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2022年04月の記事
〈改善基準改正〉専門委で中間とりまとめを了承
2022/04/18
専門委に向け宣伝(3月28日、東京・厚労省前で=自交本部提供)
過労死・重大事故防ぐ
実効性確保が課題に
改善基準告示改正を審議する労政審の第8回専門委員会(ハイタク・バス・トラック全員が参加)が3月28日にひらかれ、ハイタクとバス作業部会から改善基準見直しの方向性が報告され、両報告を了承して専門委員会としての「中間とりまとめ」を確認しました。(『自交労働者情報』4月4日付)
ハイタクとバスの作業部会の報告は、既報のとおり、1日の休息期間を1時間延ばしただけの9時間とし、11時間は努力義務規定とする内容です。専門委員会は、今後、トラック作業部会の検討状況をふまえ、秋にも最終的な報告書をとりまとめる予定です。
世論喚起が必要
改善基準改正は、最終的に秋以降年内に決定して公布され、24年4月から適用・施行される予定になっています。それまでに、ハイタク・バス以上に使用者側が時短に難色を示しているトラックでの審議があります。
ハイタク・バスに関しては、審議の中で出されていた、11時間は努力義務であっても「基本」という言葉を入れた意味などの論点もふまえて、実効性を確保するとりくみが必要です。この間に厚労省が作成する関連通達についても、累進歩合禁止の徹底、割増賃金や有休手当の適正な支払いなど、その書きぶりが今後に大きく影響してきます。
ひきつづき自動車運転者の長時間労働の危険性を訴え、実効性のある労働時間短縮、休息期間11時間を実質的に確保することなど、世論を喚起していくことが大切です。
専門委員会の直前には、厚労省前で全労連・全労協とともに宣伝行動を行い、東京地連の仲間が参加しました。
第8回専門委員会発言録
「休息期間11時間を基本に」
専門委員会での各委員の主な発言(要旨)は以下のとおりです。
○タク使用者代表・武居委員(昭栄自動車代表取締役)
労災認定基準などから休息期間11時間が重要というのは理解しているが、コロナで厳しい経営環境のなかで、11時間は努力義務として、基本という言葉を入れて、それを強く意識していくというところが最大限譲歩した内容だったと認識している。
○タク労働者代表・久松委員(私鉄総連)
休息期間が11時間とならなかったのは残念だが、拘束時間の上限などから、9時間の休息期間がフルでできないことも考慮した。使用者は11時間を基本と考えていただきたい。
○タク公益代表・寺田委員(東京海洋大院教授)
11時間は努力義務となった。次の見直しの機会には考えてほしい。
○バス使用者代表・齋藤委員(京成バス社長)
従業員の過労防止と市民の足を確保するということを(両方)考えた見直しとなった。全体として過労死防止になると考える。
○バス使用者代表・金井委員(東武バスウエスト社長)
過労防止と公共交通の使命の両面を考えて議論してきた。改善基準の改正の内容について、専門委員会として旅行会社に協力を求めてほしい。地域公共交通会議でも利用者に厚労省から説明をしてほしい。
○事務局(厚労省)
改正の趣旨が旅行会社、利用者に理解されるよう周知に努めたい。
○バス労働者代表・池之谷委員(私鉄総連)
長時間労働の連続性を軽減させることを主張してきた。11時間が努力だけでなく基本と考える。
○バス労働者代表・鎌田委員(交通労連)
休息期間9時間を下回らなくてもいいというところに目が行くのではなく、基本は11時間と考えてほしい。労働時間が減って賃金が減らないよう適正な運賃を検討してほしい。
○バス公益代表・小田切委員(東京医科大講師)
長時間労働の連続性を避け、休みはなるべく頻繁にとれるようにしてほしい。休息期間の文章※の受け止めだが、「努める」というのがどこにかかっているのか?「基本とし」の「基本」は、「与えるよう努めること」ではなく「11時間以上」という数字にかかっていると理解している。
※作業部会でまとめた最終的な文章=「休息期間は、勤務終了後、継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないものとする」
タクシー自由化から20年 「怒りの行動」2年ぶり実施
2022/04/18
横断幕で変動運賃制導入反対をアピールする大阪地連のなかま(1日・大阪市中央区で)
新たな規制緩和ノー
