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2009年07月の記事

今回も信憑性に欠ける厚労省「賃金センサス」
2009/07/27

他産業との格差さらに拡大


 全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連、富田昌孝会長)は7月15日、同会がとりまとめた「平成20年タクシー運転者の賃金・労働時間の現況」をホームページ上で公開し、08年のタクシー運転者(男性・全国)の推定年収が前年に比べて16万2500円減少した、と報告しました。

 このレポートは、厚生労働省が毎年6月度の賃金および前年(1月1日〜12月31日)の賞与について実施している「賃金構造基本統計調査 (賃金センサス)」の平成20年(08年)分の調査結果から、全タク連事務局が参考資料としてとりまとめたもので、6月度給与×12+前年賞与で推定年収を算出しています。

 賃金センサスによると、08年6月度の月間給与の全国平均は25万1200円で、前年比1万3500円の減少。07年中に支払われた年間賞与の平均は、24万8800円で前年比500円の減少でした。

 この結果、前出の計算式で年間給与を推計すると、326万3200円となり、前年に比べて16万2500円、4・7%減少となりました。

 また、全産業男性労働者との格差は前年に比べて11万9200円拡がり、224万700円となりました。

 大阪府の数字に目を転じてみると、08年6月度は26万6000円(前年比▲1000円)、07年賞与は31万2000円(同▲6万400円)で推定年収は350万4000円(同▲5万4400円)との結果でした。前年比減についてはともかく、具体的金額はとうてい現実を反映していません。賃金センサスを確認してみると、調査対象になったのは1156人。大阪府の法人タクシー登録運転者数32393人(今年6月30日現在)を考えると、対象の抽出法に問題がある、と言わざるを得ません。

 賃金センサスはタクシーの諸問題・対策を考えるうえで重要な指標となるだけに、厚労省はもっと実態を反映する調査法を検討すべきです。

富田林交通闘争第2回あっせん
2009/07/27

背後に見える黒い闇


 富田林交通の団体交渉拒否により進展が見込めない事案(差額賃金、嘱託雇用期間、PL花火大会乗務手当支給など)について、労働委員会にあっせんを申請している件の協議が7月16日午後、行われました。

 6月11日第1回あっせんで、会社は平松執行委員の60歳定年時に同氏を乗務させず退職届提出を強要。労基署に申告し指導されて改善されたが、その際発生した未払い賃金を求めました。

 第2回あっせんで、会社は差額賃金を支払うと回答するものの支払い月の前3か月合計を90日で割った日額計算で、実質賃金よりもかなり低い提示でした。

 PL花火手当については、組合から要求があれば支払うと回答。また、会社は60歳定年以降の就業規則改定案を提示、次回までに同組合案と、未払い賃金差額を示し協議します。

富田林東部労連が励ます集い
2009/07/27

富田林東部労連が励ます集い 経過を説明し、たたかう決意を語る富田林交通労組の上原委員長(9日19時、富田林市役所で)

団結と連帯で攻撃跳ね返す


 富田林東部労働組合総連合は7月9日夕、富田林市役所会議室で、組合つぶしの不当労働行為とたたかう富田林交通労組と橋下知事の弱いものイジメとたたかう福祉保育労組コロニー事業分会を励ます集いを開催し、カンパ金を送るとともに両労組を激励しました。

官民問わず弱いものイジメ


 富田林交通労組の上原委員長は、現在堺支部で係争中の古車手当請求裁判と同労組が所属する南地区協議会が発行した機関紙「ジョイント」の記事に対し、月本敏志社長の名誉を毀損したとして、同社長が裁判を起こした経緯を説明。また、厳しい状況に追い込まれているタクシー業界の現状も報告しました。

 参加者は、「両裁判とも明らかな不当労働行為性に基づくものだ」と異口同音に発言し、タクシーが廃車までに60万キロ以上走っていることに対して、安心・安全は大丈夫なのかと、驚きの声をあげました。

 次に、コロニー分会から「大阪府障害者福祉事業団」の民営化に伴い、04年に府の職員並みの賃金が大幅に減額されたために設けた移行調整手当すら、橋下知事の一言で段階的に減額され、3年後に廃止されることから現在提訴してたたかっていると、報告。橋下府政の高圧性、弱いものイジメの実態が浮き彫りになる事件です。

 富田林東部労連は、両労組に対し、争議支援カンパを贈るとともに、積極的に裁判傍聴支援行動に取り組むと激励し散会しました。

「賃金システム懇談会」で自交本部・今村書記長が改善案を提起
2009/07/15

増車・値下げ競争のリスク 乗務員に押しつけるな!!


