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2024年05月の記事
「自家用車活用事業」いずれの形態も断固反対
2024/05/07
タクシー労働を軽んじるな
新たな形態の「自家用車活用事業」が全国に拡大される懸念が現実のものとなりつつあり、対応していく上で3点に整理し、今後何が行われようとしているのかポイントをしぼり解説します。
1点目=「日本型ライドシェア」( タクシー事業者の管理の下で地域の自家用車や一般ドライバーによって有償で運送サービスを提供することを可能とする制度)です。2点目=4月中に国交省が新制度を通達するとしている「自家用有償旅客運送制度の改革案」です。そして、3点目=6月を目途に制度設計するとしているタクシー事業者以外が参入できる「ライドシェア新法」(自家用車・一般ドライバーによる旅客輸送)です。
1、2は、どちらもタクシー事業者が運営主体の「自家用車活用事業」ですが、制度の根拠となる法律が異なります。
「日本型ライドシェア」は、道路運送法第78条3号に基づく「自家用車活用事業」です。つまり、「タクシー不足」が、条文の「公共の福祉を確保するためにやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域または期間を限定して運送の用に供するとき」に該当するという理屈です。あくまで一時的な位置づけの制度であり、恒常的なものではないとしています。
2点目の「自家用有償旅客運送制度の改革案」は、同法第78条2号に基づく、これまで交通空白地で非営利でボランティア的に行われていた自家用有償旅客運送の運用を緩和・拡大する施策です。
つまり、非営利と営利のタクシーとの棲み分けを覆すもので、神奈川県が4月17日から12月16日までの8か月間行う「かなライド(神奈川型ライドシェア)」がこれに当たります。
どちらの制度も、競合によりタクシー労働者の営業収入に大きな影響が及び、労働条件の悪化とともに賃金の低下が起こります。
さらに国会では、3点目の「ライドシェア新法」の制定についての議論がすでに具体的に行われています。
既得権欲しがる推進派
4月11日開催の規制改革推進会議「地域産業活性化WG」では、LINEヤフー社の川邊健太郎会長や株式会社タイミーの執行役員らが、利用者目線にまったく立つことなく、独自のアンケート調査を根拠に、「副業としてライドシェアをやりたがっている人がいる」と主張し、全面解禁を強硬に求めています。
これまでライドシェアの全面解禁に反対するタクシー事業者・労働者に対して、推進派は何かにつけて「既得権を守るためだ」と主張してきましたが、蓋を開ければ自分たちが新しいビジネスをすすめるために何振り構わず「既得権」を欲しがっている動きが良くわかります。
また推進派にすり寄る大臣や一部の自民党議員の発言も「タクシー不足」から始まった主張も、今ではスタートアップ企業の創出に変遷しています。
自交総連は、いずれの形態であっても白タク・ライドシェアは、地域公共交通の安心・安全を崩壊させ、タクシー労働者のくらしを壊すとともに、労働者を無権利にするギクワーク(単発労働)の拡大には、断固として反対し、利用者に呼びかけながらたたかいます。
4・16内閣府交渉 結論ありきの議論やめろ
2024/05/07
ライドシェア新法は許さない
マッチング率だけで何が解る
なぜ、実車率使わない
自交総連本部の三役は4月16日午後、衆議院第2議員会館会議室で、高橋千鶴子衆議院議員(国土交通委員)を通して、内閣府、警察庁と交渉を行いました。内閣府との交渉には国交省、経産省、デジタル庁も出席し、自家用有償旅客運送の緩和やライドシェア新法を拙速に制定しようとしている動きに抗議し、警察庁には人命軽視を改めるよう求めました。
自交総連がタクシー事業者以外の者を実施主体とするライドシェア事業の法律制度(=ライドシェア新法)について、結果ありきで議論をすすめ、6月にとりまとめるとしているが、自家用車活用事業の実施効果が僅か2か月で検証できるのかを指摘しました。
内閣府は「規制改革推進会議の中間答申を踏まえて、委員の先生方が議論をすすめている。我々は事務局で会議自体を委員に委ねているので」などと木で鼻を括った回答に終始。
