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2009年06月の記事
タクシー活性化法の実効的運用で悪質事業者排除せよ
2009/06/25
タクシー活性化法案・衆議院国土交通委員会審議で日本共産党・穀田議員がMK問題を追及
需給と運賃の両面で規制を強化するタクシー活性化法案は6月19日、参議院本会議で全会一致で可決・成立し、今年10月1日から施行されることになりました。同法案の衆議院国土交通委員会での審議では日本共産党の穀田恵二議員がMKグループを例にあげ、悪質事業者の排除を求める私たちの声を代弁しました。議事録をもとに一部省略・意訳して紹介します。
穀田「昨年暮れ、京都に本社を置くMKタクシーが、1万人を雇用すると言って話題になりました。雇用の拡大と聞こえはいいけれども、MKが1万人雇用するということは、1万台増車するということなんですよ。
こういうことがなぜできるのか、というところの謎を少し議論し、MKの賃金システムの問題を取り上げてみたいと思います。
まず、累進歩合制は通達で禁止されているはずですが、その簡単な理由をお答えいただきたい」
渡延政府参考人(厚生労働省大臣官房審議官)「歩合給の額が非連続的に増減する、いわゆる累進歩合給については、労働者の長時間労働やスピード違反を極端に誘発するおそれがあることから望ましくないものとして、平成元年の労働基準局長通達に基づき廃止するよう指導を行ってきているところでございます」
穀田「廃止すべき対象が、なぜ“非連続的に増減する”、それだけなのか。刺激性が高いかどうか、結果として、収入を上げるために長時間労働が行われているかどうかにポイントを見定めて指導すべきではないのか」
(中略)
穀田「MKの賃金は、売り上げが高くなるほど賃率が上昇する仕組みになっています。試算によると売り上げ50万であれば46.3%。80万なら64.4%であります。普通、違法とされる累進歩合制は、最高賃率と最低賃率の差が20ポイント程度だと言われています。MKの最低限は34.3%ですから80万の場合と比べて30ポイント近く開きがある。これは非連続ではないかもしれないけれども、売り上げを上げるほど、賃率自体が急カーブで上昇する。まさに究極の累進歩合給ではないか。
累進歩合が極端な長時間労働を誘発すると言うのであれば、そこに着目すれば、MKが京都の中でも極めて長時間の労働を強いている実態や、急速なカーブを描いているということは、だれもが知っているわけですね。それをなぜ禁止できないのか」
渡延「個別の労働基準監督官の立場で指導するに当たりましては、労働能率の増進と水揚げ高と賃金の関係といったものについて、ある程度外形的、客観的に判断できる着目要素がどうしても必要でございます。
そうしたものを全国的に斉一的に指導を展開するために必要な制約があるということを、ぜひ御理解賜りたいと存じます」
穀田「それは理解できない。そういう現実があることを見逃しているから、みんな、ほんまに助けてくれへんと思っているわけですやんか。何のための労基局だと多くの方々が言っているということについては、私は一言言っておきたいと思うんです。
MKのシステム支給基準を見ていただきたい。運転手が負担する固定経費の中には車両費や、社会保険の事業主負担分が公課費という名目で明記されています。車両保険費も含まれている。さらに、下の変動経費の欄には、燃料費、修理部品費、制服費、メーター費、シートカバー費まで含まれています。
要するに、タクシー事業に必要な経費はすべて運転手が負担するという仕組みで、MK側はリース制と言ってはばかりません。このようなやり方が経営者として、みずからの危険負担をせずに、事業遂行に伴うさまざまな責務を適切に全うしていないということは明らかではないのか」
(中略)
穀田「MKは、“賃率急上昇の累進歩合制”と“必要経費は全部運転手持ちのリース制”という二本柱で来ているんですよ。まさに脱法、違法すれすれの行為をやって、告発されるとすぐ訂正して、うまく切りかえているんですね、ここは。
車だけ貸してその経費を受け取る、損をするのは労働者だけで、会社は損しない、こういう仕掛けなんです。だから、増車すればするほど儲かって、運賃を仮に安くしても、会社の収益には関係ない。ここに、増車と低賃金を可能ならしめる構図があるわけですね。
MKのように労働者を犠牲にして低運賃を売り物にすることが公正な競争といえるのだろうか。ひいては、利用者・国民の安全・安心を守れるのか。そして、地域社会経済に貢献できるのかということは疑問だと私は思うんですね。
