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2021年06月の記事
変動制運賃「ダイナミック・プライシング」求めているのは誰?
2021/06/25
タクシーの公共性損なう
閑散時には安く、悪天候など繁忙時には高く運賃を変動させる「ダイナミック・プライシング」。自交総連はダイナミック・プライシングについて「タクシーの公共性を著しく損ない、運転者の労働条件を悪化させ、ひいては利便性・安全性にも悪影響をおよぼす」として強く反対してます。
元は白タクの制度
利用者保護に問題
ダイナミック・プライシングは、ウーバーなど海外の白タク・ライドシェアで多く採り入れられているシステムです。
全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連、川鍋一朗会長)は2016年にライドシェア対策としてタクシー活性化11項目を策定しましたが、その4番目にダイナミック・プライシングを打ち出しています。
国土交通省の有識者会議「都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会」が2019年に公表した「中間とりまとめ」は、ダイナミック・プライシングについて「刻一刻と変化する運賃をすべての利用者が円滑に把握できるかなど、利用者保護の観点から課題が多い。まずは、実証実験等を通じた利用者等社会的受容性の確認から検討を進めていく必要がある」としています。
今年に入ると河野太郎規制改革担当相が1月15日の記者会見で「タクシーの利便性向上」に取り組む考えを表明し、ダイナミック・プライシングに言及。前々日に赤羽一嘉国土交通相、平井卓也デジタル改革相と「2プラス1」会合を行い「そういう方向でやろうと合意した」「赤羽大臣も前向きに捉えている」と述べました。2月22日に開かれた規制改革推進会議の作業部会では、河野氏がダイナミック・プライシングなどタクシー規制緩和を国交省に要請しています。
5月28日に閣議決定された第2次交通政策基本計画には「変動運賃制(ダイナミック・プライシング)等の新たな対策について、その効果や課題について十分に検討する」との文言が盛り込まれました。赤羽国交相は同日の会見で「運賃制度の見直しについては、多くの利用者に多大な影響を及ぼすことから、その導入の可否を含め、利用者目線に立って、十分な検討を行っていく」としています。
ウーバー虎視眈々
交通弱者なおざり
旅行情報ニュースサイト「トラベル Watch」の記事(6月2日配信、フリーライター・平澤寿康氏。以下カギカッコの引用はすべて同記事)によると、国内で配車アプリシステムをタクシー事業者に提供しているウーバー・ジャパンが6月1日、ダイナミック・プライシングの報道陣向け説明会を東京都内で開催。
同社のモビリティ事業GM・山中志郎氏は「乗務員の多くが運賃の高い地域へ移動しようと考え、需要の多い地域にタクシーが集まる」「料金が高くてもよいのでタクシーを使いたいと考える人が、タクシーを短時間で捕まえられるようになる」と説明。政府渉外・公共政策部長の西村健吾氏は、国交省が運賃の変動幅を上が深夜割増の20%、下が障がい者割引きの10%の枠内で検討していることについて、「変動幅が大きいほど需給調整が効きやすい」として「変動幅をもっと大きくしてもらいたい」と注文をつけています。
これらの発言からは、裕福ではなくてもタクシーが必要な人や、交通空白地住民の視点が抜け落ちていることがわかります。社会全体にとってのタクシーの公共性を毀損(きそん)するダイナミック・プライシング導入は中止すべきです。
自動車運転者の労働時間「改善基準」見直し ハイタク作業部会で議論始まる
2021/06/15
人間らしく働き暮らせる産業に
休息期間の延長・拘束時間の短縮求める労働側 難色示す使用者側
自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)見直しのための厚労省・労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会(専門委員会)は、分野別に検討をすすめるため、5月26日にハイヤー・タクシー作業部会の第1回会合をひらきました。自交総連本部の菊池書記長が傍聴しました。
(自交総連本部『自交労働者情報』6月1日付)