国交省は「実施効果は検証する。しかし、あと2カ月しかなく、6月までに結論を出すと国交省は国会答弁していない。実施効果をまとめるうえでは、タクシーが足りているのか、移動の足が確保されたのかが重要となる。国交省としては、規制改革推進会議でどのように取り扱うかは不明だが、斉藤国交大臣が『しっかり検証して検討したい』と述べている」とし、内閣府と対照的に苦慮している感が否めませんでした。
矛盾が生じる不足数
自交総連は、配車アプリのマッチング率でタクシー不足数を算出しているが、無線もあれば流しもあるのだから矛盾が生じるし、なぜ指標として実車率を使わないのか訊ねました。
国交省は「スタートの段階なので、客観的にデータを取りやすいアプリのマッチング率で算出して判断できるようにした。実車率等も加味していけるようであれば変えていく、天候状況なども反映できるより良いものにしていきたい。データについては数カ月ごとに見直していき、需給についてはしっかりと調整し、実態にあった制度となるよう見直していく」と回答しました。
内閣府詭弁を弄すな
自交総連は、総務省から情報流出に対する業務指導、改善勧告を受けているLINEヤフー(株)の川邊健太郎代表取締役会長が規制改革推進会議の委員に就いているが、デジタル化の議論を推進するうえで、個人情報漏洩問題は最重要の基本的課題であり、この件について内閣府はどのように捉えているのか質しました。
内閣府は「規制改革推進会議の委員については、優れた知見を有している者を個人として内閣総理大臣が任命している。委員が所属する会社を代表して会議に出席しているわけではないと認識している。LINEヤフー社の問題等については、規制改革推進室として答える立場にはない」とし、議論がかみ合いません。
安全な白タクはない
自交総連は、国家戦略特区、スーパーシティ構想の中で、ライドシェアや白タク行為を組み込む実証実験等を推進しないよう求めました。
経産省は「提案された事案について、反対意見を押し切ってすすめるものではない。まず所管される省庁において政策全体について判断されて、実現するには何が必要か検討したうえで、慎重意見もあることも考慮して関係者で議論していく。安全面が確保されないものは実施しない。安全面を確保する方法が確定された際に改めて検討することになっている。また、自家用車活用事業が始められているが、タクシー会社の管理の下での運行となり、ライドシェアとは違うものと考えている」と回答しました。
無限定な拡大は危険
自交総連は、デジタル行財政改革会議の「中間とりまとめ」や規制改革推進会議の「規制改革推進に関する中間答申」では、自家用有償旅客運送制度の緩和を求めているが、安心・安全の確保に懸念がある、無限定な拡大をすすめないよう求めました。
内閣府は、12月の「中間答申」では、移動の足を確保する観点から自家用有償旅客運送制度の改善について触れられているとし、すみやかに制度を改善していくこととされた「自家用有償旅客運送の改革」において、運送区域(交通空白地)の外の目的地(病院等)への往復を可能とする必要性が高いことから、「発地又は着地の何れかが運送区域内にあればよいと、通達上明記するよう国交省に現在制度改善を図っていただいている」と回答しました。
公道での実験は無謀
自交総連は、自動運転について事故形態が同種でAI技術が追いついていない、旅客の安全を確保する必要からバス・タクシーにおいては、運転資格のある運転者の乗務を義務付け、実験についても同様の措置を講じたうえで、慎重にすすめるよう求めました。
国交省は「2023年4月から自動運転レベル4(運転者がいない状態)での特定自動運行が可能となった。特定自動運行旅客運送においては、道路交通法に基づき自動運転の許可を受けた特定自動運行の実施者が遠隔で管掌する特定運行主任者を配置する。また道路運送法では、旅客運送事業者が安全を確保する保安員を選任することとなっているが、保安員については運転免許資格の保持を求めていない。実証実験において運転資格のある運転者の乗務の義務付けについては、警察庁の管轄となる」と回答し、「結論ありき」ですすめていることが浮き彫りになっています。