実際に起こっている現場の労働の実態、確かにこれは厚労省の関係です。でも、この増車と低賃金という二つの問題が一番の問題だということに着目した場合は、まさに国交省として経営実態に踏み込んだ指導監督、そのためにも厳格な法規制をすべきじゃないのかということについて、大臣、いかがですか」
金子国交大臣「公共交通機関としての役割、あるいは運転手さんへの名義貸しというお話も大分出ましたけれども、禁止されているもの、最低賃金制、それから累進歩合というあり方について、これまでは厚労省がチェックしていて、情報を共有しながらもそこで終わっていたようなところもあるかもしれませんが、今度この法案を運営していく上で、厚労省の労働基準局の調査もきちんと共有してもらって、経営監査に国交省として当たってもらうということは当然やっていきたいと思っています」
タクシー活性化法案 今国会で成立へ
2009/06/15
衆議院国土交通委員会で意見を陳述する自交本部・今村書記長(右端、6月2日)
「安心・安全」の規制強化へ第一歩
タクシー活性化法案(略称)、道路運送法改正案について衆議院国土交通委員会で修正協議を続けてきた与野党は6月9日に合意に達し、10日の同委員会は野党の提案を取り入れた修正政府案を全会一致で可決しました。2000年に自民・公明・民主などが賛成して進められたタクシーの規制緩和を、「安心・安全」のための規制強化へ転換する第一歩です。
運賃認可基準を下限規制に
国交省が2月10日の閣議決定を経て国会に上程したタクシー活性化法案は、供給過剰地域で複数の事業者が協調して減車を進めるための枠組みを整えるものです。
具体的には、国交相が供給過剰地域を「特定地域」に指定し、そこでは自治体・事業者・労働者・住民などが「協議会」を組織して、タクシー活性化のための「地域計画」を定めます。事業者は「地域計画」に即して「特定事業計画」を作成しますが、その中に「供給輸送力の減少(減車)」などの「事業再構築」を含めることができます。
そして国交相が公正取引委員会と調整のうえで「特定事業計画」を認定すると、事業者は独占禁止法違反(※=3面下段)に問われることなく、協調減車を円滑に実施できることになります。また、「特定地域」での増車は認可制となります。
一方の野党4党(日本共産党・民主党・社民党・国民新党)が5月12日に共同で提出した法案は、タクシーの規制緩和の大もとである道路運送法を改正して、全国一律に新規参入・増車や運賃の規制を強化するものです。
この改正案では、新規参入や増車の条件として、「輸送需要に対し適切なものであるかどうか」を加えることで過剰な参入・増車に歯止めをかけるとともに、運賃については「適正な原価に適正な利潤を加えたものであること」を認可の条件とすることで、従来の上限規制から下限規制に転換し、「安心・安全」のためのコストを無視した値下げ競争・価格破壊の防止を図ります。
また野党4党は政府案の趣旨や枠組みについて「大筋で賛同しているが、内容が不十分」として、その修正案を同時に提出。地方自治体の長が国交相に「特定地域」指定を要請できるようにしたほか、「特定事業計画」の中の「供給輸送力の減少」に休車を含むことを明示する、などの修正を法案に盛り込みました。
根幹は需給調整と適正運賃
衆議院国土交通委員会では、5月13日から6月9日まで6回にわたって政府案と野党案の一括審議が行われました。このうち、6月2日の審議には自交本部の今村書記長が一橋大大学院の山内弘隆教授、全自交の待鳥康博書記長、全タク連の富田昌孝会長とともに参考人として出席しました。国会が自交総連に参考人の出席を求めたのは初めてのことです。
冒頭の意見陳述で今村書記長は「タクシーの持つ特性が、必要な規制の強化を求めている」と強調。運転者が営業・輸送・料金収受を自己完結的に行い、つねに利用者と向き合うタクシーの「安心・安全・快適」の確保は「運転者の自覚と努力なしには実現しない」としたうえで、「現状の過酷な労働条件では質の高いサービスを要求しても必ずほころびが出る」と指摘しました。そして「運転者が公共性を自覚し、サービス向上の努力をする基礎をつくるためには労働条件改善が急務であり、需給調整機能と適正運賃の確保がその根幹をなす」「政府案だけでは根本的解決には至らない。野党案が特別の重みを持つ」と述べました。
各議員の質問と今村書記長の回答の要旨は次のとおりです(敬称略)。
◆秋葉賢也(自民)「私の地元仙台では供給過剰がひどい。法改正へ評価を聞かせてほしい」
◇今村「今回の法律で枠組みはできるが、実際に減車がすすむ実効性をどう担保するかが問題。協議会に権威・機能をもたせて実効性をもたせ、自分勝手で協力しない事業者にはペナルティーも必要だ」