固定給+歩合給で実効性あるセーフティネットを

 7月3日、「タクシー運転者の賃金システム等に関する懇談会」の第2回会合が東京都内で開かれ、同懇談会委員の自交本部・今村書記長はタクシー賃金制度の改善策として「最低賃金を基礎とした固定給≠ノ歩合給を併給する賃金体系を検討すべき」と主張しました。


 この懇談会は、交通政策審議会が昨年12月の答申の中で、「タクシー運転者の賃金システムの改善の可能性につき、関係者で検討を深めていくべき」と提言したことを受け、国交省が設置したものです。

 同答申では、タクシーの諸問題の原因として、乗務員が歩合制賃金によって供給拡大・運賃引き下げのリスクを負わされ、供給過剰や過度な運賃競争が労働条件の悪化につながっているとし、「タクシー事業者が、当該地域の輸送人員が減少しているにもかかわらず、(歩合制によって)経営リスクを負うことなく増車や運賃競争による市場シェアの拡大を指向することなどを可能にしている」と指摘しています。

規制緩和後に最賃違反激増

 今村書記長は賃金のセーフティネットについて、「保障給制度」(労働基準法第27条)と「最低賃金制度」(最低賃金法)を比較すると後者のほうが@賃金形態に関係なくすべての労働者に適用されるA一律に最低額を保障しているB金額を明示しているとして、「法的根拠をもった実効性ある最低賃金保障の仕組みを考えるには、固定給の制度化をも想定しつつ、最低賃金法の活用を行うことが現実的かつ有効ではないか」と提起しました。

 実態として規制緩和後に最賃法違反が激増しました。しかも労働行政が最賃法違反を事実として確認した個別のケース以外は放置されたままです。

 たとえ個別の違反が「差額支払い」で解決されたとしても、違反を引き起こす根本的な背景要因となっている賃金制度そのものが改善されなければ、真の解決とはなりません。

最賃基礎に固定給を制度化

 大阪府の最低賃金748円をもとに試算してみました。月12回乗務で、1回当たりの勤務時間は19時間、うち休憩は3時間で、深夜労働5時間、残業2時間を含む、との条件で計算すると、必要支払額は15万9324円との結果になりました。仮に単純歩合制で賃率50%の会社であれば、営収が31万8648円未満の場合に最低賃金との差額が生じることになり、会社には差額を保障する義務が発生します。

 懇談会で今村書記長は、「差額が発生したら支払う≠ニいった対応は改め、あらかじめ最低賃金を下回らない固定給部分を制度化し、それに歩合給部分を併給する、などの賃金体系を検討すべきではないか。関係法令を遵守する経営姿勢を堅持し、最低限の賃金保障にむけて努力する意思さえあれば、実現可能なものになりうる」と提言しました。

最低の営収で最賃割れ拡大

 大阪タクシー協会がまとめた、傘下法人タクシーの5月分輸送実績によると、大阪市域の1日1車当たりの営業収入は2万4317円で前年同月比16%減、実車率37・5%という深刻な数字でした。7月6日付「東京交通新聞」は「経済不況による需要減退に加え、新型インフルエンザの感染騒動が大きく影響したものとみられる」「2万4000円台という数値も、大タ協関連の諸資料を30年以上逆のぼっても見あたらず、最低レベルの記録と推定される」と報じています。

 今回の営収激減で、最賃割れの労働者がさらに拡大していることは確かです。実効性あるセーフティネットの確立とともに、早急に大幅減車が必要です。

 6月19日に成立したタクシー活性化法には、規制強化とともに複数の事業者が協調して減車できる枠組みが定められましたが、地域内すべての事業者が足並みを揃えて減車に踏み切るには、営収低下の痛みを乗務員に押しつける賃金体系≠利己主義の事業者にやめさせることが先決問題です。

 累進歩合制やリース制の事業者は1台当たりの営収が下がってもその痛みを乗務員ほどには感じていません。台当たりの営収が下がると、台数を保持し続けることが負担になる≠ニいう仕組みにしなければ、協調減車は実現しません。賃金制度の改善はそのための第一歩です。

減車・運賃問題と結合して

 昨年、規制改革会議の中条潮委員は、「運転手の待遇改善は最低賃金を守るなど労働法でやればいいこと」(日本経済新聞08年7月4日付)と発言しました。言い換えれば、事業者は最低賃金さえ守っていればよい∞乗務員の賃金は最賃スレスレで構わない≠ニいう暴論です。

 中条氏の主張のとおり最低賃金の取り締まりだけを厳格化すれば、事業者が乗務員全体の賃金を限りなく最賃に近づけていくことは必然です。

 同懇談会で今村書記長は「最賃法違反の一掃などの対策については、地域で具体的な対応手段を講じることはもとより、減車の実現、運賃競争の抑制などの課題と結合した対策を講じなければ、実効をあげることはできない」と指摘しました。

