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2015年06月の記事
労働者犠牲の自由競争 裁判所は実態把握せよ
2015/06/26
公定幅運賃裁判の公正な判断求め宣伝
自交総連大阪地連は6月16日、大阪高裁・地裁合同庁舎前、新大阪駅での宣伝行動に取り組み、公定幅運賃を不服とするエムケイグループやワンコイングループなどが起こした運賃変更命令差し止め訴訟について、「両社に道理はない」「実態を理解して公正な判断を」と裁判所に向けて訴えました。
現在、エムケイグループの近畿地区4社と個人タクシー「MKパートナー」が国を相手取り、大阪地裁(田中健治裁判長)で公定幅運賃訴訟が争われ、ワンコイングループなども同様に提訴し、係争中です。
宣伝のマイクを握った大阪地連・秋山民夫委員長は「労働に対する正当な賃金や、事業者が負担すべき経営コスト・リスクを労働者に転嫁して運賃を安売りするエムケイやワンコインのやり方、他社から利益を略奪する仕組みを裁判所はしっかり把握すべき」と訴えました。
さらに秋山委員長は「エムケイもワンコインも、国が定めた公定幅運賃(5%)が“経営の自由”“経営の努力”を阻害し、憲法22条(職業選択の自由)違反だとしているが、彼らの言う“自由、努力”は違法な搾取であって、労働者犠牲の上でしか成り立たない」と指弾し、「自らのビジネスモデルを守るために公共の福祉に反している、ブラックな手法で他社から利益を略奪する、こうしたやり方が許されて良いはずがない」と語気を強めました。
大阪市域 特定地域指定へ前進
2015/06/26
大阪市域準特地域協議会であいさつする安部会長(6月18日、大阪市中央区で)
地域協議会投票、指定に「同意」過半数 労働条件改善へ議論はこれから
「第4回大阪市域交通圏タクシー準特定地域協議会」(安部誠二会長=関西大学教授)が6月18日に大阪市中央区で開かれ、同交通圏の特定地域指定の是非について投票が行われた結果、「同意する」が構成員の過半数を超え、同協議会は「特定地域指定を希望する」との結論に達しました。
利用者の安全第一に
安部会長は冒頭のあいさつで、「前回は活性化と特定地域指定についてかなりの時間をかけて議論し議決に入るところまで進んだが、“第一条件である事業者の意向が重要、投票でやるべき”との意見が出された」「(追加)構成員の参加を認めるべきだという意見があったので告示して希望者を受け付けた。その結果約20名が新たに入った」と経過を報告しました。
特定地域指定の是非についての議論が始まると反対派の構成員からは「60〜70歳代の労働者の賃金比較ではタクシーは他産業と同程度」「資本主義国家では個別の企業が努力してやっていくべき」、賛成派の構成員からは「労働集約産業であるタクシーに規制緩和はなじまない。運転者があってはじめて公共交通としての安全が守られる。乗客の安全を第一に考えるべき。営業の自由は利益調整の中で一歩後退せざるを得ない」「営業の自由、独禁法適用という議論は国会で長時間の審議で議論し尽くされており、蒸し返すのはいかがなものか」と発言。
自交総連大阪地連の庭和田書記長は「これまでの協議会で、消費者代表の武富委員が『タクシーの高齢化は望まない、地域によっては供給過剰ではない』などと指摘していた。この問題を解決するにはタクシーの賃金システムを理解してもらう必要があり、他の地方自治体も加わった協議会で適正化活性化も含め議論すべき問題」と発言しました。
投票のあり方
工夫が必要
投票は事業者、労働組合、業界外構成員の順に行われ、「同意する」が22票、「同意しない」が11票、白票1。最後に会長も同意を表明、「地域協議会として、特定地域の指定を希望する」との結論になり、近畿運輸局を通じて国土交通大臣に報告することになりました。
今後は国交大臣が運輸審議会に諮問、1〜2か月後の答申を経て特定地域に指定された場合、10月をメドに第1回特定地域協議会が開かれ地域計画策定の議論が始まります。
安部会長は、業界内の意見を整理するために関係労使による準備会を開く意向を示しました。