◆後藤斎(民主)「規制緩和で経営者も労働者も利用者も誰もよくなっていないように思う。どう考えるか」
◇今村「運転者の賃金は歩合給で、売上は供給に左右されるが、東京でも実車率が50%から40%以下に下がっているのが規制緩和の結果だ。適正な台数・運賃ということを常に考えていかなければならない」
◆穀田恵二(共産)「根本問題について聞きたい。2000年の審議で我々は規制緩和に反対したが、当時の運輸大臣は規制緩和でバラ色になるといった。結果は明白だ。政策の誤りについては真摯な反省が必要と思うがどうか」
◇今村「我々も諸外国の例をあげて成功例はないといったが、間違った規制緩和がごり押しされた。“過(あやま)ちては改むるに憚(はばか)ることなかれ”という精神が必要と思う」
◆穀田「政府案と野党案どちらがいいのか率直にうかがいたい」
◇今村「政府案+4野党共同案となるのが一番いい。すべてが無しということではなく、よりよい方向で審議してほしい。審議のなかで、運転者の資格、タクシー運転免許も検討していただきたい」
今回、与野党が合意に達した修正内容は、道運法改正案のうち「参入・増車規制の強化」などは活性化法案の検討条項として措置、「運賃認可基準の見直し」については道運法附則に読み替え規定(“適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないもの”とあるのを当分の間、“加えたもの”とする)を措置する、としています。また、活性化法案も野党案を取り入れて修正されました。
同法案は11日の衆議院本会議で議決。今後は参議院に送られ、今国会で成立する見通しとなりました。
※独占禁止法違反(カルテル)=事業者または業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い,商品価格や販売・生産数量などを自分たちの都合のいいように共同で取り決める行為。
【第一交通闘争】第一交通産業争議勝利和解にあたって
2009/06/15
弁護士 藤木邦顕
8年2ヶ月にわたって第一交通産業の無法と闘った佐野南海交通労組のたたかいは、2009年6月2日出向無効確認訴訟の勝利和解成立をもってついに幕を閉じました。弁護団は、佐野南海交通労組、自交総連大阪地連の粘り強いたたかいに心から敬意を表すると共に、この争議の法廷闘争を担当し、勝利和解に至ったことを誇りをもって報告します。
この争議は、次の諸点において間違いなく組合の勝利です。
第一に、全国で買収した企業の組合をつぶしてきた第一交通産業とたたかいぬき、最後まで組合の団結を守りました。買収した企業に組合は一切認めなかった第一交通産業に対して組合の旗を守ったこと自体が勝利であり、黒土始会長以下、第一交通産業の経営陣は大阪の自交労働者の心意気を徹底的に思い知ったことでしょう。
第二には、100件近くの民事・刑事・労働委員会事件を闘い抜き、すべてに勝訴しました。争議の中心となる佐野第一交通の解散解雇事件についてはもちろん、委員長・副委員長の解雇にも、賃率の一方的切り下げにも、嫌がらせの長時間点呼・配転にも、組合事務所の取り上げの策動にも少しもひるまず、機敏に仮処分・本訴・不当労働行為救済申立てをして、すべての事件に勝訴したことが勝利和解の大きな力となりました。裁判所も組合の正義のたたかいに大いに理解を示し、法人格否認というむずかしい論点でも第一交通産業側の抵抗を排して雇用を認めたこと、出向無効の仮処分で組合員の雇用を守る立場から和解提案をしたことも特筆されます。
第三には、組合執行部が的確な方針を出し、初期の激しい切り崩しに耐えた組合員が最後まで団結したことです。争議の始まったころには想像もつかなかった経済状況の変化や、家族のことを考えれば、組合員のみなさんもときには不安にかられることもあったと思います。それを克服して労働者の尊厳を守るたたかいを貫徹した1人1人の組合員こそ勝利の立役者です。
佐野南海交通労組のみなさんにとっては、これから雇用確保のためのご苦労もあるかと思いますが、第一交通産業相手に勝利した経験を誇りとし、新たな道に踏み出してください。私たち弁護団もこの争議の経験を力として、これからも自交労働者と共に歩む弁護士であり続けます。勝利和解、本当におめでとうございます。
【第一交通闘争】第一交通産業との8年2ヶ月に及ぶ闘争終結に対する「声明」
2009/06/15
2009年 6月 2日
第一交通産業との8年2ヶ月に及ぶ闘争終結に対する「声明」
自交総連大阪地方連合会