作業部会は、公益・労働者・使用者代表各2人の6人で構成され、部会長に両角(もろずみ)道代慶応大学院教授を選出しました。スケジュール案を示し、今年11月頃には改善基準告示見直し案をほぼ固め、来年2月には報告書を作成、専門委員会の確認を経て同年中に告示改正を公布する予定となっています。
作業部会では、前回の専門委員会での意見を踏まえ、労使双方が意見を述べました。使用者側は、賃金が下がるとして、休息期間11時間、拘束時間の短縮に強く、難色を示しています。
ゆとりのある生活
休息11時間が必要
労働者側
専門委員会で実施されたアンケートでも適切と思う日勤の拘束時間は13時間以下という人が90%以上を占めていることからも、休息期間は11時間が必要で、これは生活時間を確保するためにも必要だ。
年間拘束時間は3300時間、1か月では275時間とすべき。これもアンケートの結果と一致している。
使用者側
都市部では日勤で拘束13時間を守っている。休息期間が8時間未満になることはほとんどない。しかし、最大拘束時間に幅がないと給与が確保できない。歩合給で労働時間を短くして生産性を上げるのは並大抵でない。短くすれば2、3割が倒産しかねない。拘束時間内で目一杯やるということでなく、一定の枠があれば意欲のある人は稼げる。月288時間なら12時間拘束で24日乗務できる。それを3か月平均でみれば繁忙期にも対応できる。
労働者側
使用者が拘束13時間を守っているというのなら休息期間11時間にできるはず。賃金を歩合給にしているのは使用者だ。過去の改善基準告示の改正の時には運賃改定をしてきた。タクシーの運賃は原価と適正利潤で決まるから、時短分は運賃改定も考えてもらいたい。
公共性のある職業
適正な労働時間に
使用者側
タクシーは原価の3/4が人件費で急激な生産性向上は望めない。運賃改定は東京で20年もしていない。簡単でない。拘束時間は柔軟性のある決め方にしてほしい。10分オーバーでも取り締まられるときつい。1年を3分割して平均でみるとかにしてほしい。隔日勤務で拘束21時間を20時間にして試算すると、残業が減って月3万2000円、年32万円減収になる。
休息期間11時間というのはどこから来ているのか。いま8時間が原則だが11時間を原則にすると、地方で車庫待ちとか、早番と遅番が変わる時とか、守れないところもある。3時間も延ばすのはちょっと認められないという話になる。
労働者側
タクシー労働者は90年代から賃金は低く、一昨年でも月20万円台だ。公共性のある仕事として、適正な賃金と労働時間削減を主張している。
車庫待ち等の特例は原則が決まってから議論したらいい。早番・遅番転換するときは間に公休が入るので問題はない。
長時間労働と低賃金
未来考え是正すべき
使用者側
隔勤でいま20時間の休息期間で疲労回復しない人が24時間で回復するか。20時間で十分ではないか。隔日勤務でも、過労死が少なく、疲労がたまらないのは、休憩時間が自由にとれるからだ。いまの3時間を2時間にしたら休憩が自由にとれなくなるので反対。
労働者側
隔勤の拘束時間が短いのは、それだけ過酷な勤務だからだ。タクシーの平均年齢が高くなっているのは労働時間の割に賃金が悪いからで、もっと魅力をつくらなければならない。若い人が入ってくるように労働時間も考えていかなければいけない。
使用者側
我々も本当は労働時間は短い方がいいと思っている。短くしたいが給料が下がってしまう。運賃値上げは難しい。休息期間は現状を維持したい。
傍聴を終えた菊池書記長は「労働側の主張は的を射て頷けるが、使用者側は労働時間を短くすると賃金が下がるの一点張りで無責任極まりない、もっと厳しく使用者側を追及する必要がある」とコメントを寄せています。
五輪輸送運転者の安全対策はなし IOCファミリーには至れり尽くせり
2021/06/15
小池晃参院議員(日本共産党)が菅首相を追及
6月7日に開かれた参議院決算委員会で、小池晃参議院議員(日本共産党)は東京五輪が「新型コロナウイルスを拡大させる」として中止を迫りました。そのなかで“五輪ファミリー”(IOC役員・関係者)の輸送にタクシー運転者を動員する計画があることを指摘し、ワクチン接種やPCR検査の計画もなく24時間体制で運転業務をさせて運転者の安全が守られるのかと追及しました。丸川五輪担当相は、検査の頻度、ワクチン接種は「検討している」と答弁、菅首相も国民の命と健康を守るのが前提と繰り返すだけで、具体策は示しませんでした。小池議員は「検査・ワクチンは間に合わない」「関係する日本人を守る仕組みを検討していない」として、五輪は中止すべきだと強調しました。