閉会直前に熊和子委員(元毎日放送ラジオ局長)が「経営者、労働組合がわずか1票ずつで、(業界外の)我々が同じ1票というのは均衡を欠いている」「構成員や投票のあり方を考え直していただきたい」との意見を表明、安部会長は「議決方法について工夫がいるようなので、意見を受け止めて検討していきたい」と応じました。
自治体との連携急務
協議会を終えて庭和田書記長は「特定地域指定に向けた第1段階は何とかクリアしたが、地方自治体の参加が3団体しかなく、第3回協議会で『不同意』を表明した大阪府や公定幅運賃裁判の進捗を云々した八尾市も恐らく反対したのであろうが、これまで業界内のゴタゴタをさらけ出した結果とも言え、後世に禍根を残した」と指摘し、「協議会でも主張したが大阪のタクシーの将来を考えたとき“地方公共交通”としてのタクシーを自治体に如何に認識してもらい、その役割をどう果たしていくのか協議していかなければならないのに後退したことは否めない」と吐露しました。
そして、「特定地域や準特定地域協議会を活用し労働条件改善に向け早急に適正化や活性化を学識者、利用者の意見を聞きながら進めなければならないが、もう一つ重大な問題は東日本大震災でも最初から最後まで公共交通として機能したのはタクシーだけだった“事実”を踏まえ、南海トラフ問題がある大阪は、非常時のタクシーの位置づけやLPガスの充填問題等、自治体との連携が急務だと思うが現状を見ると厳しい」と、感想を寄せています。
なみはや交通 計画倒産進行中
2015/06/16
反社会的行為は許さない
組合つぶしを目的に強行された不当解雇事件の裁判で「勝利判決」(5月28日、大阪地裁)を得たなみはや交通労働組合(松岡共吉委員長)は6月3日、乾義彦代表に地裁判決を守り、組合員全員を職場に戻し正常な労使関係を構築するよう申し入れました。
会社に職場復帰を申し入れ後、松岡委員長ら組合員は、京阪・古川橋駅で大阪地裁判決を報告し勝利できたことへの謝辞を述べると、客待ちしていたタクシー乗務員から拍手が沸き上がりました。
同委員長は「乾社長は私たちを職場に戻さないばかりか、同じ事業所内に別会社オアシス(小濱由喜子代表)を設立して、すべての事業を譲渡後、計画倒産を企て社会保険や税金等も踏み倒そうとしている」と告発。
つづけて「年金事務所に申告するとともに、近畿運輸局に対しても反社会的行為を企む事業者の譲渡を認めることは、この行為に加担することになると指摘したが、局は書類が具備していれば認めざるを得ないと言っている、こんな交通行政がまかり通って良いのか」と心情を吐露するとともに、今後の闘いへの支援を市民に呼びかけました。
和歌山・兵庫・京都・滋賀、実態アンケート調査まとまる
2015/06/16
無くならない労働者負担
自交総連関西ブロック(秋山民夫議長=大阪地連委員長)は5月18〜20日、未組織労働者への宣伝「キャラバン行動」を新大阪駅を皮切りに、和歌山・兵庫・京都・滋賀各府県では「労働実態調査」(アンケート)にも取り組み、労働者の「生の声」を聞くと、労働者負担の地域間格差が拡大しています。
和歌山・兵庫・京都・滋賀の各府県では、77人の労働者に「実態調査」(アンケート)を行いました。
和歌山で聞き取りに応じた労働者17人はすべて日勤勤務でした。日車営収は7千円〜2万円、有給休暇が使えると答えた人は7人で、賃金も変わらないとのこと。労働者負担については、すべてが事故関係で異口同音に3万円でした。この「3万円」は、保険・共済等の免責部分で他府県でも同様の答えが多かったのが特徴です。また、大手グループで働く労働者は、「事故負担金は10%だが、会社が指定する期間(交通安全週間)等の事故は、負担率が20%になる」と話していました。
新神戸駅は雨天ということもあって、調査に応じた労働者は7人(隔勤3人・同営収2万5千円〜3万円、日勤4人・同営収1万円〜1万6千円)で、労働者負担は、クレジット手数料3%、事故負担金3万〜5万円とのことでした。
また、神戸市域が特定地域に指定されることになったことを尋ねると「知らない」と答える一方、「水揚げが段々悪くなってきている」「福利厚生は何もない」「神戸は車(タクシー)半分で良い」などと、不満を口にする人が多く、業界情報が職場に伝わっていないことも良く解りました。