自交総連大阪地連(福井勇委員長)は4月1日、タクシー規制緩和(2002年2月1日)を強行した行政に対する「怒りの行動」を2年ぶりに実施。近畿運輸局が入る合同庁舎4号館前(大阪市中央区)、新大阪駅、大阪駅、南海なんば駅で宣伝行動に取り組み、「新たな規制緩和は許さない」「変動運賃制導入反対」「11時間の休息期間(乗務間インターバル)は絶対に必要」などとアピールしました。
「怒りの行動」は毎年2月1日に取り組まれてきましたが、新型コロナウイルス感染拡大にともない昨年は中止、今年は2か月延期となっていました。
近畿運輸局前で宣伝のマイクを握った福井委員長は、「岸田政権や維新の会が目論(もくろ)んでいるのは新自由主義的改革。社会に欠かせないものでも儲けにならなければさっさと切り捨て、一部の企業の利益のために法律を曲げて白タクを合法化しようとする」と指摘。
そして国交省がタクシーに変動運賃を導入しようとしていることについて、「“デジタル改革”を掲げる岸田政権のもとで白タク・ライドシェア解禁の突破口にされかねない」「日常的にタクシーを頼りにしている高齢者や障がい者が困るような制度は地域公共交通として許されない。利用者の交通権をなおざりにした制度づくりに怒りを覚える」と語気を強め、「人の命を守る法律や制度を強化することはあっても、緩和する必要は一切ない」と力を込めました。
「規制緩和万能論が叫ばれて久しい。利用者の側から見れば便利になる、その裏で、どこかで誰かにしわ寄せがいってないか、そういうことを考えなければならない」
連帯あいさつを行なった大阪労連・菅(かん)義人議長はこう前置きし、改善基準告示※の改正で休息期間(乗務を終えてから次の乗務までのインターバル)を現行の「8時間」から1時間だけ延長し、自交総連が以前から主張してきた「11時間」は努力義務にされようとしている問題について話しました。
「通勤時間、食事・入浴など生活時間を考えたら9時間ではとても足りるものではない。睡眠・休息の不足は利用者の安心・安全を脅かすことに直結する」「経営者側が11時間に猛反発したという。経営効率を上げることも必要だろう、しかしそれは人の健康や命を犠牲にしてまで上げていくべきものなのか」と批判し、政府に向けて「安心・安全を守るのは誰なのか。社会を支えるエッセンシャルワーカーの賃金・労働条件を見た時に、必要な水準に足るものになっているか」と訴えました。
※改善基準告示=厚労省告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」
改善基準告示改正・乗務間インターバル
2022/04/05
雨の中で行われたハイタク作業部会前の宣伝(3月18日、東京・厚労省前で=自交本部提供)
9時間では安全守れぬ
厚生労働省の労働政策審議会で、改善基準告示※の改正について議論する作業部会は、1日の休息期間(乗務を終えてから次の乗務までのインターバル)を現行より1時間延ばしただけの9時間とし、11時間を努力義務とする内容の報告案を了承しました。
(自交本部『自交労働者情報』3月22日付)
第6回バス作業部会が3月16日、同ハイタク作業部会が18日に開かれました。
ハイタク作業部会では、労働側委員が「11時間以上の休息期間を与えるよう努めること」の「努めること」を外して義務化することを提案しましたが、使用者側は応じず、厚労省事務局も原案通りとすることで押し切りました。
休息期間が9時間では運転者として必要な睡眠時間を確保できず、人間らしい生活を営めません。
2暦日拘束延長可能に
タクシー隔日勤務の休息期間は、現行の20時間を2時間延ばして22時間とし、24時間を努力義務規定としました。
これと引き換えのような形で2暦日の拘束時間は、現行の21時間を、2回平均して21時間を超えなければ1回当たり22時間まで延長できることとされました。
あきらめず世論喚起を
作業部会で確定した改正案は、今後、3月中に専門委員会に報告され、夏ごろ確定するトラック作業部会の改正案と合わせて秋ごろに労働条件分科会に報告、年内に労働政策審議会で正式に決定・公布され、24年4月から適用・施行される予定になっています。関連通達案も並行してつくられます。
正式決定は秋以降ですから引きつづき、睡眠時間を確保できる休息期間の必要性を訴えて、世論の批判を高めることが大切です。
両作業部会の前には、厚労省前で東京地連の仲間が参加して宣伝行動を行い、16日には全労連・黒澤事務局長、18日には同・前田副議長、国土交通労組・後藤書記長がかけつけ、あいさつしました。
※=厚労省告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」