることが必要です。
ロイヤルリムジン600人全員解雇
2020/04/16
一方的解雇肯定できぬ
新型コロナウイルス感染拡大に伴う業績悪化で東京のロイヤルリムジングループが事業停止、乗務員約600人に解雇を通告し、波紋を呼んでいます。
SNSで拡散している文書「ロイヤルリムジングループ社員の皆様へ」では、「皆様が円滑に失業手当をもらえるために決断」「タクシー事業の休業補償は歩合給と残業の給与体系のため、失業手当より不利」と説明していますが、報道をみると疑問が湧いてきます。
解雇通告された乗務員に取材した共同通信は「予告はなかった。当面は休業補償をしてほしかった。十分な説明もせず、責任を果たしていない」という批判の声を伝えています。
東京労働局職業安定部に取材した情報サイト「Business Journal(ビジネスジャーナル)」は、「元の会社に早期に戻ることが約束された状態では雇用保険の受給資格を満たしていない」との担当者の声を紹介し、「再雇用を約束した明確な契約を結んでいる場合、雇用保険の受給資格は得られない可能性が高く、一方で、それが単なる口約束であれば経営者は簡単に反故にできてしまう。いずれにせよ、労働者側にとって不利なことに変わりはない」と解説しています。
日本共産党の宮本徹衆院議員はツイッターで「30人以上の解雇は1月前にハローワークに再就職援助計画などをださなければなりません。大前提として整理解雇四要件もあります。苦しくても、ルール無き解雇はダメ」と指摘しています。
なぜ、大阪は計画休業を行い雇用調整助成金制度など活用しないのか
2020/04/16
座して死を待つのか
遅きに失した緊急事態宣言が発出されたのが4月7日、大阪の感染者数も拡大の一途を辿っています。
深刻な状況が日増しに拡大する中で、タクシー・貸切バス事業は営業収入の激減で、労働者の賃金も半分以下になるなど生活が困難な状態です。経営が危機に陥るところも出ています。
大阪地連に寄せられた相談では、「2年前から夜勤で働いており、いつも2万5千円から3万円ぐらいの営業収入があったのが、2週間前からは10時間働いても4千円しかあがらない日もある。どこを走ってもお客がいない。時給換算すれば200〜300円で、この先どうしたらよいのか」(3日)など、このような相談が多数寄せられています。
大阪地連はこうした状況になることを予想し、3月12日に大阪タクシー協会に対して、業界全体で計画休業を行い、雇用調整助成金などあらゆる制度を活用するよう求めましたが、残念ながら大阪の業界から計画休業の話などは1か月経ってもまったく聞こえず、座して死を待つつもりなのかと言わざるを得ません。
営収の回復も見込める
この状態を少しでも打開するには、会社に計画的な休業を実施させ、休業した労働者には休業手当を支払うことで最低限の賃金補償をさせることができます。休業手当を払った会社には雇用調整助成金が出ます。休ませた車両は、期間限定休車措置を利用して、保険料や車検・点検費用等を抑えられます。タクシーの場合、営業している車両の営収を回復させることにもなります。
東京地連では3月26日に東京タクシー協会に緊急要請を行い、休業を実施することを申し入れました。事態の緊急性にかんがみ、東京では大手・準大手企業から計画休車を実施する準備をすすめています。
50%休業計画まとめる
グリーンキャブ労組(高城政利委員長)では、企業内3労組で会社と交渉して休業計画の合意をしました。グリーンキャブは地方のグループ(横浜、仙台他は別対応)でも実施するとしていますが、東京の場合は以下の内容です。
○ 50%休業して、車両320台を9月まで期間限定休車して経費を抑える。
○ 休業手当は、12〜2月の平均賃金を個別算出して60%を支給する(雇用調整助成金は個別ではなく全体の平均賃金を算出したものが助成される)。
○ 休業対象は、
70歳以上は全員(感染時の重症化が予想される)。