京都は調査に応じた労働者が31人(隔勤2人・同営収2万5千円〜3万円、日勤27人・1万5千円〜2万5千円、夜勤2人・2万5千円)で、有給休暇は23人が使えると答え、賃金が変わらないは15人でした。
拡大する負担
京都はひどい
労働者負担は、LPガス、カード手数料3〜5%、事故負担3万円、障害者割引など、多種多様に労働者に転嫁しています。ある労働者は「組合に入っていたが、ガス代まで払わされている意味がない」と吐き捨てるように言っていたのが印象的で、会社に対し怒りをぶつけなくてはならないのに組合に向いています。
滋賀では、22人の労働者が調査に応じ、営収は京都と同水準。有給休暇も18人が使えると答え、労働者負担は19人が「ない」とのことでしたが、ある会社の労働者は「チケット手数料(大口顧客)は20%」と答え、調査団は衝撃を受けました。
今調査に応えた労働者の最高年齢は77歳、各府県とも高齢化と労働者負担制度の拡大が顕著で、業界のブラック化が進行しています。
2014年賃金センサスまとまる
2015/06/16
タクシー労働者の年収 届かない300万円の壁
全産業との賃金格差拡大
厚生労働省が2月19日に公表した「平成26年(2014年、以後西暦で表記)賃金構造基本統計調査(賃金センサス)」の調査結果から、大阪府の男性タクシー運転者の年間賃金を編集部が推計してみたところ293万5600円、前年より1万1900円減との結果になりました。
賃金センサスは主要産業労働者の賃金実態を、雇用形態・就業形態・職種・性別・年齢・学歴・勤続年数・経験年数別に明らかにすることを目的として、毎年6月(賞与は前1年間)の状況を調査するものです。
今回調査対象として抽出された労働者のうち、大阪府のタクシー運転者(男)は6170人(前年は2万7270人)、平均年齢は59・6歳(同58・6歳)でした。
大阪府・タクシー運転者(男)の賃金は、6月度給与の平均額が22万5500円で、前年同月比3000円増。前年1〜12月に支給された賞与の平均額は22万9600円で、前々年比4万7900円減でした。
大阪は前年比減
1万1900円
年間賃金を〔6月度給与×12+前年賞与〕で推計すると293万5600円となり、前年より1万1900円の減という結果になりました。
一方、大阪府の全産業労働者(男)を見てみると、6月度給与の平均額が38万7500円(前年同月比1万1400円増)、賞与の平均額は100万1400円(前々年比2万1900円増)で、年間賃金推計額は565万1400円(前年比15万8700円増)となりました。
全産業とタクシーの賃金格差は271万5800円という結果になり、前回より17万600円拡大。賃金は景気に左右される側面がどの産業にもありますが、タクシーは蚊帳の外と言った感が拭えません。
行政の実態把握に疑問符
自交総連大阪地連が4月下旬に行なった「安全運転実態調査」では、日車営収の営業所平均(大阪市域交通圏・中型、4社)が2万9845円(小数点以下切り捨て)でした。
2万9845(円)×0.6(賃率)×12(乗務)×12(月)、で年間賃金を推計すると257万8608円で、賃金センサスよりおよそ35万7千円下回ります。
逆に賃金センサスの大阪府・タクシー運転者(男)の年間賃金推計額から、日車営収を賃率60%、12乗務で逆算すると、293万5600÷12÷12÷0.6=3万3977(円)となります。調査月が異なるとはいえ、4千円も上回るのは誤差の範囲内といえるでしょうか。
賃金センサスで調査した「6月度給与」や「賞与」は税金や社会保険料などを控除される前の総額ですが、タクシー業界には不当な乗務員負担制度もあります。実態を反映しない数字の一人歩きが懸念されます。
2015年度安全運転実態調査の結果まとまる
2015/06/05
営収、今年も逆転現象
大阪地連が4月20〜26日の1週間実施した「2015年度安全運転実態調査」の結果がまとまりました。この調査はタクシーの過重労働を浮き彫りにすることを目的に、1979年から毎年実施しているものですが、一昨年を境に営業所平均営収が調査参加車を下回る傾向にあり、今年も同結果でした。