執行委員長 岡田紀一郎
自交総連大阪地連・佐野南海交通労働組合(以下「組合」という)と第一交通産業(以下「第一交通」という)との8年2ヶ月に及ぶ闘争は、まさに熾烈を極めた階級闘争であった。資本側・第一交通の搾取を目的とした前時代的な無法・違法な攻撃に対し、およそ労働者一人ひとりでは到底対抗できない難題も、職場で組合に結集し労働者の団結を背景に粘り強く闘い、また、全国のなかまの支援、知力・経験に富んだ6氏からなる弁護団(小林保夫、藤木邦顕、横山精一、山崎国満、高橋徹、中筋利朗)の早期結成と、最後まで三位一体でバランスよく機能できたからこそ、本年、5月26日、8年2ヶ月に及ぶ闘争にふさわしい和解「合意書」の調印として結実した。そして、6月2日、大阪地裁堺支部で裁判上での和解も成立し、第一交通闘争は幕を閉じた。
この闘争は、そもそもバブル期の過剰な設備投資や資産運用などの失敗で、経営基盤の立て直しに迫られていた南海電気鉄道(以下「南海」という)が、2002年2月1日の「改正」道路運送法施行(タクシーの規制緩和)をにらみ2001年3月30日、タクシーグループ7社の株式を、労働組合に一片の通告・協議もすることなく、当時から労働組合つぶしで名を馳せていた第一交通に、1株1円という考えられない金額で株式譲渡を行ったことから端を発した労働争議である。その後、南海は、組合から道義的・社会的責任の追及を受け、社会的にも包囲されることになり責任をとり謝罪するに至った。
第一交通と歩調を合わせてきた南海が謝罪したのとは対照的に、組合つぶしの攻撃は日増しにエスカレートしていった。一方的賃金不払いに始まり、委員長、副委員長の解雇、兵糧攻めを目的にした真夏の炎天下での最長1時間50分にも及んだ長時間虐待点呼、中退金、共済会廃止、チェックオフの中止など、できうる限りの無法行為を繰り返した。しかし、組合はさらに団結を強め、支援者らと数次にわたる北九州行動、東京行動、府内各所での抗議・告発宣伝を行った。組合は弁護団と188回に及ぶ協議を重ね機敏に、裁判、府労委闘争を提起し司法上でも反撃していった。争議が始まってからこの間、100件に近い係争事件の「判決」「命令」が出たものについては、組合が勝利を続け、第一交通を完膚なきまで追い込んだ。
なかでも、究極の組合つぶしといえる佐野第一交通の偽装解散・組合員55人全員解雇事件では、2006年10月26日大阪高裁は、組合側が主張した「法人格否認の法理」で第一交通を断罪した。そして、黒土始会長、田中亮一郎社長ら個人に対しても共同不法行為を認定し、さらに組合つぶしによる損害(組合員減)を上部団体の大阪地連にも認めるなど、画期的内容の「判決」を組合は勝ち取り、最高裁も2008年5月1日、追認する判断を下した。一連の法廷闘争、府労委闘争では、毎回、傍聴席に着けないほどの支援者が駆けつけた。
8年2ヶ月に及んだ、第一交通闘争も、自交総連本部をはじめ、全労連、大阪労連、大阪争議団共闘、そして組合を支え続けた大阪地連加盟各単組の下支えがあればこその結果である。大阪地連は今後も、同闘争に見られた組織攻撃には、断固として闘っていく。ご支援いただいた各団体、各人に対して心からの感謝を申し上げ、第一交通闘争の勝利的和解を宣言する。
以上
大阪労連「三四労の会」
2009/06/05
第6回学習交流会 各産別からの報告
タクシー産業の実態報告
法改正で安心・安全守り
職場に若さ取り戻したい
大阪では、50歳以上の乗務員が全体の86%以上を占めています。20代は139人いますが、一方で75歳以上の方も552人が頑張っておられます。命を預かる公共交通の職場がなぜこんな年齢構成になってしまったのか。それは働き盛りの人が家族を養えない、いまや年金をもらいながらでないとできない仕事になってしまったからです。その最大の原因が規制緩和です。
改悪・道路運送法が施行されたのは02年2月ですがその約1年半前の時点で、大阪市域では3500台以上が供給過剰でした(近畿運輸局・需給動向判断結果)。なのに増車・新規参入が自由化されたせいで、そこからさらに4千台以上増えてしまいました。つまり、現在では7〜8千台が過剰だということです。
規制緩和では運賃も自由化され、大阪では遠距離割引など値下げ競争が起こりました。しかし需要はまったく拡大せず、私たちの労働条件は著しく悪化しました。そこで、労働条件改善のために運賃値上げとなると、結果的に規制緩和で利用者も不利益をこうむる、ということになります。特に生活弱者や交通弱者にとっては切実な問題です。