(自交総連本部『自交労働者情報』6月9日付)
運転者の動員に関わる質問・答弁は次の通りです。
小池晃参議院議員
来日するIOC(国際オリンピック委員会)委員など“五輪ファミリー”の送迎のために、2700台の車両を確保し、日本人運転手を動員する計画がある。業界紙によれば3月に五輪組織委員会副会長が東京ハイヤー・タクシー協会で「何が何でもやるので協力を」と求めたと報道されている。IOC理事にはトヨタが提供するレクサスやアルファードなどの車両を用意し、1チーム15台から16台の車両で、勤務時間は午前7時から午後10時までと午後10時から翌朝午前8時までだ。
国民には夜間の外出はやめなさい、午後8時には帰りなさいと求めながら、五輪ファミリーにはなぜ夜なか中、車を提供するのか。なんで24時間走らせなければいけないのか。
丸川珠代五輪担当大臣
走らせる前提ではなく、シフト組がそうなっているということだ。競技が海外との放送の関係で午後10時までで、延長する可能性もあるということで、余裕をもってそのようにしている。
小池議員
夜10時までなら、そこまででいいではないか。なんで24時間体制で組むのか。なんでここまでやるのか。五輪ファミリーが対象でレクサスやアルファードを提供する。ここまで五輪は特別扱いなのかと言いたくなるではないか。
しかも運転手の感染対策がなっていない。会話の制限、運転席と乗客席の間に間仕切りをつけるという程度だ。ワクチンの接種もPCR検査も計画が示されていない。これで運転手の安全が守られるのか。運転手は公共交通機関をつかって通勤するとされている。選手と大会関係者をバブル(泡)で包み込むというが、バブルで遮断されてないではないか。大変危険だ。
丸川五輪担当相
運転手のみなさん、関係者も、検査の頻度とワクチンの接種は検討しているところだ。
小池議員
運転手のワクチンの接種、いまだに計画が示されてなくて、7月10日から業務をやろうというのに、まったく間に合わないではないか。総理、こんなやり方で日本人運転手の安全が守られるか。国民の健康が大事だと言うが、これでは五輪ファミリーの健康、便利のためにやっているとしか見えない。総理、こんなことでいいのか。
菅義偉内閣総理大臣
外国の関係者について徹底した対策を行うと報告を受けている。入国前の検査、入国後にも連続3日間、毎日検査をすると報告を受けている。
小池議員
毎日検査するのは選手だけだ。五輪ファミリーやメディア関係者は週1回しか検査しないで、できるだけ接触しないようにすると言っている。こういう形で30万人くらいの日本人が五輪の業務に関わるといわれるが、そういう人たちをまったく守る仕組みがないではないか、ワクチンも検査も今から検討するという。バブルに大穴が開いている。それこそ泡と消えるのではないか。非常に大きなリスクがある。オリンピックは中止すべきだ。
視覚障がい者からのタクシーへの意見・要望
2021/06/07
「盲導犬乗車拒否され歩いて帰った」
人命を預かるプロこの声どう活かす
全日本視覚障害者協議会(全視協)会員から自交総連本部に寄せられた意見・要望(=視覚障がい者がタクシーを利用する際に困っていることについて)を紹介します。
(文章は全視協による文字起こし、一部要約・意訳。自交総連本部『自交労働者情報』5月14日付)
降車時の問題
目的地に着いた時の停車位置が目で確認できないので、普段と少しでも違うと非常に困る。
点字ブロックまで介助を
○こちらがお願いした場所がなんらかの理由で停められないのか、「ちょっと先の方に停めますね」とか「ちょっと脇でいいですか?」と、思っていた場所とちがうところに停められてしまう。見えていれば何の問題もない「目的地付近」だが、見えていないとルートのリカバリーが非常に難しい。(東京)
○状況によっては、目的の真ん中に停車できないことは少なくないと思います。その際、まずは口頭でもいいので、白杖を使いながら自力で行けそうかどうか尋ねていただけると有難いです。難しい場合は、誠にお手数ですが、自力で移動できるポイント(例えば駅の入り口に続く点字ブロックの上)までは介助いただけると有難いです。(岡山)
○降りた際にどこに、どの方向を向いて車がいるか、目的地にはどの方向に行ったらいいのかを教えてほしい。降りてからのある程度の道案内をしてほしいと思いますので、他のお客さんも乗るようなライドシェアはやめてほしいと思います。(岡山)
○到着の際、できるだけお願いした場所に正確に停めてほしい。どうしても停めることができない場合は、事情を説明していただき、入口までの行き方を言葉で説明してほしい。(奈良)