 新法ができたから、一足飛びにすべてが解決するわけではありません。行政・事業者に向けてさらに声を強めていく必要があります。

富田林交通闘争
2009/07/15

組合側代理人 準備書面で関与否定

上原氏の執筆にあらず


 富田林交通労組の上原政徳委員長を狙い撃ちし自交総連組合つぶしを策動する月本敏志代表他1名が大阪地裁堺支部に訴えている損害賠償事件(名誉毀損)の弁論が7月7日午前10時から304号法廷で行われました。

 この事件は、08年6月28日付「ジョイント」(南地協機関紙)の1面記事「月本敏志社長は富田林交通の団体交渉には姿を見せないが、労務屋として契約関係にある泉陽タクシーの団体交渉には姿を見せる」との記載が名誉毀損にあたるとして、上原委員長個人と同労組を相手取り総額500万円の損害を求めています。

月本社長 事実を知りながら名誉毀損申し立て

 この日、組合側代理人は7月1日付け準備書面で同委員長が「ジョイント」編集に何ら関与していない証拠を裁判所に提出。準備書面によりますと「ジョイント」記事は、上部団体として泉陽タクシーの団体交渉に出席する大阪地連の堀川卓夫副委員長が経験した事実に基づき執筆したものであるとし、上原委員長の関与を明確に否定しました。

 この間の弁論で明らかになってきたことは、そもそも会社側が証拠として提出(1面だけ)した「ジョイント」ですが、2面には編集後記(編集した場所・組合名と編集員名)の記載があり、上原委員長の名前の記載はありません。月本社長は始めから知りながら、同委員長を訴えています。

 まさに、団結の中心で奮闘する上原委員長をつぶし組合弱体化を目的とした不当労働行為性が明らかになってきました。

 次回期日は、9月8日10時から同法廷で行われます。

【第一交通闘争】8年2ヶ月 勝利報告集会
2009/07/06

【第一交通闘争】8年2ヶ月 勝利報告集会 閉会あいさつする権田常任顧問(中央)と佐野南海交通労組のなかまと家族

大闘争勝利の原動力はなかまと家族の支え


 6月25日、大阪地連(岡田紀一郎委員長)と佐野南海交通労組(堀川卓夫委員長)は第一交通闘争が勝利和解で終結したことから、「勝利報告集会」を大阪府泉佐野市内で開き、なかまや支援の人たち300人が喜びを分かちあいました。

 「勝利報告集会」は佐野南海労組・岩永書記長と大阪地連・松下書記次長の司会で開会しました。

 主催者あいさつでは、佐野南海労組・堀川委員長が8年2か月に及んだたたかいを振り返り、支援の謝辞を述べるとともに「私たちが最後まで団結してたたかってこれたのは、皆さんと家族の支えがあったからだと強く受け止めています。これからも自交総連のみならず、地域の争議支援に、これまでご支援いただいたお礼の心を込めてかかわっていきたい」と声を詰まらせながらあいさつ。そしてバス部会からの祝福の花束を受け取ると、会場は温かな拍手に包まれました。

 続けて大阪地連の岡田委員長が「8年2か月に及ぶ長い闘争でしたが、歴史的な大勝利和解で終結しました。全国各地で第一交通に組合をつぶされたなかまの無念をも晴らしました」と報告し、支援の謝辞を述べると、出席者から勝利を噛みしめるかのように大きな拍手が起こり、祝福ムードが高まりました。

 来賓あいさつでは、第一交通弁護団の小林弁護団長、大阪労連及び第一交通闘争支援共闘会議の川辺議長、自交本部の飯沼委員長、日本共産党大阪府委員会の宮本副委員長が祝辞を述べました(3面に要旨)。

 大阪地連・佐伯顧問の発声で乾杯後、歓談が始まると、同地連の庭和田書記長がプロジェクタで、「第一交通闘争8年2か月の軌跡」と題するスライドショーを投影し解説。なかまや支援者はスクリーンに自分の姿を見つけて感慨深げに眺めていました。

全国で横行する子会社つぶしに歯止め

 集会の後半にはゲスト各氏があいさつ。近畿大学法科大学院の西谷教授は「親会社が子会社ごと組合をつぶしてしまうのはよくある話ですが、これまでの裁判所は雇用責任を親会社に負わせることに否定的でした。“親会社が不当なことをしたのだから、親会社が雇用責任を負うべきだ”という当たり前のことをはっきりさせたことは、全国で横行している子会社つぶしに対して歯止めをかけた、非常に重要な意味があると思います」と強調しました。

金字塔を打ち立てた

 集会の最後に閉会あいさつを行なった大阪地連の権田常任顧問は、「この闘争の勝因は、たしかに組合員もがんばりましたが、それ以上に全国からご支援をいただいたことも大きいと思います。そして最強の弁護団のご活躍で今日の勝利報告集会を迎えることができました。私は“金字塔を打ち立てることができた”と思っているんです」と満面の笑みで話すとともに、支援の謝辞を述べて集会を締めくくりました。