調査には4単組(関中交、朝日、大阪東洋、大宝)のべ52台が参加。調査車は出入庫時間や休憩時間など各労使で定めた労働条件を守り、安全運転に徹して営業を行い、営業収入や走行距離、実車距離などの平均を通常営業(営業所平均。以下、通常車)と比較します。
一昨年境に変化
過去の調査では、低賃金を補うため過重に働く通常車の営収・走行距離が調査車を大きく上回るのが通例でしたが、業界の規制強化が浸透してか一昨年を境に走行距離、営業収入など逆転現象が起きています。
昨年度の調査では調査車の期間平均営収が初めて通常車を上回り、その差額は3983円と過去最高でしたが、今年度は若干縮小し2503円でした。
営収は微増傾向
1週間のうちで、調査車の平均営収が最も高かったのは36381円(金)、低かったのは29519円(土)で、その高低差は6862円。通常車の最高は37639円(金)、最低が23825円(日)で差は13814円でした。
走行距離を見ると調査車は最長が229キロ(金)、最短が192キロ(土)で、その差は37キロ。通常車の最長は229キロ(金)、最短が173キロ(日)で、その差は56キロでした。
また、調査車は1週間を通し(土)のみ3万円を切りましたが、通常車が3万円を超えたのは(金、土)の2日間だけでした。
調査車のデータを詳細に見ると、仕事と休憩のメリハリがある働き方が目につきます。また各営業所とも規制強化から労務管理が以前にも増して徹底されるようになったことや高齢化など考えられますが、一昨年を境に逆転現象が起こった原因は定かではありません。今後の推移を検証する必要があります。
一方、大阪タクシー協会がまとめた大阪市域の4月輸送実績は、平均日車営収が31013円(中型)、直接比較はできませんが、ほぼ同水準の結果で、ともに“微増傾向”でした。
ご協力いただいた4社労使に感謝いたします。
なみはや交通不当解雇撤回裁判 組合つぶしを断罪
2015/06/05
組合側が完全勝利
なみはや交通(門真市・乾義彦社長)が昨年3月、なみはや労組(松岡共吉委員長)の組合員全員に対して行なった懲戒解雇は組合つぶしが目的であり違法無効として、同労組と組合員が地位確認と賃金支払い、損害賠償を求めて起こした裁判の判決言い渡しが5月28日にあり、大阪地裁(笹井三佳裁判長)は組合側の主張を全面的に認め、会社側に賃金支払いと損害賠償を命じました。
「判決」は、会社側が行なった懲戒解雇について「原告らに対し、弁明の機会を付与するどころか、懲戒の理由となる具体的事実を特定して示すことすらしておらず、」「実体的にみても、(略)会社が主張する事実は(略)いずれも的確な証拠がないか、懲戒解雇相当の非違行為と評価することはできない」と指摘。
さらに「原告らが、本件賃率変更に反対し、自交総連の支援を得て労働組合を結成し、団結してこれに対抗することを疎(うと)んじ(嫌悪し)、これを被告会社から排除する手段として本件各懲戒解雇をしたことが明らかというべき」と断じ、本件懲戒解雇は「違法なものであって無効」としました。
また「判決」は乾社長と会社の損害賠償責任をそれぞれ認定。労働組合と組合員各個人への金員支払いを命じています。
労働組合が受けた損害について「使用者との交渉が事実上不可能となった上、」「(組合員全員が)最も厳しい処分である懲戒解雇処分を受け、被告会社の敷地から退去させられる場面を他の従業員に見られるなどしたことにより、(略)本来権利として行うことができる労働組合活動について萎縮的効果を生じ、(略)活動が妨げられた」としています。
職場に戻せ!
閉廷後、傍聴支援に駆けつけた大阪地連や地域労連のなかまに判決内容を説明した弁護団・藤木邦顕弁護士は、会社側が新会社「オアシス」を設立して営業譲渡し、なみはや労組の排除を企んでいることを踏まえて、「判決を現実のものとさせるためにはさらなる運動が必要。会社側に“判決に従え、組合員を職場に戻せ”と強く要求していかなければならない」と強調。
なみはや労組・松岡委員長は支援の謝辞を述べるとともに「職場復帰をめざしてたたかいは続きますが、最後までご支援をいただきながら頑張っていきます」と決意表明しました。