70歳未満の定時制乗務員と、持病(糖尿病、高血圧、心臓疾患、気管支喘息など)がある者、家族が持病を持っていてウイルスに警戒が必要など安全衛生面から申告のあった者。
組合としては、個別に会社が協力を願うかたちで要請すべきということでまとめました。
○ 休業期間は、第1弾として4月21日〜5月20日までとし、状況をみて増やすか減らすか再度検討するとしています。
国際自動車(東京)賃金支払請求事件
2020/04/06
割増賃金の本質から逸脱
国際自動車(本社=東京都港区)の運転者62人が、歩合給から残業代を差し引く賃金規則は無効だとして未払い賃金の支払いを求めた3件の訴訟で、最高裁第一小法廷(深山卓也裁判長)は3月30日、「残業代が支払われたとは言えない」として労働基準法を逸脱しているとの判断を示し、運転者側が敗訴した二審判決を破棄、審理を東京高裁に差し戻しました。
報道によると、国際自動車の賃金規則は「残業代の項目があるが、売り上げに応じて支払われる歩合給を算定する際、残業代と同額を差し引かれる仕組み」(朝日新聞)で、「売り上げが同じ場合は残業時間が多くても賃金が変わらない」「この賃金規則は既に改められた」(日本経済新聞)といいます。
判決は「労働基準法37条が時間外労働について割増賃金を支払うべきことを使用者に義務付けているのは、使用者に割増賃金を支払わせることによって、時間外労働等を抑制し、もって労働時間に関する同法の規定を遵守させるとともに、労働者への補償を行おうとする趣旨によるものである」とした上で、同社の賃金規則は「当該揚高を得るに当たり生ずる割増賃金をその経費とみた上で、その全額をタクシー乗務員に負担させているに等しい」と指摘、「労働基準法37条の定める割増賃金の本質から逸脱したものといわざるを得ない」と断じています。
(報道はすべて3月30日付)
地域公共交通法案(道運法改悪)審議入り
2020/04/06
高橋千鶴子議員(共)
衆院本会議代表質問
貧弱な地域公共交通予算
自家用有償旅客運送の拡大、道路運送法の改悪を含む地域公共交通活性化法等の改定法案は3月24日、衆議院本会議で主旨説明・代表質問が行われ、審議入りしました。今後、衆議院国土交通委員会に付託され委員会審議は4月以降となります。
代表質問で日本共産党の高橋千鶴子衆院議員は「自家用有償旅客運送の拡大がライドシェア解禁へ道を開くのではないか」などと疑問点を質(ただ)し、赤羽一嘉国土交通大臣は「ライドシェアとは異なる」「ライドシェアは認めないとの立場を堅持する」と答えました。
高橋議員は、路線バスや鉄道が次々廃止され、交通空白地の面積が日本全体の3割にも及んでおり、地域公共交通の充実が求められていると指摘。乗合タクシーやデマンドタクシーなど、地域交通の確保を図ろうとする青森県弘前市のとりくみなどを紹介し、「こうした自治体のとりくみを全国で広げ、国として積極的に支援すべきだ」と主張しました。
同議員は、補助金の総額が305億円から2020年度予算案では204億円に減らされていることを指摘して、国が乗合タクシー・コミュニティーバスなどの赤字の半分を補填することになっている補助金がどうなっているかと質問しました。
赤羽国交大臣は、62億円の要望に対して30億円しか補助していないことを答弁で明らかにしました。
高橋議員は、「自治体の要望に応える予算をただちに確保し、抜本拡充を図るべきだ」として、「地域住民の足を守るため『移動の権利』を交通基本法に明記し、それに基づく施策に踏み出すべきだ」と主張しました。
ライドシェア解禁
国交省の立場質す
法案が自家用有償旅客運送を拡大しようとしていることについて高橋議員は、「事実上のライドシェア解禁につながるのではないか」「ライドシェアは認めないという国交省の立場は変わっていないのか」と質しました。
赤羽国交大臣は「自家用有償旅客運送はライドシェアとは異なる」とした上で、「ライドシェアは安全確保の問題があるため認めるわけにはいかないとの考えは変わっていない」「法案はライドシェア解禁にはつながらない」と答えました。