○降りたとき、目印を触るまで発車しないでほしい。希望する場合は、目的地の前、もしくは本人がわかるところまで、運転手が誘導することを全国的に統一してほしい。(東京)
制度・車両設備の問題
タクシーの補助券を利用したり、障がい者手帳を利用しても、自分で確認することができず不安。
音声で金額伝えてほしい
○料金を言われてもそれが正しいのか不安なことがあります。料金メーターは私たちにも分かるように音声対応のものにしてください。(大阪)
○運賃を音声で伝えてほしい。タクシーの補助券を利用したり、身体障がい者手帳を利用しても、自分で確認することができません。(奈良)
もっとバリアフリーな車内設備・制度にしてほしい。
介護タクシーの充実望む
○今年茨城県で電話をして来てもらった時のことですが、タクシーの障がい者割引依頼で手帳を出した時、名前と番号を書きとられました。(東京)
○盲導犬ユーザーだが、駅からタクシーを利用して自宅に帰ろうとしたら、犬は乗車できないと3台のタクシーから乗車拒否され、歩いて帰った。(佐賀)
○病院に行くためにタクシー会社に電話をかけて、視覚障がい者なので病院の受付まで案内していただきたいと話をしたところ、運転手は介護の資格を持っていないので身体に触れることはできないので案内はできないと言われた(新型コロナウイルス発生前)。(福岡)
○佐倉市の障がい者施設に入所しています。そこでは、介護タクシーで視覚障がい者だけでなく色々な障がい者が同時に移動することがあるのですが、乗車を断られることがあります。介護タクシーの充実を望みます。(千葉)
その他・苦情(※)
見えないからわからないと思い、かなり遠回りをされて料金が通常よりもはるかに高く支払うことになった。
運転者によって料金高い
○運転者によっては、いつもと同じなのに料金が高い。(高知)
○不慣れなところに行ったときに、わざと遠回りしたり、道路が渋滞しているところを走ってお金をぼったくられたことが多々あります。地理に不案内ということと、こちらが目が見えないということでそういうことをするんでしょうね。(千葉)
運転者の言葉遣いや態度が悪い。
障がい者割引きに舌打ち
○障がい者手帳の1割引きを利用しようとしたところ、自分の給料から引かれるのでいやだと運転手が舌打ちをしたり、いい身分やねなどといやみをたらたら言われた。(福岡)
○盲導犬使用者を乗車拒否されたり、乗車させてくれてもずっと不機嫌な運転士がいます。(大阪)
○以前運転手さんが道を間違えて、私が右と言ったのに左に曲がってしまい、私が「今のところ右だったんですけど!」と慌てて声をあげても無言。その後たぶん必死にルート修正をしてたんでしょうけど、何度話しかけても無言……ぐるぐる回ってどこに連れていかれるのかすごく怖かったです。何とか目的地に着いても、彼からはロクな謝罪もありませんでした。(東京)
○乗車時から降車時まで、一言もしゃべらない運転者がいます。(千葉)
○なんていう会社ですか?と訊いたら、「なんか文句ある?」と言われた。他にも、初めて行く場所なので、歩いては行けないとタクシーに乗ったら「すぐそこじゃないか。歩いてだって行けるよ」と言われた。(福島)
(※)明らかな違法行為やマナー違反への苦情も寄せられていますが、障がい者割引を運転者負担にしているなど、会社の姿勢に問題があるものもあります。
全タク連・国交省調査「引き続き厳しい状況」
2021/06/07
供給の適正化が必要
全国ハイヤー・タクシー連合会が実施したサンプル調査によると、大阪府5社・21年4月の前年同月比は、営業収入が61.8%、輸送人員が59.4%。どちらも約4割減と厳しい状況が続いています。
全タク連調査をもとにした国土交通省の「新型コロナウイルス感染症による関係業界への影響について」(21年4月30日時点まとめ)は、タクシー業界について「緊急事態宣言に伴う夜間の会食・外出の自粛や感染再拡大の影響により、引き続き厳しい状況が継続」「5月以降、約8割の事業者が30%以上の運送収入減を見込むなど、引き続き厳しい状況となる見通し」とまとめています。
雇用調整助成金を活用した休業も一部実施されているものの、昼間時間帯の市街は空車の同業者で溢れている、というのが乗務しているなかまの実感です。
エッセンシャルワークとしての役割を社会から要請される中であっても、供給過剰に対して無策のままでは、業界に見切りをつける運転者は後を絶ちません。山積する問題を解決するための集団交渉が必要です。