規制緩和で高笑いしてるのはワンコインやMKなど、利用者本位を装いながら、名義貸しなどで利益をむさぼる悪質事業者です。これらの会社では、燃料代や整備・車検費用、保険料や車の購入費など会社が負担すべき必要経費と、会社の利益となる看板代≠売上から引いた残りが給料です。いわば安心・安全コストの丸投げ、利益の先取りです。そして売上が悪かったら赤字分を乗務員に払わせるという無茶苦茶なシステムです。そうやって売上に関係なく利益を確保しているので、供給過剰でもお構いなしで車を増やそうとします。価格破壊、運賃の差別化には「とにかく稼ぎたい」という労働者を呼び込む狙いがあります。運賃が安いぶん実車率は上がりますが、オーバー労働しないと下手すると赤字になるわけですから、彼らは体がボロボロになるまで走り続けます。
以上のように規制緩和でタクシーという公共交通が危機的状況に陥ってしまったということで、国会では「供給過剰の地域を特定地域に指定し、事業者が協調して減車できるようにする」という内容の内閣提出法案が4月から審議に入りました。さらに5月12日には野党4党が共同で、内閣提出法案を修正する案と、道路運送法の改正案を提出しました。具体的には新規参入や増車の条件に「地域の需要に対して適切かどうか」を加え、運賃についても「安全を確保できる適正な運賃である」ことを認可の条件とするという内容です。私たちはこれから、いっそう運動を強化して世論を喚起し、この法案を成立させたいと思っています。利用者が安心して乗れる安全なタクシーを実現し、職場に若さと活気を取り戻すためにがんばります。
タクシー規制強化法案 国会論戦が本格化
2009/06/05
野党4党、共同で道路運送法改正案を提出
国会では内閣提出の「特定地域タクシー事業適正化・活性化特別措置法案(略称)」が4月に審議入りしたのに続き、5月12日には野党4党(日本共産党・民主党・社会民主党・国民新党)が共同で道路運送法改正案と内閣提出法案に対する修正案を提出。翌13日からは内閣案・野党案ともに衆議院国土交通委員会で本格的な論戦が始まりました。
国交省・公取が調整して円滑に減車
昨年の交通政策審議会・タクシー問題ワーキンググループ(有識者、消費者団体、事業者団体、労組の代表などで構成。自交本部の今村書記長も委員として参加)では計13回にわたる議論を通じて、供給過剰と過度の運賃競争が、“運転者の労働条件悪化”や“違法・不適切な事業運営の横行”などタクシー事業をめぐる諸問題の原因になっていることが共通認識となりました。
そして、同年12月の交政審答申には、『特定地域指定制度を設けて参入・増車を抑制し、協調的な減車のためのスキーム(仕組み)を導入すること』、『運賃問題については下限割れ運賃の審査ガイドラインをつくること』などの対策が盛り込まれ、私たちが一貫して求め続けてきた規制緩和の見直し・必要な規制の強化への方向転換が決定的になりました。
答申を受けた国交省は『特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案』(以下、特措法案)をまとめ、今年2月には閣議決定を経て国会に上程しました。
5月22日の衆議院国土交通委員会。政府参考人として出席した国交省の本田自交局長は特措法案について「複数の事業者の方が協調して減車をしようという場合には、国土交通省と公正取引委員会が事前に調整をして、制度的に、減車が円滑に進むような制度」「前向きの取り組みに対しては(中略)財政的な支援をするなり、さまざまなインセンティブを今後考えてまいりたい」と答弁しました。
道運法改正で全国的に需給調整規制
特措法案に対して野党4党は「特定地域だけに限った期限付きの対策では不十分」「(特措法案では)運賃問題に触れていない」と指摘し、規制緩和の大もとである道路運送法の改正案、特措法案を修正した法案(以下、修正案)を5月12日に提出しました。
22日の国土交通委員会で、共同提案者として答弁に立った日本共産党の穀田恵二議員は、全国的な対策が必要である理由について、「この問題を考える場合に、政治の責任は極めて重大だと改めて実感している」として、運輸行政が需要拡大を前提にして規制緩和を推進してきたことを指摘し、「反省が極めて必要」と述べました。
その上で、交政審答申の“地域によって若干事情がことなるものの、多くの地域では、需要が減少しているにもかかわらず、供給が増大し、問題の深刻化を招いている”との記述を紹介するとともに「新たな経済危機のもとでの需要がどうなるかという見込みを考えた場合に、まさに全国的な事態になる」と述べ、「私どもの道路運送法改正案によって新規参入及び増車は、全国的に需給の調整規制が行われる」と強調しました。